英雄譚は誰の為に 2
空を飛ぶといっても俺と烈火の英雄では飛び方が違う。
俺は空気や風を利用して浮遊し飛ぶのだが、烈火の英雄は炎の力でジェット機のような要領で飛んでいる。
なので真剣な速度勝負では勝ち目何て存在しない。
何より鎧が無くては飛ぶ事すらできない俺では空中戦では大きく不利であり、鎧を展開している分だけ体力の消費量が上がってしまう。
なので俺としては速めに決着をつけたいのだが、前述のとおり速さで勝てる気がしない。
空を飛んで近づこうと全速力で飛び続けているが、俺の視界に大通りの曲り角からヘリが一台、上空から更にもう一台やってくる。
軍用ヘリというのは両翼にマシンガンやミサイルポッドを装備していることが多く、実際目の前にある軍用ヘリは先端にマシンガン、翼にミサイルポッドを装備している。
行動だけを確認すると恐らくこいつは分派が用意した戦力だと思うべきなんだろう。
ヘリには飛空艇や戦闘機以上に弱点がきっちりしている。
プロペラの付け根を狙えば簡単に撃墜することが出来るので、俺は剣を水平に握り横なぎに二回振る。
「風竜の一撃! 攻撃の型! つがいの風!」
プロペラの付け根から上が吹っ飛んでいき、軍用ヘリは黒い煙を上げながら海へと落ちていくのを見ないようにしているが、そんなことをしている間に烈火の英雄は国会ビルへの道をまっすぐ進んでいる。
正直追いつける気がしない。
俺は曲がり角を曲がり、そのまま道をショートカットする為あえて薄暗い道を選んでいく。
そのまま影の中へと入っていき素早く距離を埋めていく。
おおよその場所までは分かるので国会ビル前のメインストリートへの道へと進み、烈火の英雄が近づいていく音が聞こえてくるので影から姿を現しそのままドロップキックをお見舞いする。
「しつこい! 蒼炎戟!」
「風竜の一撃! 攻撃の型! 風卸!」
ドロップキックを辞めてそのまま縦に一撃剣を思いっ切り振り下ろし、俺の剣と烈火の英雄の剣がぶつかり合う音が周囲に響き、連続で叩き込まれようとする烈火の英雄の二本の剣が襲い掛かってくる。
俺は丁寧に攻撃を受け止めながらビルを背にしてしまう。
斜めの攻撃を下に移動することで回避し、ビルが大きく斜めに切れていくのを俺は焦りながら見ていた。
烈火の英雄の一撃がやばい事ぐらいはなんとなく理解していたつもりだし、でもまさかここまで強いとは思わなかった。
『ソラ。剣に乗せるモノは単純な力だけではない。自分の積み重ねていた経験と歴史だ。特に強い相手というのはそういう想いが非常に強いという事だけは思っておけ』
ガーランドの言っていた意味が今ならよく分かるな、烈火の英雄が積み上げてきた歴史や思いがこの剣に乗せられている。
でも、俺だって積み重ねた着たモノがある。
いろんな思いだって剣に乗せられるはずなんだ。
俺の緑星剣と烈火の英雄の剣が空中でぶつかり合う音が響く。
「何故そんなに邪魔をする!? お前に何の関係があるんだ!?」
「アンタこそどうしてそこまでしてこの地を恨む? 国が間違いを犯す事なんてよくある事だ! 間違いのない国何て存在しない!」
俺はよく知っている。
間違いを犯す国を、その結果がどれだけ波乱に満ちているのかも。
「お前が何を知っているというんだ? お前が何を知った所でお前は………他人だ!!」
俺の蹴っ飛ばしてそれでも国会ビルに向かうあの男の背中を追いかけていく、俺は烈火の英雄の背中目掛けて斬撃を飛ばす。
烈火の英雄はその攻撃を体を反転させながら受け止め、国会ビルに両足を付け始める。
俺は烈火の英雄のいる場所目掛けて剣を振りながら接近していき、相手は攻撃を回避する為国会ビルの上階へと移動して行く。
「どうしてこんなことを?」
俺の震える声にどんな思いで聞いているのかを俺には判断できないが、烈火の英雄は落ち着いた物腰で聞いていた。
「我々の悲願だと言っただろ?」
「この故郷を滅ぼすような行動が?」
「そうだ……我々はずっと耐え続けてきた。君こそどうして関係の無いこんな国の為に戦うんだ?」
こんな結果を招いていく事が悲願、故郷を滅ぼしてまで手に入る事が……俺には理解できない。
「………英雄だから。俺は星屑の英雄だからな。俺は俺の英雄譚があるんだよ。目の前で苦しんでいる人がいる、この国の存続を願っている人がいるんだ!だから戦うんだよ」
「そうか………ならここで君の英雄譚は終るんだ」
俺は小声で「終わるのはあんたの英雄譚だよ」と呟きながら俺達は国会ビルの壁を蹴っていき、一気に近づいていくが烈火の英雄はあえて真正面から受け止めたりせず、俺の攻撃を回避する。
そのまま俺の背中目掛けて炎の斬撃を繰り出すが、俺は緑星剣を水平に斬撃目掛けて斬りつけて爆炎に変える。
爆炎が俺の視界を真っ赤に染め、その真っ赤な爆炎の中から烈火の英雄が突っ込んでくるのだが、俺は烈火の英雄目掛けて剣を思いっ切り振り下ろし、至近距離で再びつば競り合いが始まる。
「あんたは知っているのか……フォードが人間じゃないと?」
「……!? ふざけるな! あいつは人間だ! この故郷で育った人間だ! 俺達はよく知っている!」
「一年前。ドラファルト島事件の前後で入れ替わっているんだ。その証拠にフォードは一時期行方不明だったはずだ。自分の組織が大変な時期に行方不明というのはおかしいだろ!」
烈火の英雄の目の焦点が泳いでいるのが見えた。
精神的には動揺しているのが分かる。
「嘘だ………そんなこと無い」
「フォードは本流のトップと長年付き合いがあった。これは俺の予想だが付き合っていたはずだ。その相手が……彼女がフォード異変にこの一年気が付いていたんだぞ!」
彼女の話がどうしてもおかしい点がいくつかあり、彼女は情報を国の情報から調べたといったがこれは嘘だ。
彼女はこれらの裏事情をフォードと共に調べたんだろう。
「彼女がそこまで知っていたなら………何故俺達の行動についてきてくれない!?」
「間違っていると思うから、今のフォードがおかしいと思うからこそ手伝わないし……でもこの国を本気で変えたいと思っているからこそ何も出来ないんだよ!!」
俺は大きな叫び声をあげていた。
「アンタだって同じなんだよ! 間違っている事も、お前達がやっていることに真正面から賛同できないからこそ苦しんでいるんじゃないか!! あんたはそんな彼女の想いを知ってるのか? 彼女はフォードが人間じゃないと、すり替わっているかもと言った時……涙を流しそうになったんだぞ! 分かるのか!?」
分かるはずがない。
愛している人が既にこの世にいないんじゃないかと想いが………国を変えたいという願いの本性が分かるはずがない。
「国を変えたいと願う人たちがいる。その思いが何年かかってもいいからこの国が正しい国であってほしいと願う人がいるんだ!! 嘘が間違っているんじゃない! 正直でいることが正しいんじゃないんだ! 例え嘘をついたとしても……その嘘が人を想う嘘でなくてはいけないんだよ!! あんた達がしたいことはなんだ!?」
「お、俺は……」
「嘘を暴いてどうするんだ!? 正しい事を伝えてどうするんだ!? 真実を暴くことが正しい事じゃないんだ。真実を隠しても、嘘をついてでも人を想う事が大事なんじゃないのか? 間違いを飲み込み、嘘や真実を貫き通しながら国と人を守ってこそだろ!」
俺は剣を手放し烈火の英雄の胸倉を強くつかむ。
「人がいてこそ国! 国があってこそ人なんだ! どっちかだけを容認する人間にはなりたくない!! したくないんだよぉ!!」
動揺し続けていた烈火の英雄は俺の体を思いっ切り地面目掛けて投げつけ、自らは窓ガラスから侵入していった。
俺はうまく地面の着地しながらも俺は疲れから鎧を解除する。
「国と人を想ってこそだろ?」




