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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と血濡れの英雄》
180/225

四十九話〈ロウファン〉

 目蓋を開けると白い空間が広がっていた。久しぶり、と言いたいところだが昨日は一日中この景色を見させられていた。


 白い空間の中央には一人の少女が立っていた。


「ようこそ、まさかこんな形で〈紛い者〉と遭遇するとは思わなかったよ」


 少女の名前はトロストライデ。黄の大魔導書であり、本来は黄の一族しかこの空間に来ることはできない。


「〈紛い者〉とはよく言ったものだ。でもこの場合、俺がおかしいんじゃない。お前がおかしいんだ。この遭遇方法はむちゃくちゃなものだが、異端なのはこっちじゃなくそっちってわけだ」

「まあ確かに、この状況だと私の方が異端だな」


 トロストライデが「くっくっくっ」と笑った。今まで接したことがないタイプの性格かもしれない。


「ほかにおかしいところはあるか?」

「まさか人間に気遣われるとは思わなかった」

「いや、お前の調子が悪いと困るからだ。ちゃんと大魔導書として機能してくれないと俺が苦労した意味がない」

「ああ、そういうことか」


 トロストライデは腕を回したり飛び跳ねたり、首を回してみたり自分の体をじっと見つめてみたりしていた。


「まあ、違和感があるのは仕方がない。大魔導書の中じゃないんだ。そうやっても違和感はある。だが安心しろ。機能的にはまったく問題はない」

「信じていいんだな?」

「信じてもらわなければ困るな。先に進めないだろ?」


 そう言ったあとでトロストライデは指をアゴに当てて不思議そうな顔をした。俺がここにいることに対しての疑問をまだ解決できてないんだろう。


「で、どうしてお前はここにいるんだ? というか「この方法」をどうやって思いついた?」

「俺が思いついたわけじゃない。魔女たちが俺に言ってきた。こういう方法があるから、そのために魔導書を契約しておけってな。古い文献に載っていた方法だから間違いないとかなんとか」

「なるほどなるほど、それなら納得だ」

「そしてその方法を用いてスリエルを封印したこともわかっている。過去にスリエルと対峙した際にも契約者が欠けていた。そしてそれを補ったのがこの方法だ」

「その大魔導書の作者が作った別の魔導書を用いて代用品を作る行為。中期に作られた魔導書が持つ学習性を利用して作られたその魔導書を「贋作」と呼んだ。贋作を作る条件は様々だが、属性と作者、それと魔導書が中期であればだいたいなんとかなるとは言われているな」

「贋作にも大魔導書としての能力が宿る。完璧ではない上、大魔導書ではない。だから常にその力を行使できるわけではないが、一時的に大魔導書の能力を持つことが可能になる」

「そこまでわかってて贋作を作るなら問題ない。あとは人間がどこでその力を使うかにかかっているからな」


 トロストライデがカツンとヒールを鳴らした。


 俺と彼女の間にテーブルがせり上がってくる。正直「またこれか」と言いたくもなる。何度やればいいんだ。


「もう嫌だ、という顔だが仕方がないだろう。そういう世界なんだ。わかっていると思うが容赦はしない」

「望むところだ」


 テーブルの次にせり上がってきたイスに座る。おそらくこれが最後の試練になるだろう。いや違うな、最後にしたいのだ。さすがにこれ以上の魔導書は必要ないからな。


「とは言うが試練は必要ない」

「なんだよそれ、せっかくやる気になったってのに」

「これは契約とはまた違うからな。中期の魔導書に大魔導書の一部を書き写すというそれだけの話だ。私とお前が契約をするわけじゃない」

「じゃあなんで座らせたんだよ」

「私がお前のことを知らなきゃならない。とりあえず両手を出せ。手の甲を下にして開けよ」

「必要あるか?」

「いいから」


 言われるがままに両手を出した。

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