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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と血濡れの英雄》
136/225

五話

「我が名はシャルフレギューラ。武器種は剣で名前はグラム、クラスはダークマター」

「お前ならレアを助けられると聞いた。それは間違いないな?」

「そのレアという人は最後に貴方が切った少女かしら」

「そうだ。クローン体であるがゆえに、普通の人間としては生きられない。そして、今その生命が尽きようとしている」

「クローン体ね。それならばなんとかできると思うわ。でもなぜ貴方はそのクローンの少女を助けたいの? 恋人?」

「そういうんじゃない。妹みたいなもんだ。それに、生きたいって思ってるやつを生かそうとしてなにか問題でもあるか?」

「問題はないけれど、ちょっと意外だなと思っただけよ」


 シャルは「ふふっ」と微笑んだ。この感じどこかの誰かさんにそっくりだ。


「意外?」

「気に触ったのなら謝るけれど、感情の起伏が少なく、冷徹で誰にでも刃を向けられる人なのかと」

「その認識で間違いない」

「そう、ならいいわ」

「それよりもいくつか教えて欲しいことがある」

「答えられることならなんでも」


 床から椅子がせり上がってきた。シャルが「どうぞ」と手を出してくるので遠慮なく座らせてもらうことにした。


「まずは……そうだな。お前ら大魔導書はなぜ作られたんだ?」

「聞いてないの?」

「お前の口から聞きたいんだ」

「なるほど。そうね、大魔導書はやがてくる厄災を退けるために作られた、と言われたらピンとくるかしら」

「やがてくる厄災?」

「自然災害でも人災でもなんでもいい。結局は人を守るために作られたということよ」

「じゃあスリエルも厄災ということになるのか」

「そういうことね。しかしあれは、正直私達の手に負えるかどうかギリギリの線なのよね」

「以前もスリエルを抑えただろ? 七冊の大魔導書と三人の魔女によってスリエルは滅びた。それがこの世界の歴史だ」

「正解だけど、間違ってる。必要なピースが一つ欠けてるわ」

「ピース? スリエルを消滅させられた他にも要因があるってことか?」

「そういうこと。最後のピースと同じもの、もしくはそれに類似するものがない限りスリエルを倒すことは不可能に近い。先の戦いでも、私達はスリエルを完全消滅させることができなかった。つまり完全消滅させるには、前回よりもより戦力が必要になる」

「魔女は四人揃ってる」

「しかし大魔導書は揃っていない。その上でピースが足りないと言っているのよ。このままだと私を従えたところで敗戦は濃厚よ。今この状況で貴方ができるのは、レアという少女の命を救うことだけ」

「なにか方法はないのか?」

「訊くまでもないんじゃなくって?」


 意地の悪い女だ。そういう感想しか出てこなかった。


「大魔導書を集めること。それと最後のピースを見つけ出すこと」

「八割正解」

「残りはなんだよ」

「魔女が強くなること、それに尽きる。いくら大魔導書が強い力を持っていたとしても、魔女を抑えられるのなんて魔女しかいないのよ。魔女の胸に剣を突き立てることは十代の新兵にでもできることなのよ」

「肝心なのは守りか」

「スリエルの攻撃に耐えることができなければ隙を作ることもできないの。魔女四人が束になって、スリエルの攻撃を一回しか耐えられなかったらそこで終わりでしょう? だって、スリエルの元にも強力な従者がいるんだから」

「ヴェルたちならなにか考えてるとは思う。だからそっちは大丈夫だ」

「信頼しているのね」

「一応俺の師匠だからな。それより、さっき言ってた最後のピースってなんだ?」

「それを聞いたら探しに出る?」

「ってことは俺でも探せるものってことだな? 教えろ。なにを探せばいいんだ」


 彼女は一つ咳払いをした。


「いいわ、隠された歴史の真実をおしえてあげる。ただしそれが貴方の価値観を歪めることになっても後悔しないようにね」

「後悔ってなんだ? 俺に関することなのか?」

「その前に一度現実に戻りましょう。この話は皆の前でした方がいいと思うわ。レアのことが気になってそわそわしているみたいだし」

「そわそわなんてしてないが」

「そうね。そういうことにしておくわ。それじゃあ、また向こうで会いましょう」


 シャルが指を鳴らした。一瞬にして目の前が暗くなり、気がつけば俺は座り込んでいた。空気が薄く、むせ返るほどの古い樹木の匂いだ。

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