十七話
【32ターン目】
剣を引き、剣を出す。山札が削れないことに僅かながらに安堵した。
ビオスフティスは鎚を出し、杖を選択した。
焦燥感のせいか、強く握りこぶしを作っていることに気がついた。
点数差は8点になっていた。
自分のスクラップに円匙がないことは知っている。つまり一回では逆転できないところまで引き離されてしまったのだ。
考えろと自分を叱咤する。
だが、この白い空間を見ていると、なんだかそれも馬鹿らしくなってしまう。
考えなければいけないのに、この空間はそれを阻害する。
「魔導書を持つに相応しいって、どういうことだと思う?」
そう、問いかけられた。
「そんなのわかるわけないじゃないですか。しいていうなら、強いことでしょうか」
「強いってどういうこと?」
「漠然としか言えませんが、魔導師としての才能があるとか、こういう場合でも平常心でいいられるとか、そいういう感じですかね」
「じゃあ今のお前は、お前が相応しいと思う強さを持っているのか?」
そう言われてハッとした。
魔導書を持つ資格。それは魔法少女の試練に打ち勝つこと。
打ち勝つとはどういうことなのか。
考えなければいけないのは、本当に「ゲームに勝つ」ことなのだろうか。
考えなければいけないのは「本当はなにを考えなければいけないのか」ではないのだろうか。
「いいぞ、瞳に光が差してきた。そうでなくてはな」
少しずつ、迷いが消えていく。
「私は、私に勝たなきゃいけないんだ」
そう言って、イズミは手を前に出した。
山札:86
イズミの手札0 スクラップ34 得点26
ビオスフティスの手札1 スクラップ46 得点34
【34ターン目】
銃を引き銃を出す。
ビオスフティスは鎚を出して盾を選択。点数の差が12点になった。
が、イズミは動揺しなかった。
こういうものなのだ、という現実を受け入れたのだ。
考えても仕方がないことをどれだけ考えても意味はない。
この時も、ビオスフティスは楽しそうに笑っているだけだった。
山札:70
イズミの手札0 スクラップ42 得点26
ビオスフティスの手札1 スクラップ48 得点38
【36ターン目】
ここでようやく転機を迎える。鎚を引いたのだ。
残りの山札は少ない。この山札が終わるまでの間に、最低でもあと二回は鎚を引いておきたい。
杖を選択して点数を稼ぐ。まだいけると、長く息を吐いた。
ビオスフティスは杖を出してスクラップを増やしていた。
山札:58
イズミの手札0 スクラップ40 得点31
ビオスフティスの手札1 スクラップ54 得点38




