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深夜、目が覚めてしまったレオルドはベッドから起き上がる。時間は明け方に近いがまだ日が昇る気配はない。
しかし、目が覚めてしまったレオルドはもう一度寝ようとは思えなかった。いよいよ、今日は第四王女との縁談があるからだ。
外にでも走りに行こうかと考えたが、見つかると気まずいのでレオルドは自室で瞑想を行う事にした。一切の雑念を捨て去り、深く集中する。
体内にある魔力を操作して、魔力への理解を深めていく。瞑想を行う事で強くなるわけではないが、魔力の理解が深まり魔法の効率が良くなる。
しばらく、続けていたレオルドは閉じていた目に光を感じる。目を開けると、窓から朝日が差し込んでいた。どうやら、日が昇ったらしい。レオルドは長い時間瞑想を行っていたのだと気が付いた。
「ふう……さて、少し筋トレしてから汗を流すか」
腕立て、スクワット、腹筋、背筋と筋トレを一通り終えてからレオルドは風呂場へと向かう。レオルドが風呂から上がると、いつの間にかイザベルが待機しておりタオルと着替えを受け取った。
「ご苦労」
「相変わらずお世話のしがいがありませんね」
「お前も一言多いな」
「お嫌ですか?」
「いいや。悪くはないさ」
着替え終わり、レオルドはイザベルと共に食堂へと向かう。そこには既にベルーガとオリビアがいた。残念なことに今日もレグルスとレイラはいなかったが。
「レオルド。分かってると思うが今日は第四王女殿下が来られる。失礼のないようにな」
「楽しみね~。レオルド」
「まあ、私なりに努力します」
心配なベルーガに上機嫌なオリビア。それぞれの反応を見せる二人にレオルドは笑いながら食事を進めていく。
朝食が終わり、レオルドは自室で魔法の勉強をする。得意な雷属性、利便性の高い土属性、最も使用している水属性と。ゲームでは無かった魔法をレオルドは習得していく。
やがて、運命の時は訪れる。レオルドの部屋がノックされた。どうやら、ついに第四王女が来たようだ。
覚悟を決めてレオルドは部屋を出る。
イザベルに連れられて、応接室へと向かうと、そこには国王と王妃、そしてシルヴィアがソファーに座っていた。その反対にはベルーガとオリビアが座っている。
レオルドは入室すると、まず国王と王妃とシルヴィアに頭を下げて挨拶をする。
「わざわざ足を運んで頂きありがとうございます。本日はよろしくお願い致します」
「ははっ。今日はプライベートな事だ。楽にしたまえ」
「では、お言葉に甘えて」
レオルドはオリビアの横へと座り、シルヴィアと対面する。シルヴィアと目が合うと微笑んで来たので答えるようにレオルドも笑う。
(いい性格してやがるぜ~!)
腹の中ではどす黒い事を考えてるに違いないとレオルドは確信する。
(うふふ。レオルド様。何やら自信満々ですが、私も負けませんわ)
お互い笑っていたが、バチバチと二人の間は火花が飛び散っていた。二人の両親はお互い笑い合ってるのを見て、満更でもないと勘違いしていた。
ついにレオルドとシルヴィアの人生を賭けた縁談が始まる。
「レオルド。ベルーガから聞いてると思うが、今日は君に縁談があって来たんだ。もう分かってると思うが相手は私の娘のシルヴィアだ」
「ふふ、よろしくお願いしますね、レオルド様」
微笑む姿はまさに天使といってもいい。それほどまでに可憐なのだ。誰がどう見たって同じような感想を述べるに違いない。
だが、レオルドは知っている。この笑顔は計算の元に作られていることを。知らなければ良かったと思うし、知っていて良かったとも思っている。
ちなみにシルヴィアの両親もシルヴィアの性格には困っていた。よもや、サディストな面があるとは思わなかっただろう。生まれた頃から知っているから余計にだ。
「ええ、こちらこそお願いします。シルヴィア殿下」
お返しとばかりにレオルドも輝かんばかりの笑顔で対応する。その笑顔に王妃は期待する。レオルドならばシルヴィアの相手が務まりそうだと。
しばらくは世間話が続き、国王夫妻とハーヴェスト夫妻が楽しく会話に花を咲かせていた。その隣ではレオルドとシルヴィアはニコニコと笑っている。
(昔話で盛り上がるのは分かるけど、そろそろ本題に入ってもいいと思うんだけどな)
(楽しいのだけれど、ついていけませんわね)
そろそろ飽きてきたとレオルドは小さく溜息を吐く。さっさと本題に入って、終わらせたいとレオルドは思っていた。
そして、同じようにシルヴィアも本題に入りたいと考えていた。ただ、レオルドとは真逆で婚姻を結ぶつもりであった。
「おっと、つい昔話に夢中になってしまったな」
国王がそう言って会話を終わらせる。レオルドとシルヴィアは待ちに待った本題へと入る事に喜んだ。
「さて、長くなってしまったが本題に入ろう。レオルド。お前には私の娘と婚姻を結んでもらいたい。
勿論、無理矢理というわけではない。お前の意思も尊重したいと思っている」
「……」
レオルドはしばらく考える素振りを見せて、国王に返答を聞かせる。
「お断りします」
場の空気が凍りつく。まさか、国王も断られるなど微塵にも思っていなかっただろう。国の最高権力者であり支配者だ。
いくら、レオルドの意思を尊重すると言っても、臣下であるレオルドが断れるはずがない。だと言うのにレオルドは断った。
これは問わねばなるまい。答えようによっては王族に恥をかかせたとしてレオルドを罰することも考えられる。
「レオルド。賢いお前なら分かっていると思うが、理由によっては私はお前を裁かねばならないぞ」
国王の迫力にレオルドは負けじと、断った理由を述べる事となる。
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