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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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嘘は誰の為に 7

 レクターとボウガンの戦いの火蓋が落とされたのは非常に遅かった。

 というより、ボウガンにはこの戦いに向けるコンディションは他の誰よりも低く、作戦の成功率よりも個人的な行動の方が強い。

 だから正直敵の思惑が完了しても別にいいという考えは、ボウガンにどれだけレクターのとの一騎打ちへと持ち込むかという事にだけ向けられた。

 第三島は寺院の周りが古い遺跡痕ばかりが残る場所になっており、ソラが訪れなかったが実は周囲は砂漠地帯が広がっているほどであるが、砂漠地帯というほど暑くもなくしいて言うなら足元がおぼつかない感じであった。


「これだと砂漠というより砂丘という方が正しいよね………」


 寺院は大きな砂の丘の上に作られており、十六の島の中で一番辿り着くのが難しい場所でもある。

 また一つ大きな砂丘を超えていき、その先にまた砂丘があるのかと思うと正直レクターは回れ右をして帰りたい気持ちで一杯になった。

 まあ、そんなことをすればこの青空から間違いなく機関銃やミサイルの嵐がやってきかねないので前に進むしかない。


 レクターと共に付いてきている本流のメンバーの中にも疲れが表情に出ている者がおり、休みながら前に進んでいる。

 このままいけば目の前の砂丘を超えた先にある古い遺跡痕で分派の部隊が待ち構えているだろうし、そこでボウガンとも一線交える事になる。

 そう予想しながらレクターはナックルなどの武装をきっちり装備し、『奥の手』を持ってきたポーチの中に隠していると確認する。


 砂丘を超える為に両足に力を込め、砂丘のてっぺんで身を低くし遺跡痕を確認する。

 風化した建物や道路の痕などが残っており、遺跡というより都市部の跡に見えてしまう。


「?気配を感じない?」


 そんなはずはないと思い双眼鏡でジッと探し出すのだが、それっぽい人物も見えてこない。

 というより人一人すら映らない。

 いっそ隠れているからなんだと思い、本流のメンバーにその場を任せてレクターは遺跡回りをグルっと右側に回り込んでいき、視点を変えながら遺跡を確認していくがその内窓の向こう側に血の跡のような物を見付けて駆け出していく。


 さすがに本流のメンバー驚きながら一緒に近づいていくが、遺跡の中では隠れていたのだろう分派のメンバーが殺されていた。

 本流のメンバーもあちらこちらで遺体を発見していく。


「分派のメンバーが皆殺しにあってる………なんで?」


 本流の前誰かがここを訪れて先に殺しているという事実に全員が恐怖し、その恐怖に答えるように声が遺跡の奥の広場にあるドーム状の建物から聞こえてきた。


「俺が殺した……邪魔されたくないからな」


 レクターはその声の主に心当たりがあったし、というよりは心当たりしかないような声。

 ドーム状の建物の中に入ると、何かを教える為に造られたように椅子や机が部屋の隅に積み重なっており、その一番奥に椅子と遺体を積み重ねた上に座り込むボウガン。


 その姿はいっそのこと『魔王』という言葉がふさわしいような佇まい。


「俺達の戦いに後ろの奴らは邪魔だな。さっさと行けよ……!俺はそっちの小僧とさえ戦えればそれでいいんだ」

「アンタにとって仲間じゃないの?」

「仲間じゃない。俺にとっては金で雇われた間側であり、仲間という意識は薄いな。というか俺の目的の邪魔しかしないしな。金さえもらえれば後は適当にするさ」


 ボウガンはあくまでも傭兵、その上仲間意識は薄い。

 自分個人的な目的さえ達成できれば後はどうでもいいという意識すら生まれている。

 だから簡単に彼らを裏切る事さえできる。


「行ってください。ここは俺が何とかします。こいつは俺と戦えればいいと思います」


 本流のメンバーがレクターにこの場を任せて走り出し、ドームの中にはレクターとボウガンだけが残っている。

 建物の端から端にかけて焼く百メートル、建物は円状に広がり椅子や机がまばらに広がっている。

 よく見るとチラホラと遺体が無造作に置かれており、ボウガンがどうやって殺したのかが気になるぐらいに真新しい血があちらこちらに付いている。


「戦う前に聞いていい?どうやって殺したの?」

「………今回は魔導シューターは使っていない。その代り………お前の武器と同じ武器を使わせてもらった」


 長袖の中に隠しているナックル、長ズボンの中に隠している鉄の板が垣間見える。

 勿論それだけではないだろうが、今回ボウガンはレクターに勝つ為に武器をそろえてきた。


 レクターとボウガンがお互いに武器を構えるのはほぼ同時、沈黙が場を満たし椅子の1つが崩れて地面に砂埃が立つと同時にお互いに地面を蹴った。



 ボウガンの右ストレートをレクターは左腕で受け止め、そのままボウガンの体勢を崩すために足払いを仕掛ける。

 ボウガンは右腕をすばやく引き、両足に力を込めて跳躍するとそのまま天井まで移動する。

 天井とボウガンの両足が完全に付着し、天井に張り付いたような状態になり、そのままボウガンは天井に両手を添えようとする。

 レクターは何か嫌な予感がして素早く跳躍、ボウガンが両手を地面に添える前に右蹴りをお見舞いするが、ボウガンはその攻撃を左腕で受け止め、レクターの顎目掛けて右腕を伸ばす。


 レクターは空中で体を半回転させ、自らも天井に張りついてボウガンの鳩尾目掛けて右拳を突き出す。

 ボウガンはその攻撃を一歩後ろに下がった状態で回避し、レクターの右拳の攻撃をよけながら左拳を伸ばす。


 そこから無音の戦いが少しだけ続くと先に限界を迎えたのはレクターだった。

 レクターが天井から離れた隙にボウガンは天井に両手を添えると、天井が形態を変化させて槍となって襲い掛かってくる。


 レクターが壁回りを走り回り、攻撃を一回一回体をすばやく移動しながら攻撃を回避していく。

 ボウガンが静かに舌打ちをした。


 決め手になる攻撃だと思ったし、この攻撃で分派の連中を仕留めることができたのに、レクターはこの攻撃をきちんと回避する。

 建物そのものを壊してもいいのだろうが、自分がまきこまれることを想定するとどうしてもそこまでできそうになかった。


 槍の攻撃が一旦止んだのを確認した後、レクターは一旦入り回る足を止めて右手を壁に添えるように優しく触れる。

 壁から人の腕のような物が伸びてきてボウガンの右足を完全にとらえそのまま地面に叩きつける。


 しかし、この攻撃をボウガンは待っていた。

 魔導機の力を使っている最中はレクターは魔導機をどこかに触れなくてはいけないはずだと読み、ボウガンは叩きつけられるさいに両手を床に付ける。

 壁からレクター目掛けて拳が襲い掛かってきて、レクターの体を思いっ切り反対側の壁に叩きつけた。


「ははぁ!楽しいな小僧!こんな心躍る戦いは久しぶりだぁ!」


 ボウガンは非常に楽しそうに高笑いを浮かべているが、高笑いほどじゃないにしてもレクターはそこそこの楽しさを抱いていた。

 ソラと戦っていた際にも感じる高揚感、ソラの時以上に感じる戦いに対するプレシャーはレクターに気持ちを引き締めさせる。


「やっぱり傭兵はこうでなくてはァ!!もっとだ!もっと戦え!!踊れ!!」

「行くよ………吸血鬼!!」


 ボウガンは両目を強く開き、その表情は驚きを隠せずにいた。


 ボウガンは………吸血鬼だった。


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