十八話〈ゲームオーバー〉
【37ターン目】
イズミは銃を出したが、ビオスフティスは鎚を出してきた。選択したのは盾。
点数差は縮まってきているものの、それでもこの山札の数での後追いはかなり厳しいものがあった。
ビオスフティスの手札はまだ一枚残っている。これがなにかはわからないが、鎚であった場合は非常に面倒なことになる。
彼女の手札が鎚でないことを祈るしか、今のイズミにはできることがなかった。
山札:52
イズミの手札0 スクラップ44 得点31
ビオスフティスの手札1 スクラップ52 得点42
【40ターン目】
鎚が来た。しかし、笑ったりはしなかった。ポーカーフェイスというわけではない。まだ勝ちが確定していないから笑えない。ただそれだけだった。
杖を出すと、ビオスフティスは盾を出してきた。当然、盾は意味がない。
その時、ビオスフティスが苦い顔をした。この顔がなにを意味しているのか、感覚的にだがイズミにはわかっていた。
杖を選択して点数を増やす。
今までの経験から言えば、ビオスフティスのスクラップには高得点のものはない。それならばこちらが杖を得点にし続ければなんとかなる。上手くいくかはわからないが、それにかけるしか道は残されていなかった。
ビオスフティスはカードを引き、パスをした。
これが盾であることは明らか。で、あるのなら、鎚を隠して、あとから鎚をかぶせるような真似はできない。
勝利が眼前に迫っていることを、ここでようやく実感できた。
山札:38
イズミの手札0 スクラップ46 得点36
ビオスフティスの手札1 スクラップ56 得点42
【41ターン目】
ここでもまた鎚を引いた。
鎚を出すと、ビオスフティスが盾を出してきた。これも先程と同様に無効化することに成功した。ビオスフティスの手札が0になり、手札に頼れないのは双方同じとなる。
が、杖を選択しても、点数はまだビオスフティスには届かなかった。
41対42。ビオスフティスが出すカードによっては山札がかなり減らされる。同時に、ビオスフティスが鎚を引いても勝てなくなる。
考えるな。気丈になれ。
叱咤ではなく激励しろ。
不思議と鼓動は平常に動いていた。それが不思議でならなかったが、今はそれがありがたかった。
山札:32
イズミの手札0 スクラップ44 得点41
ビオスフティスの手札0 スクラップ56 得点42
42、43、44とターンが進んでいく。
お互いが剣や銃といったカードを引いては出し、引いては出しを繰り返した。
どちらも鎚を引けなかったのだ。
いや、ビオスフティスは鎚を引く必要がない。なぜならば今の状況であってもビオスフティスは勝てるからだ。
今の状況でも勝てるビオスフティスと、最低でも一回鎚を引かなければいけないイズミ。この差は、天と地ほどの差があった。
【45ターン目】
山札の残りは6枚。山札から一枚のカードが手元にやってくると、山札は5枚になった。カウントダウンのようだなと、冷静に見ていた。
手元には鎚のカードが来た。
鎚のカードを出し、盾を選択した。
45対42になった。
しかしイズミは笑わない。まだビオスフティスのターンが残っているからだ。
ビオスフティスもまた「まだ終わっていない」と言わんばかりに微笑んでいた。
ビオスフティスがカードを引き、それを場に出した。
出たカードは剣だった。
この時点で山札は二枚。
それでもイズミは笑わず、安心することもなかった。
負け筋がまだ残っているからだ。
山札:2
イズミの手札0 スクラップ50 得点45
ビオスフティスの手札0 スクラップ70 得点42
【46ターン目】
最後の負け筋。それはイズミが盾のカードを引くことだった。その上でビオスフティスが鎚を引けば負けになる。
最後のカードドロー。そのカードは剣だった。
剣を出すと、残った一枚がイズミのスクラップへと送られた。
ようやく、イズミの頬が弛緩した。
本来の、年齢相応の笑みだった。
「よく耐えたな。称賛に値する」
「お褒めに預かり、光栄です」
しかしビオスフティスもまた笑っていた。それは新しい主を祝福する笑みなのか、勝負を楽しんだことによる笑みなのか、そこまではわからなかった。
山札:0
イズミの手札0 スクラップ50 得点45
ビオスフティスの手札0 スクラップ70 得点42
試練終了
勝者:イズミ




