表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と血濡れの英雄》
165/225

三十四話

 階段を駆け上がりながら、ふとした疑問を口にする。


「黒の大魔導書がお前の腕をふっとばすって知ってたのか?」


 当然の疑問だ。俺を指名したのだってそれが理由で、しかしウィロウがそれをどうやって思いついたのかが気になる。


「知らなかったさ。教えてくれたのはオズワルドだ」

「オズワルドから?」

「オズワルドとヘリオードは最後までスリエルに下るつもりはなかったらしいからな。お前らに地図を届けたのだってオズワルドの指示だ。といっても、オズワルドはこちらに寝返るつもりもなかったがな」

「どうしてだ? そこまで手を貸しておいてなんで寝返らないんだ」

「頑固なくらいまっすぐで義理堅い男だからだ。結局オズワルドはスリエルによってこの世に舞い戻り、自分の故郷を救ったんだ。スリエルがいなかったら故郷は救えなかっただろうさ」

「バカな男だ」


 そう言いながら俺はなぜか笑ってしまった。その生き方がどうしても愚かだとは思えなかったからだ。どういう形であれ芯を通す。それをバカにできるわけがないのだ。


「俺は黒い腕輪でスリエルに監視されていたから動けなかったが、あの二人はそうじゃなかった。まあ、スリエルは気づいてたと思うがな」

「気づいていてオズワルドを一番に出してきたのか?」

「おそらく、な。その意図までは理解できない」

「同意だな。それにオズワルドを最初に出しておいてヘリオードをまだ出さないのも気になる」

「俺もスリエルと直接会話したのは数えるほどしかない。アイツの真意を読み取るなんてのは不可能だ。だが、アイツにとって意味がある采配であることに間違いはない」

「だろうな」


 考え事は尽きないが、今はとにかくレアや魔女たちを追いかけることが先決だ。青の大魔導書を持つイズミがいるので耐久面は問題ないだろうが、それでも一人で戦わせるのは荷が重い。


 七十階。ドアが開け放たれた部屋へと飛び込んだ。異様な気配がする。しかしここはすでにレアたちが通ったはずだ。今までそうであったように、二十階ごとに誰かがいたのだとすれば、ここに敵がいるはずはない。


 いるはずは、なかったのだが――。


 七十階の向こう側のドアには二人の男が立っていた。一人はヘリオード。そしてもう一人は見たことがない。


「アイツ知ってるか?」


 俺が問いかけると、ウィロウが小さく頷いた。


「俺がラストールで戦ったやつだ。昔は天才軍師とか言われてたらしいが、軍師というか完全に戦士のそれだな」

「じゃああれがディーンか」

「そういうことだ」

「でもなんでこんなとこにいるんだ? ヘリオードの情報だとアイツらは八十階にいるはずだぞ」

「そんなこと俺が知るわけないだろ。わかってるのは、アイツらを倒さないと上に行かれないってことだ」


 部屋の真ん中、俺とヤツらとの距離は十メートルまで近づいた。


「まあ、そうなるよね」


 ディーンが笑いながら言った。


「当たり前だろ。ヴォルフに言われたからって俺が素直に従うと思っていたのか? ヴォルフはたしかに恩人だが、善悪を自分で決められないほど俺は子供じゃない」

「誤算だったな。お前は一生ヴォルフに心酔してるもんだと思ってたのに」


 ディーンが後頭部を掻いた。緊張感はまったくなく、コイツがウィロウを倒したとは信じられない。


「残念だがそこを通してもらうぞ」


 ウィロウが剣を抜いた。それを見た俺もまた剣を抜く。


「若い子はすぐに戦いたがる。まあ、俺も嫌いじゃないん――」


 次の瞬間、一筋の光がディーンの胴体を横切った。ヘリオードがディーンの胴体を切り払ったのだ。


「さすがは英雄ヘリオード、か」


 ディーンの体が上半身と下半身に分かれ、上半身が地面に落ちた。続いて下半身が地面に倒れ込む。


 だがどうしてかディーンは「くっくっくっ」と笑っていた。


「そんなんじゃ俺は殺せないんだ。悪いな」


 ディーンの体がスライムのようになって飛び散った。ヘリオードの背後、そして俺たちの背後へとディーンの体が飛んでいく。


 振り返れば、ディーンが三人に増えていた。


「俺が死なないのはこういうことなんだよ。人でなくなった直後にスリエルに頼んでおいた。こういう体になっちまえば楽だなと思ってな」


 右側、左側、ヘリオードの後ろ側にもディーンの姿が確認できる。見えるだけでも十三人はいる。


「スリエルから話は聞いてたけど、本当に寝返ったんだな」

「俺は最初からスリエルに従うつもりなんかない。この体がどうなろうとも、俺が正しいと思った道をいくまでだ」


 さすがは英雄といったところだろうか。時間が経とうとも、ヘリオードは英雄であり続けていたということだ。


「やれるようならやってもいいと言われてるんでね。お前たちはここで潰させてもらうよ。ま、悪く思わないで」


 十三人のディーンが一斉に襲いかかってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ