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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と血濡れの英雄》
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十一話

 食堂にはすでに魔女たちが集まっていた。


 南の魔女、オクトリア=マインランドがイスに座り、その後ろには男女二人が後ろ手に手を組んで立っていた。


 東の魔女、イツカ=ランドリオンがイスに座り、その後ろでは男が三人、女が二人。


 北の魔女、フォーリア=アンスガードがイスに座り、その後ろにはナディアと男、それにじいさんが立っている。


 基本的に魔女の面々とナディア、じいさん以外は知らない顔ばかりだ。中には俺よりも年下と思われる少女もいる。あれも式守なんだろうが、幼い顔をして相当のやり手なのかもしれない。


「よし。これで全員だな」


 そう言いながら、ヴェルがイスに座った。


「ウィロウはいないんだな」


 俺の言葉を聞き、ヴェルが指で二度三度と机を叩いた。


「ウィロウは、捕まったよ」

「捕まった? アイツが?」


 アイツだって決して弱いわけではない。それにヴォルフの部下であったからこそ、スリエルへの執着があったはずだ。たとえ捕まったとしても逃げてくるとは思うのだが。


「それも含めて話をする。とりあえずお前は後ろで聞いてろ」

「俺たちのイスはないのか?」

「この状況見てわからないのか?」


 見渡してみる。確かに魔女だけがイスに座って、おそらく式守であろう面々は立っている。


「だからなんだ? 不公平極まりないだろ。イスなんてたくさんあるんだから」

「ホントにお前は遠慮というものを知らないな……」

「全員で戦うんだろ? 遠慮しててどうする。わざわざ立ってるよりいいだろ?」

「わかったわかった。好きなように座れ」


 それを皮切りに、他の式守も魔女に促されてイスに座り始めた。中には「自分は大丈夫です」と断る者もいたが、ソイツのやり方っていうのならば意見しようとは思わない。


「バカ弟子が失礼した。それではスリエル討伐に向けての話し合いをしよう」


 こうして、ヴェルを中心にして話し合いが始まった。基本的にはすべての情報を持っている魔女四人の話し合いになると思われる。


「各自の進捗を教えてくれ。まずはオクトリアからだ」

「正直あまり言いたくはないけどオズワルドは取り逃がしたわ。元々斥候が目的ではあったけれど、オズワルドはよほど慈悲深い人物のようね」

「慈悲深い?」

「うちの式守を殺さなかったのよ。姿はくらましたけどほぼ無傷で返してる。それどころか助けてもらったのよ。オズワルドを崇めている町民から式守を助けてくれた。ただ、オズワルドの意思に反してスリエルは独自に動いているみたいよ。スリエルを信仰する教団……安直だけどスリエル教団とでもしておきましょう。そのスリエル教団の連中が私の式守を襲ってきた。無属性の爆発を体に仕込んで自爆をするような連中だから相当危ないわね」」

「スリエル教団か。そうなると、他の式守の行動を監視していてもおかしくないな」

「そういうこと。だからこそ、ここからは迅速に動かないと先手を打たれる。自爆の規模はわからないけど、これが多くの場所で発生したら手が回らなくなる」

「なるほどな。ちなみにオズワルドは大魔導書の契約はできるのか?」

「残念なことに、オズワルドはイエローの血を僅かに引いてるようね。黄の大魔導書が見つからないことを考えると、黄の大魔導書はスリエルの手に落ちたと考えていいわ」

「わかった。それじゃあ次はイツカだ」


 イツカは会釈をしたあとで話し始めた。


「私の方は青の大魔導書を所持していましたし、ブルーの血族も手元に置いておりました。こちらのイズミがそうなのですが、魔導書との契約にも成功しました。魔導書を追ってきたマリアールも撃退しました。これでスリエルの従者が一人消えたことになりますね」

「そっちは問題なさそうだな」

「ええ、すこぶる順調ですよ。それと頼まれていた物も入手できました」


 イツカがバッグをテーブルの上に置いた。そのバッグから出出したのは一冊の魔導書だった。


「よくやってくれた。白の大魔導書セラフラデットか」

「白の大魔導書の隠し場所を記した文献がありましたから。あとは契約者を探すだけですね」

「そっちは私がなんとかしよう。じゃあ次はオクトリアだ」

「私の方は見ての通り、赤の一族である式守を奪われたよ。今頃は洗脳でもなんでもされて、スリエルの配下になってると思う」

「式守一人で行かせたのは無理があったか」

「一人で行かせるしかなかったんだ。さっきフォーリアが言ってたスリエル教団の信者が私の領域にも踏み込んできてね。その対処で手一杯だった。あともう一つ言わせてもらえば、相手の力を見誤ってたって感じかな」

「スリエルの従者を甘く見てたってことか?」

「そういうわけじゃないよ。スリエルの従者と言えど、私たち魔女とは一対一でやれるほどの実力はない。それなら私の魔導力を貸してやればなんとか勝てると思ったんだ」

「上手くいくことばかりじゃないってことよ。で、紫の大魔導書は?」

「そっちの方はちゃんと持ってきたよ」


 今度はオクトリアが魔導書をテーブルの上に置いた。あれが紫の大魔導書か。


「紫の大魔導書についてはあてがない。これから探すことになる。こればっかりは下っ端の式守たちを総動員でもして対応してくれ。最後に私だが、黒の大魔導書の契約に成功、準備は整ったと言ってもいい。これで契約者の合計は三人……そういえば緑の大魔導書はどうした? フォーリアの方に任せてあったと思うが?」


 フォーリアはテーブルに肘をつき、大きくため息を吐いた。心底うんざりしている、という雰囲気が漂ってくる。


「ちゃんと見つけたわよ? 契約も済んでる。でもねえ、私では御しきれないほど、なんというか自由奔放で困ってるの」

「来てはいるんだよな?」

「そのへん散歩してくるって行ったきりどこかに消えたわ。スリエルに監視されてるだろうからってあれほど言っておいたのに……」


 その時、大きな音を立てて食堂のドアが開かれた。

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