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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と血濡れの英雄》
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三十八話

 しばらく分身たちと戦っていたが、予想よりも早く決着がついたらしく分身は液体状になって崩れていった。


 そしてまた数分後、ウィロウが階下から上がってきた。


「遅いぞ」

「ふざけるな。こっちだって大変だったんだ」


 と、ウィロウがため息をついていた。


「遅いぞと言う割にはこんなところで油売ってていいのか? 早く上らないといけないんじゃないのか?」

「消耗戦だったんだぞ。すぐになんて動けるか」


 そう、ディーンの分身は思っていたよりもずっと強力だった。防御力はそこまででもないが、あの人数であの戦闘力だ。一息つかなければやっていられない。


「結局、ヘリオードも残ったんだな」


 ウィロウが言うようにヘリオードは上階へのドアを見ながら佇んでいる。俺たちを攻撃して来ないということは、これから先も協力してくれると捉えてもいいだろう。


「アイツも裏切り者だしな。今更スリエルの元に戻ることもできないだろ」

「そうなると少しばかり疑問が残るな」


 ウィロウが顎に指を当ててそう言った。


「疑問?」

「オズワルドもそうだが、ヘリオードもまたスリエルによって蘇生された存在だ。無理矢理とはいえ、スリエルの魔力で動いていると考えていいだろう。であるならばオズワルドやヘリオードが謀反を起こしていたことも気付いているはずだ」

「それはお前も例外じゃないだろ」

「確かにな。だからこそおかしい。こちらの動向を知っていて野放しにしていたことにはならないか?」

「スリエルもそこまで万能じゃないんじゃないか? いくら自分の魔力を注いでいても、管理能力があるかはまた別の話だ」

「逆に希代の大魔女ならばそれくらいできてもおかしくはないがな」

「考えすぎだ」

「だといいがな」

「ディーンからはなにも訊かなかったのか?」

「そんな余裕があると思うか? どうやって倒すかを考えるだけで精一杯だった。きっとお前が俺の立場でも同じだったろうな」

「バカな。俺ならもっと上手くやる」

「言ってろ」


 ウィロウがさっさと一人で行ってしまったので、仕方なく俺も後をついていくことにした。


 軽く走ってはいるがここからは体力勝負になることは目に見えている。すでに八十階であることを考えれば、次の百階でスリエルと戦うことになるだろう。となればヴェルたちは九十階あたりで待っているに違いない。


 できるだけ体力は温存しておきたいところだ。しかしスリエルのことだ。なにをしてくるかわからない。


「嫌な予感がするな」


 と、走りながらウィロウが言った。


「嫌な予感じゃわからん」

「わからないのか。ヴォルフの姿が見えない」

「確かに見てないな。もしかしたらスリエルと一緒にいるのかもしれない」


 コイツは元々ヴォルフの従者だ。ヴォルフを目の前にして俺たちを裏切らないとも言えない。


「もしもヴォルフが出てきたらどうする?」


 訊かずにはいられなかった。返答次第ではあるが、後ろから不意をつかれるくらいなら今ここで排除しておいた方がいい。


 正直なところ、それくらい俺はコイツを信用できていないのだ。


「さあな、俺にもまだわからん」

「ヴォルフが泣いて手を出してきたらその手を取るのか」

「どうだろうな。取るかもしれない」

「もしもそうなら、俺はお前を殺さなきゃならない」


 剣に手を添えた。


「今、ここで」

「やめろ」


 それを止めたのはヘリオードだった。


「止めるな。後ろから刺されでもしたらそれこそ面倒なことになる」

「少しは仲間を信じたらどうだ」

「コイツはずっとヴォルフに従ってきたんだぞ。コイツ自身も今後どうするかを決めかねてる」

「それでもお前の隣にいるだろう。それに、もしもウィロウがお前を裏切ろうとしたのならば俺が一太刀で切り伏せる」

「おいおい、二人で勝手なことを言ってるようだが、俺はそこまで弱くないぞ。ロウファンに負けると決まったわけでも、ヘリオードの太刀を避けられないと決まったわけでもない」

「そんなことはどうでもいい。俺とヘリオードが言ってるのはお前が裏切るか裏切らないかってことだ」


 そこまで言って、なんだかどうでもよくなってきた。なんで俺がウィロウのことで頭を悩ませなきゃいけないんだ。


「ここまで来るのにかなりの労力がかかってるんだ。大魔導書の契約なんて面倒なこともしたし、連戦で体はへとへとだ。その上これからスリエルと戦うだと? 馬鹿げてる。そんな中で裏切られなんかしたら面倒なことこの上ない」

「確かに、な」

「だからこれだけは言っておくぞ。裏切るならさっさと裏切れ。俺とヘリオードでぶちのめしてやる」

「まあ、それはヴォルフ次第だ」


 なんて言いながらウィロウは笑っていた。


 階段を駆け上がって九十階にやってきた。部屋の中に入ると、思いもよらない光景が広がっていた。


「そんな、馬鹿な……」


 部屋の中央には、足元数センチのところで浮いている女がいた。薄い膜を球体状に張り、その中で微笑んでいた。見たことがある。いや、アイツこそが今回の俺たちの討伐対象。


「なんでスリエルがここにいるんだ」


 ヘリオードを見るが、ヘリオードもまた困惑したような顔をしている。誰にとっても想定外。それはヴェルや他の魔女たちもそうだったのだろう。

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