十五話
ちなみにこの宿、北にあるというだけあって温泉がある。男性用と女性用、そして混浴用だ。混浴用は同じ部屋に泊まった男女限定で入れる。予約もできるが、予約がなければいつでも入れるという感じ。露天ということもあって人気が高い。と、宿の主人が言っていた。男女別に露天風呂を作るだけでよかったと思うんだよな、俺は。
そういう経緯があり、俺は魔導書もとい魔法少女二人と風呂に入ることになった。二人に手を引かれたというのもあるが、露天という部分にもかなり心惹かれた。男性用と女性用は普通の風呂だと知っているからだ。
身体をお湯で流してから湯船につかる。すると、二人も身を寄せてきた。右にルル、左にメーメだ。
風呂はそこそこに大きく、浴槽は部屋と同じくらいある。というのに肩が触れている。なぜここだけ人口密度が濃いんだよ。
頭を洗い、身体を洗って、再び湯船につかっても同じように身を寄せてくる。
自分から混浴に入った俺が「迷惑だ」というのもかなり問題だろうな。
「結局アンは来なかったのね」
「いや、そりゃそうだろ。お前らとは数年一緒だが、アンとは出会って一ヶ月も経ってない。魔導書って言っても女としての恥じらいはあるだろ。あとは信頼的ななにか」
「信頼は無理ね。貴方テキトーだもの」
「お前ほどじゃねーから。ホントにブーメラン好きな、お前」
「私はそんなことないけど?」
「よく言うわ」
ふと右側を見る。ルルが水面に視線を落とし、少しだけ寂しそうにしていた。
「どうした? なにか嫌なことでもあったのか?」
「いえ、あの……」
「なんだよ、遠慮しないで言ってみろ。俺はお前の主人だし、気に食わないところがあれば直す。それは契約した時にも言ったはずだ。お前は人の顔色を見すぎるから、言いたいことがあれば遠慮するなって。俺の顔色とかメーメの顔色は見なくていい。他人の心を探らなくても、お前なら節度くらいわきまえてるだろ」
ちょっと強めに言ってやった。
そう、契約した直後はもっとひどかった。基本的におどおどしてばっかりで、なにかを言うために口を開いて、閉じる。ただただそれの繰り返し。だから俺は「そういうのはいらない。言いたいことは言ってくれ」と諭した。
「じゃあ、言います」
「おう、ばっちこい」
「その、私のこともかまって欲しいなーと、思い、まして」
「あー、なるほど。わかった、もうちょっとお前と話す時間を取ろう」
頭に手を乗せ、ちょっと強引に撫で回す。頭を揺らすレベルで撫で回す。それでもルルは「えへへっ」と、嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。
「お前は本当に可愛いな。唯一の癒やしだ」
「可愛いだなんてそんな……」
「ロウはもっと私を愛でるべきね。そうよ、そうに違いない」
「頼むからメーメは黙っててくれ。お前には可愛さの欠片も感じられないから」
「またまた、そうやって冗談ばっかり」
「割りとマジだから。俺とルルの逢瀬を邪魔しないでもらいたい」
「いろいろムカつく従者だこと」
「お前の従者になった覚えは微塵もないわ。むしろ俺が主人だろうが」
本当にコイツは図々しいな。まあいいところもあるんだけど、いかんせん悪いところが目立ちしすぎる。悪目立ちとはこのことか。
身体が小さい魔法少女の二人は俺よりも早く風呂から出た。ここから眺める二つの小さな尻は結構いい眺めだった。白くてハリがある。
「いやいやなに考えてんだ俺は」
彼女たちは魔導書であり魔法少女だ。見た目は幼くとも千年以上の時を生きている。
きっとアンの尻もキレイなんだろうな。
「そうじゃねーだろ。はぁ……」
俺もそろそろ上がろう。あと数分も入っていればのぼせてしまう。
脱衣所には、すでに二人はいなかった。髪の毛を乾かすのも魔法で一瞬だろうし、まあこんなものだろう。
部屋に戻る際に食堂の横を通ったが、魔法少女三人がパジャマ姿で雑談にいそしんでいた。なんだかんだで仲良くやっているようでなにより。複数の魔導書を所持するということは、たくさんの魔法少女が同居するということでもある。当然仲が悪い者たちもいるだろう。それが上手くハマってるのだ、主人としてはありがたい。
彼女たちを横目に階段を上る。俺は一人で寝るとしよう。たまにはゆっくりと一人で眠りたい時だってある。
ベッドが一つしかないので、最終的には四人で寝なければいけないという事実には目をそむけていこう。




