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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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薬品管理センター攻防戦 5

 ケビンが放つ弾丸をバウアーは警棒で弾きながらドアを開けて廊下へと逃げていく。

 バウアーを追いかけて廊下へと通じるドアのすぐ近くで潜み、物音を聞き分ける為にそっとドアの向こう側に耳を当てる。

 しかし、ドアの向こう側から音はまるで聞えてこなかった。


 ケビンはここに来るまでの間バウアーの足音が聞えなかった事に違和感を感じていた。

 暗殺稼業を縄張りに知っているだけあり、本来見晴らしのいい場所で戦う事を想定していないバウアー、身を隠して戦う手段が本来の彼らしさ。

 ここでドアを開けて無防備に突っ込んでいけばその時点で殺されるだろう。


 銃殺。刺殺。絞殺。

 それ以外にも様々な方法が存在しているし、ケビンが考えるだけでもいくつも後方が上がって仕方がないが、ここでジッとしている事自体が危険。

 こうしている間もバウアーはケビンを殺すための手段を整えているだろう。


「こうなったらこれを使うしかありませんね」


 手榴弾をポーチから取り出し、ドアノブにくっ付けてからワイヤーで引っ張れば爆発させられるように整え、そのままわイヤーを伸ばしながら一定の距離を開けてからワイヤーを思いっ切り引っ張る。

 ドアごと大きな爆発が廊下まで響き渡り、大きな衝撃がケビンの元まで届き煙やほこりが舞い散る。

 ドア向こう側に人影もシルエットも見えてこない。


 ケビンはハンドガンを握りしめ、全身の神経を緊張させながらゆっくりと忍び足で一歩一歩歩き出す。

 廊下に出る前に手鏡で左右を確認しからそっと体を前に出す。

 緊張感が高かったことが幸いしたのかもしれない。

 上にいるという奇妙な感覚が遅い、その場から素早く跳躍し反対側のドアをこじ開けていた。


 先ほどまでケビンのいた所にはバウアーがナイフを突き刺しており、あと一秒でも遅れて行動していたらケビンは間違いなく殺されていただろう。


 バウアーは素早くその場から逃げ出す為廊下を走り出す。

 ケビンも呆けている隙は無く、廊下に素早く出ていきバウアーの背中目掛けてハンドガンで三発発砲するが、銃弾をバウアーは警棒で弾きながらナイフをケビン目掛けて投げつける。


 ケビンはナイフを剣で弾き落としながら最後にもう一発と言わんばかりにハンドガンを片手で発砲する。


 バウアーの肩をかすめて終わった弾丸、バウアーは投げ飛ばしたナイフをワイヤーで回収しながら部屋の1つへと侵入する。


「また部屋の中に隠れましたか」


 ケビンも素早く部屋の前までたどり着き、ゆっくりとドアを片手で開きながらハンドガンのマガジンを交換する。

 ドアの影から室内を覗き込むが、今度は隠れることは無くバウアーは反対側に佇んでいた。


 逃げる事を止めたのか、それとも別の策を思いついたのかはケビンの位置からでは把握が出来なかった。

 室内には何か隠しているようにも、仕掛けているようにも見えなかった。

 忍び足でゆっくりと室内に忍び込み、鋭い睨みをバウアーの方へと向けながらゆっくりと歩き出すが、二歩目を踏み出した瞬間足元が抜けてしまう。


 ケビンは落下前にワイヤーを天井に打ち付ける事で何とか重症化だけは回避し、そのまま着地するが、その上からバウアーは爆弾をケビン目掛けて落とす。

 ケビンは爆弾を回避する為に走って移動してそのまま爆風と共に廊下へと身を投げ出す。


 煙と背中に襲い来る痛みに耐えながらゆっくりと立ち上がる。


「奇妙ですね。いくら暗殺術に秀でているといってもこちらは女で向こうは男。単純な近接勝負を仕掛けても十分勝ち目があると思いましたが。それもしてこないとは」


 廊下の壁に片手を付きながら思案する。

 先ほどまでやり取りを思い出し、ふと疑問に思ってしまった事である。


「直接的な手段が苦手という訳でもないでしょう。それとも……この魔導機を警戒しているのでしょうか?」


 ギルフォード事烈火の英雄から既に情報は共有済みだという事はケビンにも理解できたし、それ故に魔導機を多用したくないというのがケビンの理由だった。

 しかし、もしバウアーが魔導機を警戒しているのならむしろ使った方が良いのかもしれない。


「しかし、魔導機を警戒している振りだとすると………いえ、そう考えると辻褄が合わない気がしますね。わざわざ手の内をここまで曝け出しておいてこのまま的に逃げられたら意味が無いでしょう」


 身体能力を使った暗殺方法、地形を利用した戦術など様々な戦い方を見せたバウアー。

 事前に下見をしたのだろうし、準備を整えたのだろうがこれを駆使しても手の内をさらす事は暗殺者からすれば問題行動。


「暗殺とは一撃で仕留め、敵に情報を与えないことです。なのにも関わらず彼は手の内を曝け出してでも暗殺に執着した」


 情報より暗殺にこだわっているようにも見えた。

 バウアーは暗殺にこだわっているように見えてしまい、ふと考え込むように口に右手を当てた。


「暗殺することに執着する理由ですか………想像もできませんね。暗殺何てしたこともありませんし」


 暗殺には不向きだといわれた理由、ケビンは兵士にはなれても、暗殺者にはなれない。

 しかし、その事を後悔しているわけじゃないし、むしろ自分が兵士に慣れる事に一定の喜びすらある。


 だからこそケビンには暗殺をする人間の意図がどうしても理解できず、スナイパーなど感性にも理解が出来ないものを感じた。

 実際訓練の時もスナイパーライフルの教習を受けたが教官からは「向いていない」と言われたぐらいだ。


 正々堂々と真面目にをモットーとするケビン、兵士としても少々頑固さが前面にあらわれている節があった。

 コソコソする人間が苦手であるが、だからと言って馬鹿正直に真正面から挑むことも又しない。


「ですが私も暗殺者と言われるようなレベルの人間に会ったことがありますが………」


『暗殺にこだわる事はしないな。だって出来ない場合だってあるし。暗殺っていうのは失敗出来ないし、失敗は死を意味する行為でもあるからさ。出来ないと判断したら逃げることも大事だぞ。自分の命あってこそのだからな』


「『あの人』はそう言っていましたし………私がおかしいのでしょうか?」


 暗殺にこだわる理由、それはまるで何か暗殺者に向いているとは思えなかった。

 そう考えた所でケビンはバウアーが暗殺にこだわる理由に心当たりを一つだけ付けていた。



 バウアーは落下したケビンを追う為下の階への階段を下りていく、廊下で待ち伏せは無いだろうと油断しているバウアーの視界にケビンは普通に現れた。

 反対側の壁に背中を預けて佇み、無表情をバウアーの方へと向けているケビン。


「あなたが暗殺にこだわる理由私にはどうしても理解できませんでした。私にとっての先輩だった人は『暗殺は方法の1つ』だと教わりました。『時に逃げることも方法』だと。暗殺者にとって失敗は死を意味します。なのにあなたは必要なまでに暗殺にこだわろうとしています」


 バウアーはナイフの1つでも投げて攻撃するべきかと悩んでいると、ケビンはバウアーが触れてほしくない言葉をあっさりと口にする。


「あなた………暗殺の実戦経験はあまり無いのではありませんか?要するに……あなたは素人」


 バウアーは怒りのあまりナイフを思いっ切りケビンに投げるが、ケビンはナイフを投げるバウアーの動作がスローモーションに見え、魔導機のスイッチをonにして音速のような速さでナイフを回避しながらバウアーの元まで駆け寄った。


 ハンドガンは使わない。


 剣を握りしめ容赦なく振り下ろした。


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