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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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前夜祭 3

 会議室での一件は最後の方に混沌を迎える事になった。

 というのも第二島から第六島までの幹部の相手しないと鏡の破壊は不可能に近い、俺が第一島に乗り込むことは既に決定されたので、問題の副リーダーの相手は父さんがしてくれるというのだが………他のメンバーの一部がえらい自己主張が強かった。


 レクターはボウガンと、ケビンさんはバウワーと、イリーナと奈美はジャンと戦いたいといい始めた。

 どうやら前の争いの際に色々とあったらしいのだが、俺は良く知らない。

 というより、揉めた理由は父さんが奈美の参戦にえらい反対した為だ。


 最終工程で竜達が手助けするという形になったのだが、それでも父さんは最後まで粘っていたし、奈美も決して食い下がらなかった。


 その間に俺はシャドウバイヤと他の竜達の分担を話し合った。

 心配なジュリと一緒に行ってくれる相手を探していたのだが、これについてはヴァルーチャがついて行ってくれるらしい。

 レクターとケビンさんに関しては「邪魔されたくない」という理由から竜の援護を却下。

 この辺りは本人達の意見を尊重することにした。


 で、問題は奈美と父さんの言い争いだがこれについてはもう二人の議論の結果に任せるしかない。

 エアロードとシャドウバイヤとシャインフレアは味方艦隊の援護に、本流の人々は鏡の破壊要因にまわってくれるという事だった。

 作戦実行している間に防衛軍や分派が妨害が予想されるため、島内では相当の被害が予測される。


 今回の作戦にアメリカ軍や日本軍(旧自衛隊)、ガイノス軍も参加してくれるらしく、その理由としてはそれぞれの国家元首が第一島に捕らわれているのが理由だった。


 明日の明朝結界が完成した段階で攻めるという手筈となり、その合図を俺達の戦艦が伝える手はずとなった。


 その日は戦艦前でちょっとした宴の席を設けようという話となり、表では夕焼けを前にして多くの人がバーベキューなどの準備をしている。

 俺はその姿を戦艦甲板デッキから見下ろしており、そんな俺の背中から一人の女性が近づいて来た。


「どうかしましたか?エルモードさん」

「いいえ……フォードの狙いは何なんでしょうか?私は彼と少しだけ話したことがあります。昔の彼はやり方こそ違いましたがこの国を想う気持ちは私達と同じでした。いつの間にか変わってしまったんでしょうか?」


 俺は彼女の嘘をなんとなくで知ってしまった。

 だからこそ、俺があの時言いにくかった理由をどうしても語らなくてはいけない。


「あなたを傷つける事になるかもしれない。もしかしたらあなたは今回の作戦を嫌がるかもしれない。それでも聞きますか?」


 エルモードさんは黙って頷くだけ。


「フォードの正体は―――――です。彼はもう………」


 エルモードさんは両目に涙を沢山浮かべ、口元を両手で覆いながら彼女は体を小刻みに震わせる。


「そ、そうですか…………」

「はい。これについてはシャドウバイヤと全く同じ意見なんです。おおよその検討もつけています。問題はこの証明なんです」

「……はい。こちらで調べてみます。その程度でしたら明日の作戦中にでも分かるでしょう」


 エルモードさんを酷使するのは少々気が引けるわけだが、しかし、この際手段にこだわりを見せている場合じゃない。


「それともう一つ頼みたいことがあるんです。これもできれば明日の作戦中までに調べて欲しい」

「何でしょうか?」

「ドラファルト島の墓を荒してほしい。もしかしたら遺体が存在しない墓があるかもしれないので」


 エルモードさんは涙を浮かべながらその場から立ち去っていった。



 エルモードは十年前の事を思い出した。

 彼女とフォードはかつて学生運動の最中に多くの学生が無くなるその瞬間を目撃している。


「エルモード。僕はこの国を変えたい。もっと、もっと自由で平和な国があるはずなんだ」


 フォードのまっすぐな瞳と、国を変えたいという熱意に彼女は惚れ込んでいった。

 国を想う気持ちは他所のすれ違いこそ見せたが、それでもそれは大きな溝にはならなかったが、それでもフォードはエルモードに頼み込もうとは思わなかった。


「エルモード。君は最後の希望なんだ。僕がやれた時は君がこの国を変えて欲しい。でも………僕がこの国を変えたその時は」


 エルモードは信じていた。

 フォードならこの国を変えられると、だからこそフォードが嬉しそうに連絡してきた最後の言葉を決して忘れていない。


「政府が交渉したいと、国会議員とこれから接触することになった。もしかしたらこれ以上誰も傷つかないで済むかもしれない」

「でも……罠かもしれないわ?念の為に誰かを連れていった方が良いかもしれない」

「駄目だ。烈火の英雄が鎮圧作戦に乗り出しているんだ。ここで分派を壊滅させるわけにはいかない」


 それがフォードとの最後の会話になった。

 そして、数週間前にフォードが生きているらしいという噂話を聞いたが、彼からのアプローチがあったわけじゃない。

 いや、何か嫌な予感が存在し連絡をしないでいた。


 エルモードは本流のメンバーに連絡を急いで取り、携帯を握りしめながら大粒の涙を流した。


「いつか………いつかこの国を変えたその時は僕と結婚して欲しい」


 そう告げた言葉をエルモードはよく覚えていた。


「……嘘つき。私もあなたも嘘つき」


 涙は壁を伝って染みを作り、彼女の心に消える事の無い傷を与えた。

 もう後悔しても何も帰ってこない。



 俺の予想が正しければきっとフォードはきっと………、いやこれ以上は考えても仕方のない事だ。証拠も無いし、仮説を証明することもできないんだから。

 下ではすっかり宴が広げらており、父さんがやけ酒を飲んでいる。


「父さんが負けたのか………」


 まあ、俺の喝が効いていた後の奈美だからなぁ………よっぽどのことが無いと譲らないだろう。

 その辺を話すと怒りの矛先が俺の方まで来るので黙っていることにした。


「甲板デッキと言っても結構狭いな………?あれってフックショットか?」


 下を覗き込むと甲板デッキの丁度真下にコンクリートや鉄を撃ち抜けそうな鋭い杭が飛び出している。


「あれを使えそうだな………」


 明日の作戦で使えるかもな。

 なんて考えているとその真下ではレクターがご飯を頬張っている。


「全く………あいつときたら」


 なんか嘘のようだ。

 明日の明朝にもこの国を変えるかもしれない一大事件が起こるなんて予想もできそうもない。


「このまま平和な時間が続けばいいのにと願ってしまうのは俺が愚かだからなのかな?」


 俺がボソッと呟く言葉が風に乗ってどこか消えていく。

 風が吹いたからなんだろうが、俺は真後ろに鎧が姿を現していることに気が付いた。


「堆虎………といいたけど。堆虎の姿を借りているのは誰ですか?」


 俺が振り返るその場所にいるのは星屑の鎧。


「……君達が太陽の英雄と呼んでいる者。でも、どうして気が付いた?」

「堆虎の性格が一致しない。それはやっぱり違和感だった。勿論本来の堆虎の性格だったのかもしれないが、誰かの影響を受けたんじゃないかって思うようになった」

「……彼女には事前に許可を貰った。今回の一件だけでいいからと」

「ならいいんだ。あなたは………女性ですよね」


 黙り込む太陽の英雄。


「男性なら同じ男性の隆介の姿を借りるだろうし、同じ女性だからこそあなたは姿を借りたという判断」

「そっか………多分私と堆虎という少女は何か繋がりがあるんだと思う」


 一筋の風が俺の背中から通り過ぎていった。

 太陽の英雄が語る勇者の物語。

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