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エロゲ転生 運命に抗う金豚貴族の奮闘記  作者: 名無しの権兵衛


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 後日、シェリアと入れ替わるように一人のメイドがレオルドの下へとやってきた。そのメイドは王都から、わざわざゼアトにまでやってきたのだ。

 ベルーガが気を利かせてメイドを送ってくれたのかとレオルドは喜んだが、真相を知って頭を抱える。


「シルヴィア様の命により本日からレオルド様のお付となりました。

 イザベルと申します。これから、よろしくお願いします」


(どうして……どうして……)


 よもや、第四王女のシルヴィアがメイドを送ってくるとは予想外であろう。

 レオルドは心の中で咽び泣く。この国を出ない限りは魔の手からは逃れられないという事に。


 どうしてこのようになったのかは少し時を戻さなければならない。


 レオルドがシェリアの一件をベルーガに報告している頃、王城では国王ことアルベリオンに第四王女であり娘のシルヴィアは交渉の最中だった。


「お父様。どうしてもお認めにならないと?」


「お前がレオルドを気に入っている事は知っている。ゼアトへと行きたいお前の気持ちも理解している。

 行かせてもやりたいという気持ちはあるが、お前にはどうしても王都にいて貰いたい」


「それは私のスキルが必要だからでしょう?」


「ああ、そうだ。娘のお前をスキルが有用だからと言って王都に縛り付けておくのは心苦しいが、民の為なのだ」


「わかっています。それにお父様が私の為に日々研究を重ねている方々に支援をしている事は知っていますから」


 シルヴィアの持つスキル、神聖結界は、魔に対して絶大な効果を発揮する。魔物を拒み、魔法を弾き返す。

 王都を囲むほどの範囲も持っていることから、シルヴィアは王都の守りの要と言ってもいい。

 シルヴィアのおかげで王都に住む人々は、魔物の影に怯えなくてすむ。

 尤も、その事実を知っているのは王都でもごく少数だが。


 ただ、シルヴィアのスキルは就寝時には発動できない。寝る前に発動していても眠ると解除される。だから、夜間の警備は必要なのだ。


 そして、その欠点を補う為に国王は研究者を集めてシルヴィアのスキルを再現できないかと日々研究させている。

 今までも多くのスキルを再現できないかと試行錯誤してきたが、未だに再現は出来ていない。


 魔法陣を使った結界はあるが、シルヴィアの神聖結界に比べたら物足りない。

 シルヴィアの神聖結界は決して壊れないのに対して、ただの結界は術者の技量や注いだ魔力量により耐久力が変化して破壊される恐れがある。


 ゆえに守りの要であるシルヴィアを王都から出したくないのが国王の本音である。

 王都に縛り付ける代わりに、ある程度の自由は認めており王都内であれば自由に行動はさせているが、レオルドがいないのでシルヴィアは不満なのだ。


「レオルドに拘るのはやめたらどうだ?」


「それは嫌ですわ。お父様もご存知でしょう?

 あれ程までに人格が変わったのはレオルド様が初めてですわ」


「それはそうだが、調べたところおかしな点はないぞ」


「そうなんです! ですから、知りたいのですわ! どのような過程があってレオルド様はああも変わられたのか!」


「だったら、自分の部下に任せればいいではないか」


「それだと、私が楽しめませんわ。ふふっ、レオルド様ったら私の一挙一動に怯えるのですよ?

 その姿が可愛らしくて……ついつい苛めたくなってしまいますの」


(すまない、レオルド。まさか、娘にこのような一面があるとは知らなかった)


 心の中でレオルドに合掌しつつ、国王アルガベインは娘の性癖に目を瞑るのであった。


 そして、シルヴィアは結局ゼアトへ行く事は出来なかったが、レオルドが新しい使用人を探しているという情報を掴んだ。


 こうしてはいられないとベルーガに手紙を出して、自分が選んだ人材をレオルドに送りつける。レオルドの側にいることは出来ないが、シルヴィアは自分の息が掛かった人間をレオルドの側に置く事に成功した。


 しかし本音を言えば、シルヴィアは文官を送りたかった。そうすれば内情をもっと知ることが出来るからだ。

 だが、それは途中まで考えてやめた。今のレオルドがどのようにゼアトを取り仕切るか見てみたくなったからだ。


 良くも悪くも欲望に忠実なシルヴィアだったが、これが吉と出るか凶と出るかは神のみぞ知る。


 そして、現在レオルドの目の前には礼儀正しく頭をさげている美しいメイドがいる。

 名前はイザベル。冷たい目はどこか底知れない印象がある女性だ。それに、シルヴィアの推薦だから、油断できない相手でもある。

 しかし、王女自らが推薦したのだから優秀なのは間違いない。レオルドとしても嬉しい反面、どこか怪しい気持ちもある。


「とりあえず、中に入って仕事を覚えてもらう。まあ、そんなに難しい事はないと思うが、よろしく頼む」


「畏まりました、レオルド様」


 不安ではあるが、シェリアの抜けた穴を埋めてもらわなければならない。なので、レオルドはイザベルを屋敷へと連れて行く。


(さて、レオルド様がどういう風に変わったのか。どのようにゼアトを治めるのか、見定めなければなりませんね。姫様の為にも)


 当然、イザベルはただの使用人ではない。シルヴィアが送り込んだ諜報員だ。

 レオルドは毒なのか薬なのかは、まだ分からないが厄介な人物を抱える事になる。


(はあ~。あの王女は何を考えてるんだろうな~)


 そんなことは露知らず。レオルドは呑気に王女の事だけを警戒していた。

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― 新着の感想 ―
[一言] シルヴィア王女のレオルドに対する感情って珍しい反応見せた実験動物に対するそれだよね、恋愛感情には発展しなさそう
[一言] 寝たら解除されてしまうなら王女様には昼夜逆転の生活をして貰った方が安全を確保出来ますよね。夜に紛れて襲撃されるより真昼に来るなら誰でも目視出来るし
[一言] 怯える男は可愛くない、哀れだ。
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