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僕の騎士道物語 孤独の主と友誼の騎士  作者: 優希ろろな
いざ、フォルトゥナ学園!
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沈んでいく意識

 アディに襲われて怪我すらならまだしも、な。

 アディは大丈夫なんだろうか。俺が消えたことで、またなにか冷酷な言葉を投げつけられていなければいいが。

 他人の心配をしている場合ではないけれど、あんなところを見てしまったせいか、どうしても彼のことが気掛かりだった。


「……あの人には、ルナの姿が見えていなかったな」

『 そうですね。私が心を許してはいませんから、見えていなくて当然です』

「でもルナを捕まえたのはあの人なんだろ……? 見えないのに、どうやって捕まえたっていうんだ?」

『 術による捕縛です。本来であれば人間相手に捕まるはずがないのですが、彼女はコロボックルさん達に手を出し始めたので……。盾に取られ、さすがに抵抗することができませんでした』


 人質をとるだなんて、ヒーローとして許せるべき行為ではないと俺は強く唇を噛む。

 アディをも責めて、やっていることが汚くて、やっぱりいちいち癪に障る。


「瓶の中に入っていたルナは、ただ真っ黒だったよな……」

『 あの時はヒロさんのことを気の毒だと思いつつ、様子を見ていただけですから。私の姿も闇に紛れていました』


 だとするとアディの母親はその闇の塊を月の精霊だと思い、捕まえていたってことになるのだろうか。

 でもそんな姿だと、確かに人間の意思を食べてしまうようにも見える気がするな。俺が初め、そうだったように。……単なる思い込みなのか?


「……ごめん、ルナ。俺、どうやってもここから動けそうにはないや」

『 いえ、小道まで来たのですから大丈夫だとは思います。馬車に気づかれず、轢かれさえしなければ』


 彼女が怖いことをさらっと言うから、俺も苦笑してしまう。

 でも本当に起こりうることなので、冗談として受け止めていられない。雨で視界も悪いだろうし、車のようにライトがついているわけでもないから、道で横になっている人間になんて気づかないかもしれないからだ。

 それでも俺は動けなかった。本当に、限界だった。


「アディ達も、これ以上追ってこなきゃいいけど……」

『 彼等は人に見えるような場所では動きません。なにせ目立ちますから、すぐに周囲に特定され、自分を不利な状況に追い込むだけです。ですからそこは心配する必要はありません』


 それだけでも安心するには十分だ。

 寒いけど、この際仕方ない。地面の上だけれど、仕方ない。

 俺は静かに目を閉じた。少し休みたくて、意識を手放したかった。


『 もう少しだけ街のほうへ寄っていただきたかったのですが……今のヒロさんには、辛いだけですよね。今日一日で、自身の状況が目まぐるしく変わっただけでも理解、対応するのが大変な時なのに、それに加え傷つけられて……』


 ルナがなにか呟いているようだけど応えることができず、俺はただ聞き流しているだけだ。むしろルナがなにを言っているのか、耳で聞き取っているだけで頭には全く内容が入ってこない。

 降り注ぐ大粒の雨が地面から跳ね返り、体を汚していく。

 これからなにをしていくべきか道は決まっているけれど、今はただゆっくり眠りたかった。


『 私がなんとか貴方を人の元に運んであげることができたらいいのですが……。怪しまれ、警戒心を招き、おそらくはヒロさんから人を引き離してしまうかもしれない』


 でも、このままでは――。


 ルナはさっきからなにをぽつぽつと呟いているのだろう。

 そこまで焦っているようには見えないから、命に別状はないはずなんだけど。

 あぁ、ここで眠っていれば馬車に轢かれるかもしれないから、俺をどうにか移動させようとしているのか。だよな、ここで人が寝ているなんて普通思わないよな……。

 でもそれにしたって、今の俺には無理だ。そう、無理なんだ。

 今度こそ、意識が闇に沈んでいった。

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