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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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薬品管理センター攻防戦 6

 ケビンの鋭い一振りは辛うじてバウアーの動体視力でとらえることができた。

 いくら早い動きが出来ようと攻撃する本人が捉えることが出来なければ意味が無いし、ましてや自爆攻撃なんて出来るはずもない。

 ケビンは兵士であってテロリストではない、それ故にバウアーはケビンが自爆攻撃をしないと踏んでいた。

 しかし、視認できたからと言って逃げれるだけの時間もなく、右腕を盾代わりにする為振り上げる。

 ケビンの剣がバウアーの右腕に直撃するが、鈍い金属音が響き渡りバウアーの右腕の骨が折れる感触がお互いに伝わった。


 バウアーの右腕が折れる程度で済んだのはケビンの力不足、それと金属板を仕込んでいたためである。

 ここで負けを認めるほどバウアーも決して諦めがよろしくない、バウアーは本能のままにケビンの横っ腹に蹴り叩きつける。

 ケビンの口から吐き気が込み上げてくるのを必死で抑え、何とか耐えきるとケビンはバウアーの顔面目掛けてハンドガンの弾丸をありったけぶつける。


 バウアーは目の前からやってくる弾丸を驚異的な動体視力で完全に捉え、同時に回避するのではなく迫りくる弾丸を警棒で全弾叩き落し、そのまま警棒をケビンの脳天目掛けて振り下ろす。

 ケビンの視界に写る警棒の攻撃を回避するため体を捻り、痛みに耐えながら地面を蹴ってバウアーの周りを半回転する。

 そしてそのまま背中に剣を突き刺そうとする。

 バウアーもほとんど本能のままに体を前に突き出す事で攻撃を回避し、至近距離でお互いに睨み合う。


「いい加減大人しくしていたらどうだ?」


 バウアーからくる言葉をケビンは凛とした態度で返した。


「そちらこそ右腕が折れたのですから大人しくしていた方が良いですよ。手錠を両腕に付けるのなら治療を検討してもいいですよ」

「断るよ。君を殺してから仲間に頼み込む」


 バウアーはケビンの喉元にナイフを、ケビンはケビンの頸動脈に剣を触れるようにしている。

 お互いに睨み合う状況が続く中外から火炎瓶とスモッグ弾が二人に視界を塞いでいく。


「バウアー!撤退だ!作戦は成功した!」


 炎で包まれた雑居ビルでお互いに睨み合う事を止めない両者、しかし先に武器を引いたのはケビンだった。

 このまま雑居ビル内に火災が回れば脱出が困難になる上、このまま戦えば非力な過敏の方が不利という事ぐらいは分かっている。

 それこそケビンが死ぬ気になれば相打ちに持っていけるかもしれないが、そんな覚悟はまだケビンも無かった。


 しかし、ここで引くことを考えたいたのもバウアーも同じこと。

 今後の作戦でもバウアーは重要な役どころを与えられており、フォードからもいざとなったら大人しく引けと言われていた。


「ここまでのようだ。お互いに引く……これでいいな?」

「良いでしょう。こちらもこれ以上を命を懸けるつもりはありません」


 お互いにゆっくり体を離れていき、一定の距離が開くと天井が崩れてお互いの間に大きな大穴が開く。


「明日の明朝に第四島の寺院に来い。そこで決着をつけてやる。まさかお前もこんなに不完全燃焼で納得しているわけじゃないだろ?もちろん来なくてもいいんだぜ。どうせお前の大切な人を救いたいと思うならお前は必ず第四島に来るはずだ」

「その言葉を聞きたいですね。どういう意味ですか?」

「もう遅いという意味さ。今頃不可視の結界が第一島を包んでいるはずだし、お前達が侵入しようとすれば国防軍の方が動くだろう」


 ゆっくりと火炎の中に姿を消していくバウアーを追うことも無く、ケビンは急いで雑居ビルから出ていくと、海岸線沿いに走って近づいていき身を乗り出すとそこには姿形なく第一島が存在している。


「何が起きているのですか?」



 薬品管理センターの中に入るとソラが火災の奥へと足を進めていく姿を見つめたジュリ、ジュリは奈美とイリーナに外回りを任せたのち、中庭の方まで回り裏口への脱出を促していた。


「押さないでください。口元を抑えて逃げてください!裏口へ急いで!」


 研究員一人一人が急いで管理センターから逃げる為に必死になっており、ジュリは上の階から響き渡る衝撃音にとっさに上を向く。


「この奥に一人閉じ込められているんだ!頼むよ。魔導機があればドアを破壊できると思うんだ」


 一人の女性研究員がジュリに必死な形相で右手を掴み、ジュリも必死な彼女の言葉に頷いたまま目的の部屋の前で先ほどの衝撃でへしゃげてしまったドアを見付けた。


「大丈夫ですか?」

「た、たすけてくれ!!もう……火と煙がそこまで来ているんだ!」


 ジュリは魔導機を操作しドア一帯を『土』属性の術式で崩壊させる。

 ドアや瓦礫が粉々になって崩れていき、部屋の中から男性研究員が苦しそうにしながら姿を現し、片手に何かCDのようなカセットを持って現れた。


「何をしていたのよ!?心配したのよ!」

「済まない。この資料だけは持って逃げろって所長から頼まれていたんだよ。なんでも数年前からのある植物の育成データなんだけど………俺はこの資料知らなかったよ」

「何?私も知らないわね?こんな植物を育成していたっけ?」


 ジュリがそのCDの側面に書かれていた名前を見ると少しばかり驚いてしまった。


『エーファ草育成記録』


「エーファ草?呪術に使われている草?それの育成をこの場所で行っていたの?」


 研究員の二人は驚きあまりCDを落としそうになってしまう。


「やはりここにありましたか………やれやれ、各部屋を入念に調べながら燃やすという難しい作業をこなすしかありませんでしたよ」


 ジュリが声のする方向へと振り向く、するとそこには黒いスーツとネクタイ、片手にはクナイのような武器を持っている。


「メメさんでしたか?」

「ええそうよ。ああ、あの少年から聞いたのか……それともボウガンが移送中に喋ったのか?それよりこのCDをこちらによこしてくれませんか?」

「どうしてこれを欲しがっているんですか?」

「……それにはエーファ草の育成記録と、育成場所に関する詳細な記録が書かれている。それは反政府組織である『分派』からすれば少々困る事なんですよ」


 ジュリはその言葉を鵜呑みにするわけでもなかったが、このCDにエーファ草に関する記述が書かれていることは事実。


「あなた達も目的はエーファ草の育成場所はあなた達の本拠地が描かれているから?それが理由ではありませんか」


 メメは黙り込み、クナイを握る拳を少々強める。


「………ガイノス帝国の士官学生ですか。少々危険度を上げてかかった方が良いのかもしれませんね」

「すみません。そのCDを持って逃げてください。なるべく早く。彼女は私が押さえます」

「し、しかしお嬢さん!いくら士官学生とは言ってもあちらはテロリストだぞ?」

「大丈夫です。戦う術は身に着けています。さあ、早く」


 二人の研究員は急いで逃げ出していき、メメはクナイを研究員に向けて容赦なく投げ出す。

 ジュリはメメの投げたクナイを風の障壁で弾く。


「二人を追う為にはあなたから排除した方がよさそうですが………別の手も打っておきましょうか。ジャン……」

『何々?ちょっとこっちも今手が離せなくてさぁ……悪いね』

「はぁ……仕方ありません。誰でもいいからあの二人を追いなさい。最悪CDさえ手に入れば構いません」


 周囲に響き渡る様な声が施設内に響き渡り、同時に施設内から複数の動く音が聞えた。

 ジュリは追いかけようとするが、メメはそれを許さない。


「私に背を向けるという事は死を意味しますよ。あの少年は一度としても私に背を向けませんでした」

「ソラ君の事ですか?」

「ええ、知り合いで?」

「あなたがソラ君と戦ったのならむしろ私に逃げる理由はありません!」


 今ジュリとメメの戦いが始まろうとしていた。


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