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エロゲ転生 運命に抗う金豚貴族の奮闘記  作者: 名無しの権兵衛


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 ギルバートの何気無いぼやきは、レオルドや近くにいた騎士達にとっては驚天動地の言葉だった。


(いやいや、年取ったとか言ってるけどバジリスクを飛び蹴りで吹き飛ばすような人間の言う台詞じゃねえだろ!)


 しかし、彼のおかげで助かったのも事実だ。だから、レオルドは複雑な気持ちになりながらもきちんと感謝の言葉を述べる。


「助かった、ギル。ありがとう」


「いえ、大したことではありません。それよりも、まだ敵は生きています」


「ああ、分かっている。ギル、勝てそうか?」


「目を潰せばというところでしょうか」


「やはり、石化の魔眼が厄介か……」


「ええ。目が合えば問答無用で石にされてしまいますから、まずは目を潰さなければなりません。

 しかし、目を合わせる危険がありますので難しいかと」


「……俺が魔法でなんとかしよう。その後は頼めるか?」


「いつもならば反対していたでしょうが、今は坊ちゃまが頼りです」


「いつも心配かけてばかりだな」


「そう思っているなら、この老骨を安心させてください」


「最大限の努力はしてみせよう!

 行くぞ、ギル!!!」


「はい、坊ちゃま!」


 レオルドが駆け出し、ギルバートが並走する。二人が並んで走り、バジリスクへと対峙する。

 バジリスクはギルバートに蹴られた事に怒りを覚えて、怒号のような鳴き声を上げる。


「キシャアアアアアアアアアア!!!」


 バジリスクはギルバートへと標的を定めて、巨体を唸らせながら突撃する。大きな口を広げて、飲み込まんとするバジリスクにギルバートは飛び込み、バジリスクの鼻を蹴って飛び上がると急転直下のかかと落としを叩き込む。


 くの字に曲がるバジリスクの身体。堪らずバジリスクが苦悶の咆哮を上げる。

 ギルバートは大道芸のように宙返りでバジリスクから離れると、着地した瞬間に爆発的な加速で地面を踏み砕き、痛みに苦しんでいるバジリスクに拳を放つ。


「ふんっ!」


 大地を踏み砕く、尋常ならざる踏み込みで打ち放つ拳は最早破壊兵器だ。ギルバートの拳を受けたバジリスクの身体は凹んで、バジリスクは堪らず吐血した。


 のたうち回っているバジリスクへギルバートはさらなる追撃を行う。連撃を叩き込み、バジリスクを追い詰めるギルバート。

 レオルドはその様子を格ゲーのコンボでも見ているかのような気分だった。


「惚けてる場合じゃないな。ギルが稼いだ時間は無駄には出来ん」


 しかし、バジリスクは絶命にまでは至らない。ギルバートが怒涛の連撃を叩き込んだにも関わらず、バジリスクは死ななかった。


「ふむ……やはり、タフですな」


 対してギルバートも一切を焦ることなく、バジリスクの強靭な生命力に感心していた。そして、驚くべきはギルバートがあれだけの激しい動きを見せていたにも関わらず汗を全くかいていない事だ。

 流石は伝説の暗殺者として恐れられた男である。


「キシャアアアッ!」


「むっ!? 毒か!」


 完全に怒っていたバジリスクは口から緑色の液体をギルバート目掛けて吐いた。ギルバートは瞬時に、その液体が毒だと判断して避ける。

 毒がギルバートがいた場所に掛かると、草木は腐食して煙を立たせる。


「当たれば即死は免れないか……」


 冷静なギルバートに対してレオルドは目を見開いていた。何故なら、レオルドが持つゲームの知識ではバジリスクは毒を持っていても吐くことはなかったからだ。

 新たな行動パターンにレオルドは驚愕していたが、バジリスクはギルバートに首ったけである。レオルドが狙われることはない。


 バジリスクは毒を連射してギルバートを仕留めようと必死になっているが、ギルバートは軽やかな動きで避けていく。


 ここでレオルドはギルバートなら単独で倒せるのではという邪な思いが浮かんで来る。目を潰さずとも、ギルバートは支障をきたすこともなく戦えているのだから、レオルドが手を貸す必要は確かにない。


(俺、必要なのかな?)


 余裕そうなギルバートにレオルドは自分は要らない子なのでは、とネガティブな思考になっていた。


「坊っちゃま!」


 だが、ギルバートから呼ぶ声にレオルドは正気に戻る。ギルバートは確かに強いが、ギルバートが攻撃していた箇所は頭から離れた場所ばかりであった。

 つまり、攻めあぐねているのだ。本来のギルバートなら頭に一発、渾身の一撃を叩き込めば終わらせる事が出来る。

 しかし、石化の魔眼がそれを許さない。目を瞑れば問題ないように思えるが、目を瞑った状態で仕留めるのは至難の業。


 ちなみに運命48には心眼を持っているキャラもいる。ただ、ギルバートは心眼を持っていないが気配で相手の場所は探せる程の実力はある。


(ああ、そうだ。ギルは俺を信じてくれてるんだ。それに応えなきゃいけないよな)


 レオルドは魔法を発動させる。それは最も鍛錬を積んだ魔法、アクアスピア。水で形成された針は二本、レオルドの眼前に浮かび上がる。


「その目、貰うぞ!!!」


 レオルドはアクアスピアを撃った。二本の針は宙を自在に舞い、バジリスクの目へと迫る。バジリスクはギルバートに夢中で気が付いていない。

 バジリスクがギルバートを飲み込もうと巨体を持ち上げた時、バジリスクの瞳に水の針が映った。

 これはなんなのだ、とバジリスクが思った時には既に遅かった。レオルドが撃ったアクアスピアは見事にバジリスクの両目を突き刺して潰す事に成功する。


「ギシャアアアッ!?」


 両目を潰されたバジリスクは頭を振り回して、痛みに悶えている。これで石化する恐れが無くなった。最早、バジリスクは単なる大きな蛇に過ぎない。


 だから、レオルドは油断していた。ゲームの知識が邪魔をしていたのか、蛇はピット器官という熱を感知する器官を持つことを。

 バジリスクはピット器官で感知した熱を辿った。その先にいる熱源は、完全に油断していたレオルドだ。


 恐ろしい速さで迫るバジリスクにレオルドは動けずにいた。

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