表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しいゲーム始めました。~使命もないのに最強です?~  作者: じゃがバター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

377/388

375.ダンス

 『雑貨屋』の居間。現在、ソファやテーブル、絨毯が片付けられた状態。普段は隠れ気味な板張りの床が綺麗だ。


「ううう。足が攣る!」


 今の私の状態はそれどころではないが。


「笑顔ですよ、ホムラ」

白い能面のような顔でレーノ。


「カクカクしてんなぁ」

頬杖をつきながらこちらを眺めるガラハド。


「ガラハドよりひどい」

その向かいでコーヒーを飲みながらイーグル。


 拍手で一生懸命リズムをとってくれている、ラピスとノエル。


「ホムラ頑張って!」

私の腕の中、ダンスの練習相手のカミラ。


 いや、むしろ私が腕の中? なんとか動きを修正しようと、フォローされまくっている。


「主……。休憩しましょうか」

困った顔で私に提案してくる先生役のカル。


 カルの言葉に、隅に避けていたテーブルやソファを全員座りやすいよう少し移動するガラハドたち。


 ちなみに上の階が壁や家具が少なく、広いはずなのだが、マーリンの巣と化している魔境なのでここになった。


 何をどうしたらあんなに乱雑に物が積めて、バランスが取れるのか謎なんだが、あれはあれでちょっと面白い風景で感心してしまった。屋根裏部屋のロマンに近いものがある。


 ――終わってないが、束の間の解放。


「もう無理なんじゃないだろうか……。本当に私が踊る場面なんかあるのか?」

さくらんぼとチョコレートのケーキを出しながら弱音を吐く。


 レーノとお子様にはシロップ漬けのさくらんぼ、大人組にはシェリー酒漬け。酒漬けの方もガラハドたち用に辛口、氷砂糖控えめ、カル用に氷砂糖増しがある。チョコレートとクリームの違いも。


「こっちは酒が入っているから」

ぱっと見同じケーキ、レーノが酒が入った方に手を出すと昼間っから危険なことになる。


 まあ、味の好みで自然とつく席が分かれいるので大丈夫だろう。ラピス、ノエルたちといるレーノの席から、余った酒入りケーキは遠い。


「器用な方だと思っていたのですが、戦闘とは勝手が違いますか」

レーノが言う。


「恥ずかしがられて、カミラ(じょせい)から距離をおこうとしてらっしゃるのが原因かと」

「う……」

カルから紅茶を受け取りながら、言葉に詰まる私。


 いや、カミラの胸がですね? さらにそれに触れないようにしようとするとどうしても距離がですね?


 アイルのパーティーは大抵ダンスを伴う。誰と踊ってもいいのだが、一度は踊らなくてはならない。パートナー必須というわけではないが、その一度踊るノルマをこなすために、親兄弟であったり、パーティーの主催者が紹介したりで一曲踊る相手を調整済みで来るらしい。


 冒険者含む他国の人間は別に踊らんでもいいのだ。が、おそらくクリスティーナと一曲踊っておいた方が彼女のために無難だと言われ、練習をしている次第。


 大規模戦で手に入れたスキル石に『ダンス』があるのだが、使ってしまおうか。大量にスキル石を手に入れすぎて、結局選ぶのが面倒で放置している。だが、絶対ダンスなぞこの一回だしな。やはり自力で取得する方向か。


「お、このケーキ美味い」

「いい酒を使っている」

ガラハドとイーグルに珍しくケーキが好評だ。ケーキというか使った酒のようだが。


 ちなみに帝国は、爵位の高い者や『アシャの庭の騎士』は賑やかしに踊ることが慣例ではあるらしいが、多くにとって必須ではない。ただ、『ダンスに誘う』イコール『断られても恥ではない気軽な告白』のようなものらしく、踊れる者は多いそうだ。


「どうも別な理由が上達を阻んでらっしゃるようですね。女性パートを引き受けますので、私と踊ってみましょうか」

「踊れるのか女性側」

「踊ったことはないですが、覚えてはいます。相手がどう足運びをするか、理解していた方がリードしやすいですよ」


 ダンス練習後半は、カルとパートを変えて何度か踊り、最終的に全員踊った。圧倒的に女性が足らんので、むさ苦しくなるかと思ったが、案外優雅に見えた。カオスではあったが。


 というか、ガラハド、上手いじゃないか! レーノに至っては、私の練習を見て覚えたそうで、私より足運びがスムーズ! どういうことだ!?


 途中、水を飲みに降りてきたらしいマーリンが嫌そうな顔をして引っ込んだ。気持ちはわかる。


 ラピスとノエルのダンスにはとても癒されました。


 頑張ったおかげで、スキルに『ダンス』が出た。経験を重ねることによって出るスキルは、使わないとすぐ消えるので戦勝会までは頑張って維持するつもりだ。


 維持し続けるのが大変なので、直前でダンスレッスンしているわけだが。エルフ大陸に行くころには綺麗さっぱり消えてるはず。


 そんなこんなで迎えた戦勝会当日、招待状を持って王宮へ。私たちが案内されたのは、再びお偉いさんが集まる側。


 今回はレオを除くクランのみんな、ロイたちと炎王たちもいる。そして、会場である広間が広がっているような?


お茶漬:戦功で決まるの場所

菊 姫:国への貢献度でしか?

シ ン:レオが入れねぇから鵺戦参加したやつだろ?

ペテロ:鵺戦はどちらかというと、帝国の好感度な気がするけどw

レ オ:わはははは! 今日も鵺のクリア失敗した!

ホムラ:【クロノス】と一緒だろう? 

レ オ:いや、今日はなんか一緒にいた人!

お茶漬:レオはノリで組むから、聞いてると職のバランスとか毎回ひどい

シ ン:それにしてもスーツ持っててよかったぜ

菊 姫:流石にお腹丸出しのいつもの格好は浮くでし

ホムラ:みんな珍しい格好だな


 みんなといっても、お茶漬と菊姫は沢山おしゃれ装備を持っていて日常的に着替えているのであれだが。


 ペテロとシンがフォーマルスーツ。ロイたちはいつもの格好だが、炎王たちは自主的にか、エリアスに着替えさせられたのか戦闘装備ではない正装をしている。


お茶漬:僕、ちょっと顔繋ぎにNPCと会話してくる

菊 姫:こっちにいる人たちは王族とか貴族とかでしね

シ ン:エリアわけしてあるってことは、なんかあんのかね?

レ オ:なんか面白い話あったら後で聞かせてくれ!

シ ン:おう! じゃあちっと話してみっか!

ペテロ:貴族関係のイベントは面倒そうなんで、私はパスかな。んー、仕事の()はありそうかw


 ペテロが笑いを含んで軽く言っているが、それは暗殺の仕事のことだな?


ホムラ:私も参加したい

お茶漬:ホムラはむしろ座ってても向こうから寄ってきそうじゃない

ペテロ:寄って行こうとしても鉄壁ガードで近づけないwww

菊 姫:王子様がうろうろしてるでしよ?

シ ン:無言の圧! 王子は近づけない!


 人聞きの悪いことを言うな! と言いたいところだが、事実です。視界にさっきから王子がちらちら入ってくるのだが、カルとガラハドの圧に近づけずにいる様子。


 王家や貴族の相手は面倒そうなんで助かる。イベント的にもドロドロしたものや、シビアな内容のものが多いと聞くので近づきたくない。


レ オ:わはははは! こっち乙女ゲーム始まった〜!

ホムラ:またなんか婚約破棄とかか?

レ オ:いや、俺がなんか断罪されてる!

お茶漬:何をしてるの、何を


 相変わらずレオの行動はカオスすぎて予測がつかない。そして前回のパーティーでもあった学園乙女ゲーム、またあるらしい。学院の方は男性向けエロゲ風イベントが起こるらしいが、参加プレイヤーが幼女だったりするのでカオスなことになっていると聞く。


 落ち着かない時がすぎ、王が登場して開会を宣言する。魔法都市アイルの建国の話から始まったのでちょっと長かったが。


 開会とともに懸案のダンス。王と王妃が中央に、その隣にさっきウロウロしていた王子とその相手、公爵――たぶん――とクリスティーナ。他に何組か、おそらく爵位の高い順に王を取り巻き、一曲目が始まる。


 曲が終わると踊っていたものが場所を開け、次の組と入れ替わる。クリスティーナが公爵の腕を離れ、こちらにやってくる。


 ダンス、ダンスか? 大丈夫、スキルはまだ消えていない。


「レンガード様、お久しぶりです。先のパーティーでのこと、お礼を申し上げます」

クリスティーナが腰を低く落とし、顔を伏せた姿勢で話す。


カミラ:ホムラ、ほら! 誘わないと!

ガラハド:今だぞ、今! 

イーグル:手を差し出して、『一曲お相手を』だ


 パーティー会話での圧。


カル:躍らぬにしても、声をおかけしませんと顔をあげられません。おそらく、ここでそこそこの会話をすればクリスティーナ嬢の面目は保たれます。


 カルからの助言。そこそこって何!? 飯の話をしていいのか? 絶対そういう方向じゃないだろう? かといって、鵺との戦闘の話でもない気がする。


「すまんな、こういう場での会話に慣れていない。喋るよりは一曲お相手を――」

会話選択の難易度から逃げた。


 いや、せっかくダンスの練習に付き合ってもらったことだし、成果の披露せねば。


 差し出した私の手に白い指が重ねられ、クリスティーナと目が合う。手を引き、そのまま空いているホールへ。


 エスコートしているようでいて、私がエスコートされてるなこれ。いや、お互い手順がわかっているからスムーズなだけか。


 曲はコントラバスのリズムを聞いていればなんとかなりそうだ。心の中でワンツーワンツーと唱え、姿勢を正し、顔はクリスティーナに向ける。


「は〜〜〜〜!! 白レン様がダンス!!!」

「優雅!」

「く……っ。第二王子と一緒に沈むかと思えば、アルディバンス公爵家は安泰か」

「こうしてはいられない、アルディバンス家とつなぎを作らねば」

「ええええ! ダンス、ダンスを覚えれば私も踊れますか……?」

「この機会のために、クリスティーナちゃんの好感度稼ごうとしたのに近づけなかった!」

「レンガード様と踊れる条件なに!?」


 何か叫んでる人。リズム楽器の音が途切れるから、すまんがもうちょっと声を落としてくれ。


 なお、ステップを繰り返すだけの一番簡単なダンスです。

本日4/20 新しいゲーム始めました。9巻発売!

ドラマCD3と紅茶缶も!

オーディオブック5も5月配信で盛りだくさん


https://www.tobooks.jp/newgame/index.html

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] クリスティーナとの旗は立たないか(知ってた)
[一言] オーディブルから来ました ここまで楽しく読ませていただきました♪ 掲示板の話も楽しみで仕方ないです、でも運営さんも更新してもらえるともっと嬉しいです あの、運営さんの常識?を壊してw?行く運…
[一言] 早く続き読みたいっ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ