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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と血濡れの英雄》
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十五話〈ゲームスタート〉

 セラフラテッドの姿が私の視界から消えました。


 来る。


 ですが避けるだけの時間もない。それに反射で避けてしまった場合、追撃に対しての対処が遅れることがあります。私はロウとは違って経験が少ない。相手の動きに対して、そのすべてを反射で対応できるほどの戦士ではないのです。


 左から風切り音。ものすごい殺気と共に攻撃がやってくる。それならば利用させてもらうまで。


 左側へと剣を振った。そちらがそのつもりであれば、私は防御だって捨ててアナタを斬り伏せます。


 しかし私の剣撃は空を切った。腹部に衝撃が走り、気がつけば地面を転がっていました。


「無様だな」


 すぐさま起き上がってセラフラテッドへと視線を戻します。どうやらセラフラテッドは無刀であり、素手で戦うことを基本としているようでした。


 また姿が消え、風切り音と殺気がこちらへと向かってきます。相手の力を利用して攻撃へと転ずるというのは彼女には効果がなさそうです。


 殺気がする右側へと防御を固め、次は一度受けてから反撃をする方法を選びます。ですが――。



「ぬるい」


 左からの攻撃を予期できず、また同じところに打撃をもらってしまいました。


「やはり貴様は白の名を冠するに相応しくない」

「相応しいとか相応しくないとか、そういうのはどうでもいいんです。私がやらないと世界が滅びてしまうんです」

「そうかそうか。ならばこんな世界滅びてしまえ。選ばれし者が統治できぬ世界に存続するだけの価値などないわ」


 彼女が右足を上げて膝を折ります。左足一本で立っているというのになんという安定感でしょうか。鍛え抜かれた戦士という表現が非常に似合っていました。


「攻撃、してこなくていいのか? このままだと貴様はこの精神世界で精神を破壊されて死ぬぞ」

「言われなくてもやりますよ!」


 今度は私が前進します。


 セラフラテッドは楽しそうに笑っていました。この勝負を楽しんでいるわけではありません。自分よりも弱い者をいたぶって楽しんでいる。そんな笑顔でした。


 光の玉へと向けて打突。はらりと避けられ、足払いで転倒しそうになりました。


「はああああああああああ!」


 倒れるわけにはいきません。彼女が慢心している今こそ、私の攻撃が届く唯一の時間なのです。


 更に前進して剣を振る。これもまた避けられる。


 前進、剣撃。回避。


「壊れた機械人形のようだな」


 目の前に拳が現れた。殴られると直感しながらも、私は剣を振るうことはやめませんでした。


 一瞬だけ意識が飛びましたが、それでも一矢報いることには成功したようです。


「まず一つ」


 彼女の周囲を漂っていた白い玉が二つになっています。顔面への強打の際、私は目を瞑ることなく白い玉だけを注視し、攻撃をやめませんでした。


「だがこれは妾が貴様に付き合ったからこそ破壊できたのだ。それはわかっておろうな」

「ええ、承知してますよ。それでも一つ破壊したというのは事実ですから」

「口の減らぬ娘だ」


 瞬く間に、彼女が私の眼前に現れました。大きな瞳が、私の目いっぱいに映っています。


 腹部を殴られ、態勢が前のめりになります。側頭部を蹴られて脳が揺さぶられます。そのまま蹴り上げられ、私の身体は宙を舞いました。速く、そして強い。


 起き上がろうとする私に対して、彼女は攻撃の手を緩めませんでした。腹部を蹴られて地面を転がり、背中が壁に激突しました。首掴まれて壁沿いに身体を持ち上げられ、かと思えば全身への打撃が叩き込まれてしまいました。


 その時点で、私の身体はボロボロです。立ち上がることはおろか、呼吸すらもままならない。


「貴様という「まがい物」を白の一族と認めるわけにはいかんのだ」


 顔を上げると、セラフラテッドが私を見下ろしていました。殺意、侮蔑、憤怒、そして悲壮。


「なぜ、そんな悲しそうな顔をするんですか」

「悲しそう? 妾が? そんなわけがなかろう」


 彼女が自分の顔に手を当てる。そうか、彼女は自分でも気がついているんだ。そう、思いました。


「私は確かに「まがい物」かもしれません。白の一族として生まれたわけでもなければ、その責務を背負ったわけでもないんです。私は白の一族の遺伝子を持たされた、偽りの人間なんですから」

「人造人間であると知りながら、責任がないとわかっていながら、貴様はどうして精神世界までやってきたのだ? どうしてそんな顔で笑っていられるのだ?」


 そうですか、私は今笑っているんですね。


「世の中には責任とか義務とかでは縛れないものもあるんですよ。けれど責任がないから、義務がないからやらなくてもいいというわけでもありません。それらは行動理念の一つにはなるかもしれませんが、必ずしも絶対的な権限を持っているわけではないんです」

「貴様の行動理念は別のところにあると言いたいのか? よもや愛だのなんだのと言い出すのではあるまいな」

「それも一つの要素です。でも今は違いますよ」

「ではなんだ? それ以外になにがある?」

「私が、そうしたいからです」

「貴様、なにを言っているんだ?」


 呼吸を整えて私は立ち上がります。セラフラテッドはそれを止めることなく、攻撃をしてくることもありませんでした。

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