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エロゲ転生 運命に抗う金豚貴族の奮闘記  作者: 名無しの権兵衛


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 闘志に火が着いたレオルドがベイナードへと踏み込む。


「今度は剣か! いいぞ、俺を楽しませろ!」


 ベイナードは間合いへと踏み込んできたレオルドに対して、獰猛な笑みを浮かべる。レオルドは、歯を剥き出しにして笑っているベイナードへ斬りかかる。


 両者の剣が交わり、カンッと渇いた音が鳴り響く。それは途切れることなく鳴り続ける。次第に響く音の間隔が短くなっていき、両者の剣速が増しているのが分かる。


「はははははは! いい太刀筋だ! 誰に教わった!」


 余裕があるベイナードは高らかに笑い声を上げながらレオルドへ問いかける。しかし、レオルドの方に答える余裕はない。一瞬でも気を抜けばベイナードに斬られてしまうから。


 カカカッと木剣がぶつかり合う。レオルドはバルバロトに教えて貰った剣術で必死にベイナードに喰らいつくが、ベイナードはまだまだ余裕があるのか楽しげに笑っている。


 その笑みを見たレオルドは悔しそうに歯噛みするが、今の状況が自分の限界なのだと思い知らされる。

 ゆえにレオルドは剣を振るいながら魔法を行使する。無詠唱で繰り出すのは土魔法で、ギルバート、バルバロトに何度も試した魔法。


「ぬっ!?」


 ベイナードは突如として現れた落とし穴に嵌り、体勢を崩す。レオルドは見事に落とし穴が決まった事に喜びつつ、体勢が崩れたベイナードへと猛攻を仕掛ける。


「中々に面白い作戦だ! だが、俺とお前の間には決して覆せない差がある!」


 体勢が崩れたままのベイナードへ振り下ろした木剣は弾き返され、反対にレオルドの腹にはベイナードの木剣が突き刺さる。


「ごっ……がっ……!?」


 突き刺された腹を抑えながら後方へと下がるレオルドは嗚咽を吐き、苦しそうにしながらベイナードを睨んでいる。


「先程の小細工は良かったぞ。魔法使いは派手な魔法ばかりを好んでいるが、お前のは面白い。いや、実戦的で素晴らしい!」


 まともに呼吸が出来ずに苦しんでいるレオルドの気持ちなど知らずにベイナードはレオルドを褒め称える。

 褒められるのは嬉しいのだが、それは今じゃないだろうと、レオルドはベイナードを恨めしそうに睨み付ける。


「ははっ! そう怖い顔をするでない。俺は純粋にお前の戦い方を評しているだけなのだから」


 やっと呼吸をまともに出来るようになったレオルドは、木剣を構え直してベイナードを見据える。ベイナードはレオルドの意思が折れていないことを知り、ますます爛々とした笑みを浮かべる。


「うむうむ。男児たるもの、そうでなくてはな!」


 嬉しそうに木剣を構えるベイナードへレオルドは近づき、剣を振るう。しかし、あっさりと受け止められてしまう。

 だが、そんな事は最初から分かっている。力も技量も経験も、何もかもが上なのだから。

 だからレオルドは、今持てる力を全部出し切り、それを限界まで振り絞らなければいけない。だって、そうでもしないと一撃入れることなんて到底出来やしないのだから。


「あああああああああ!!!」


「力任せは良くないぞ」


 狂ったように叫ぶレオルドは力任せに剣を振るうがベイナードには通用しない。

 分かりきっている事だが、レオルドの剣術なぞベイナードと比べるまでもない。


 だからこそ、レオルドは手段を選ばなかった。


 自滅覚悟の魔法を発動する為にレオルドは詠唱を紡ぐ。


「空を引き裂く雷鳴、天を焦がす黒雲こくうん、我が呼び掛けに応え給え。

 穿て一条の光よ、轟けいかづち!」


「なっ!? 詠唱!?」


「いけません、坊ちゃま!」


 既に詠唱は完了した。頭上に広がる空がレオルドの詠唱に応えるかのように晴天から曇天へと変わる。審判を務めるギルバートが止めに入ろうとするが、それよりも先にレオルドの口から魔法名が飛び出す。


「サンダーボルト!!!」


 雷光が落ちる。それはベイナードを貫かんとして。


 レオルドと剣を交じ合わせていたベイナードは、サンダーボルトから逃れる為に後方へと下がり、直撃を免れる。

 しかし、ベイナードの超人的速度があったからこそ回避は出来たが、レオルドは回避する事が出来なかった。


 サンダーボルトが落ちた場所はもくもくと土煙があがり、レオルドの安否はわからない。

 これは、流石に不味いと思ったのかベイナードはレオルドの安否を確かめようと駆け寄る。


 その次の瞬間ベイナードの足元が崩れる。


「もらったぁ!!!」


 完全に気を抜いていたベイナードへ土煙の中から飛び出したレオルドが剣を突き出していた。


「見事だ……!

 だが、まだ甘い!」


 突き出された剣をベイナードは強引に身体を捻って避ける。だが、まだベイナードの体勢は崩れたままだ。レオルドはその絶好の機会を逃すことなく追撃を仕掛ける。


「うおおおおおおお!」


 苛烈に攻め立ててベイナードへ剣を叩き付けるが、その悉くが捌かれる。全く通じない事にレオルドは別の手立てを考える。

 やはり、魔法しかないと剣に加えて魔法を使い、ベイナードを攻撃する。


「実に素晴らしい! だが、まだ未熟! お前は弱い! 世界を知れ、レオルド・ハーヴェスト!」


 崩れた体勢からベイナードはレオルドの木剣を弾き飛ばした。武器を失ったレオルドにベイナードが迫る。レオルドは迫り来るベイナードへ向けてアクアスピアを撃つが、全て避けられる。


(まだだ……!

 まだ終われない!

 終わる訳にはいかない!

 一撃、たった一撃だ。必ず決める!)

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