最終話
レアの頭を右手で撫でた。
「起きてるんだろ」
そう言うと、レアがゆっくりと頭を上げた。
「バレてたんですね……」
「魔女ってのは異様に鋭いからな」
「無事目覚めてよかったです。一時はどうなることかと思いましたけど」
「あれだけ連続で戦闘したんだ、こうなっても仕方ないとは思う。まあ、これからあんなことになることはないだろうがな」
「スリエルがいなくなったからですか?」
「あんな化け物、そうそう現れないからな。魔女が暴走でもしない限りは魔力を消費しすぎることもないだろう」
「そうですね。ヘリオードさんもいませんし」
「確かに、な」
ため息をついて目を伏せた。
ヘリオードがいない今、俺には目標となるようなものがない。ヴェルが言うように特定の職業に就くのも悪くはない。
「これからどうしますか?」
「ヴェルと同じようなこと言うんだな」
「それはそうですよ。ずっと復讐のために生きてきたような人生だったんですよね? それなら他の目標を探さないと」
「なんでお前が張り切るんだよ」
「私も新しい目標を探さなきゃいけないので」
「そうなのか?」
「今までの目標はアナタについていくことだったんですよね。でもその必要がなくなったから、今度はちゃんとした目標を探そうかなと」
確かに、俺みたいなめちゃくちゃな人生送ってきたヤツについていくのは大変だっただろうな。
「なにかやりたいことでもあるのか?」
「そうですね、先生とかやってみたいですね」
「お前らしくていいと思うぞ。まあどういった先生になるにしても教養と資格は必要だけどな」
「大丈夫です、頭は悪くないのでなんとかなるでしょう」
「まあ頑張れ。お前ならなんとかできるだろうさ」
「で、ロウはどうするんですか?」
「全く決めてない」
「だろうとは思っていましたけど」
「だがなんとなく方向性は決まった」
「じゃあなにするんですか?」
「それはそのうち言う」
「私には言わせておいて……」
「大丈夫だ。どこかに行ったりすることはない。たぶん命が危なくなるようなこともないはずだ」
「それを信じろと?」
「信じてもらわなくても問題ない。スリエルもヘリオードもいないからな、俺が無理をする必要はない」
それこそ魔女がなんとかしたらいい。
「でもツーヴェルさまはいいんですか?」
「俺がいなくなって寂しがるようなヤツでもない。それにシスターズだっているだろ。ここを根城にして好きなことをやらせればいいんだ」
ここでようやくヴェルが俺を式守にしなかった理由がわかった。いつかこういう日が来るのがわかっていたんだ。最初から俺の目標は復讐だけだった。つまりその対象がいなくなれば俺は魔女のそばにいる理由がなくなる。
俺は誰かを守るために力を振るっていたわけじゃない。ただただヘリオードを殺したい一心で力をつけた。そんなヤツに権力を持たせるわけにもいかない。それに復讐を果たせばその力も必要なくなる。
「姉も妹もツーヴェルさまのことは好きみたいなので大丈夫だとは思いますが……」
「じゃあそれでいいだろ。俺たちは俺たちの人生を歩まないとな」
「そう、ですね」
そう言って、レアが笑った。
その瞬間、心の奥底が急に温かくなった。心が落ち着いていくのを感じる。ようやく終わったんだと、今このときにようやく実感できた。
この笑顔が見られるならそれでいい。こうやって笑っていられる人間が増えていけばいい。そう思いながら、俺はレアの手をそっと握るのだった。




