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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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嘘は誰の為に 3

 本来ならジュリと一緒に寺院に向かうはずのヴァルーチャ、ジュリの後方少し離れた所で距離を取りながら見守っていた。

 ヴァルーチャがジュリについて行くといったのは、戦いに介入するつもりが無かったためだ。

 ヴァルーチャは人間を信用していない。

 だからこの海洋同盟という国にも特に思い入れは存在しないし、ましてや助けてやりたいなんて微塵も思っていない。

 ならどうしてヴァルーチャがこの争いに加担する気になったのかというと、ヴァルーチャは人間を信頼することが馬鹿らしいという事を証明する為だった。


 しかし、ヴァルーチャ自身は知らないことで、聖竜のみが知っていることでもあるが、どんな結末を迎えてもこの世界にソラがいる限りヴァルーチャは必ず人間を信頼することにはなる。


 ジュリもまあヴァルーチャがこの争いに真っ当にかかわる気が無いのではとはずっとおもっていたが、それを口に出せばソラとシャドウバイヤは必ずヴァルーチャを外そうと試みる。

 それでは意味が無いと考えたうえでの黙認。

 結局で信頼を得る為には行動で証明していくしかないとジュリは知っている。


 人間のみならず知性のある生命体から信頼を得るためには、自分達が行動で証明するしかないというのはこの二つの異世界を見て学んだ。

 二つの異世界が話し合いで分かり合えるのならここまでこじれたことにはならなかったし、ましてや今なおこうして争う事にななっていない。


 嘘を真実に変えるためには行動で示し証明するしかないのだ。


 この世の中結局で『真直ぐさ』や『正しさ』なんていうものは行動で証明するしかないし、そういう言葉だけを吐いても相手に疑われてしまうだけだ。

 だからこそジュリはこの争いに自らの力で挑もうとしていた。



 メメにとってこの茂みの多い場所は最も力を最大限に発揮できる場所であり、彼女が過ごしてきた場所でもある。

 この第五島はメメ達装束宗が育った場所で、現在はその殆どが別の場所に拠点を映していた。

 同士討ちのような醜い争いがここ数年行われていたこの場所、木材で作られた和テイストの建物は全てが廃墟。

 その一つでメメはそっと写真盾を拾う。


 そこには幼い頃のメメと家族が写されており、幼いメメと少し背の高い少年の後ろに優しそうな母親と厳し表情の父親。

 母親と父親と最後に残した写真でもあった。


「メメ!頭領の言う事を一々聞く必要なんかない!ここはおかしいんだよ!他国を敵に回すような国のやり方に従わう必要もない」


 メメの兄は組織の中でも少数派である『脱国派』と呼ばれるメンバー、要するにこの国や装束宗のやり方に納得が出来ないメンバーである。

 しかし、メメは幼い頃より厳格な父に逆らう事が出来ず、頭領が信じる者として娘や息子に厳格に接した。

 父親の言葉を真っ当に信じたメメに対し、父親に反抗的に育った息子は十代になると父親に反抗するようになる。


「父さん!間違っているよ!この国はおかしいんだ!」

「お前はぁ!何度言わせれば分かるんだ!? 我々は国に従ってこそだ!!」


 そんな父親と兄の言い争いをまじかで見てきたメメ、そんな彼女には父親に逆らう事は怖い物だと信じるには十分だった。

 母親も父親の言う事には決して逆らわず、ある意味異端として扱われてきた兄は父親と母親が

亡くなるまでメメの前から姿を消した。


 頭領自ら育てらたメメはいつの日か組織に必要な存在となり、この任務を与えられるようになった。

 だからこそ兄の言葉をただの戯言だと信じ切るのだが、それでも兄が自分達の任務をもらしているという真実を頭領には告げなかった。


 メメが里をでてすぐ、里内部での大規模な反乱で移動したというのは直ぐに聞いたし、最近になってもう崩壊寸前になっているというのも知った。


 帰る場所なんて存在しない。

 この帰るべき家すらも反乱の余波で半壊してしまった。


 今更になってメメは兄の言葉が正しかったのではないかと考えるようになった。



 メメの兄であるサトは第一島に忍び込んでおり、大統領や首相陣が匿われている場所までの隠し通路をひたすら突き進んでいた。

 正直に言えばメメの事だって心配だし、一緒にいてあげたいとも願っていたが、それ以上に彼にはやらねばならないことが多すぎた。

 施設の中に忍び込もうとする同胞、その一人が日本の首相にクナイを投げようとしており、サトはそれを空中で弾き落とす。


「サト!? 何故邪魔をする?」


 サトに対して警戒心を丸出しにする同法に容赦なく剣を抜いて切り殺す。


「我々『脱国派』は日本への亡命を希望いたします!どうか………」


 サトは首相に対して頭を下げ、必死に願っていた。

 これが装束宗の未来の為になるのだと信じて。



 ジュリは寺院への参道を警戒しながら歩いていると、目の前にある分かれ道の1つに刃物で傷ついているが薄っすらとだが『装束宗』と書かれている。

 なんとなくだが、この奥にメメがいるような気がしてしまう。


「この先任せてもいいですか?多分ですがこっちに幹部がいると思います」

「我々も一緒に行きましょうか?」

「いいえ。皆さんはこの先にいる分派をお願いします。数が少ないとは言ってかなりの手練れだと聞いています」


 メメはあくまでも目的は鏡を破壊する事、それに集中しようと援護を断って装束宗の集落への道を進み始めた。



 不用心だとヴァルーチャは思いながらも姿を隠しながら森林地区を進んで行くジュリを後ろから追いかける。


(不用心ですね。わざわざ敵の手の中に突っ込んでいくとは)


 内心「これだから人間は」なんて思っては見たが、よく考えるとエアロードも同じ選択肢を取るだろうと思うと否定しずらいものを感じた。

 ジュリは周囲への警戒を高めながらも一歩一歩確かめながら前へと進んで行くが、ヴァルーチャからはっきり見えたが、五キロ先の木々からでもはっきり見えるほどメメが静かに忍び寄っている。


 メメはジュリの少し離れた所の大きな岩に爆弾を取り付け、ジュリが隣を歩いてきたところで爆発させる。

 ジュリの所にまで爆発が届くころにはジュリはとっさに身を低く回避し、何とかダメージを回避していた。


(やれやれ……無防備に突っ込んでいったと思ったら。無策なのではないでしょうね?)


 ジュリは魔導機を片手に急いで入力を急ぎ、周囲の地面を捲って盾にするのだがメメはその先を予測し壁の上の死角から襲い掛かってくる。


 ジュリのマウントを取ろうとするメメに対し、ジュリはそこから逃げようと壁を解除して風の結界を放つ。


「あなたの弱点、それは近距離に弱いという事です」


 メメはあの戦いからきっちり学んでおり、ジュリが近距離での戦闘手段を持っていないこという弱点は学んだ。

 だからこそメメは余計な装備は外し、あえて移動しやすい衣装で戦いに挑んでいた。

 ジュリは風の弾丸を作り出し、それをメメに向けて五発放つが、メメはその攻撃を距離を詰めながら回避していく。


「動きからして勝ち目があるとは思えませんね。勝負条件が向こうにある上に、弱点を容赦なく攻められている」


 ヴァルーチャは正直勝敗はついたのでは、という考えで見ていたのだがジュリはまだ諦めていなかった。

 魔導機を操作する手を辞め、ポケットの中に入れておいた閃光手榴弾をメメとジュリの間に転がす。


 眩い閃光にメメは目がくらみ、ジュリから来るであろう攻撃を回避しようと気の上に逃げていく。

 しかし、ジュリは攻撃する前にその場から足早に逃げていった。


 ジュリが半壊している木材の建物の中に入っていく姿を目撃したヴァルーチャ、そのまま大きく開いた屋根の穴から見下ろす。


「傷の手当てしないと……」


 ジュリはポケットの中から携帯治療用キットを取り出して擦り傷の手当てに入る。

 そんな時だった。

 ポケットの中に入れておいたソラに渡しそびれたお菓子が出てきてしまった。


 出てきたお菓子をポケットに戻そうと手を伸ばすと、そのジュリの手とお菓子の間にヴァルーチャが飛び降りた。


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