薬品管理センター攻防戦 3
ボウガンの魔導シューターがレクターの足元にある瓦礫の1つに真っ赤な模様を付着させ、レクターは素早く模様から逃げるため後方に跳躍する。
しかしそんなレクターにボウガンは自らの足元に黄色い模様を付着させる。
ブラフ。要するにワザと意味の無い模様を付着させ自分の技を使う準備を整える。
気が付いた時には遅い、あえてレクターはジッとボウガンの術式を見極めようと見つめ、ボウガンは左拳のナックルを黄色い術式に叩きつける。
同時にボウガンの足元から電流がまるで中国神話にあらわれる神龍のような姿を取り、神龍はものすごい勢いで体を丸めて回転し始める。
少しずつ発光レベルを上昇させていき、同時にボウガンは発光から身を守るようにサングラスを取り出して駆け出す。
レクターが術式の正体に気が付いたのは視界が封じられそうになる一秒前だった。
目を強く瞑り視界が封じられるのだけは堪えるが、発行から五秒後にレクターの腹部に激しい打撃とふたつの刺で刺されるような痛みが走った。
胃から昼食が込み上げてくる感触と腹に走る痛みにこらえながらターゲットの頭部に肘鉄をお見舞いする。
「やるじゃねぇかよ……がきぃ!」
ボウガンは後ろに跳躍するが、いまだに視界が元に戻らないレクターボウガンの足音だけで居場所を判断し足下に右拳を叩き込む。
術式の属性は『土』、形状は槍、数は二十をイメージし、ボウガンの方向目掛けて適当に展開させる。
アスファルトが土を混じり合いながら姿形を変えてボウガンを追いかけるように槍に変わっていく。
ボウガンは槍を破壊するべく術式の種類を変更する。
属性は『爆発』の模様を自分の足元に展開し、自分へのダメージを考慮せず展開させる事で槍での刺殺ダメージをなるべく減らそうと考えた。
大きな爆発が熱風と音量という形でレクターの体全身に教え、その結果レクターは残っている槍に『雷』属性を付与させる。
ボウガンは爆発の痛みから素早く起き上がり、レクターの方をしっかり見つめていると、五本程度の土属性の槍が電撃を放ち始める。
地面の中にある走っている電線を上に持ち上げ、槍一本一本を使った『雷』属性の術式を展開させ、雷がど真ん中で一つの球体に変貌する。
ボウガンは見るだけで嫌なイメージが脳裏を過り、ボウガンは刹那の時間で思考を砂台減まで巡らせ地面に黄色の模様を付着させ、その一秒後に左拳を叩き込む。
叩きつけた拳から流れる電流が地面の模様と混ざり合い、拳を地面から引き抜くと同時に雷で出来上がった剣が完成する。
「魔導構成術式《雷神剣》』
先に動いたのはボウガン、ボウガンは剣をまるで矢のような勢いで射出するが、レクターはようやく目を開け電流の球体目掛けて左手のシールドを投げつける。
電気で出来上がった球体に回転しているシールドが当たる、するとシールドは電球の中で見たことも無いような回転を見せ、同時にボウガンの剣が突き刺さろうとしていた。
「混じれ………そして―――――弾けろ!!雷壊』
雷神剣を飲み込み一つに混じった球体はシールドの回転の力が加わり、内部から外側目掛けて一気に弾ける。
(クソが……あのシールドは守ることが目的じゃなく術式に使うための技だったわけ……)
ボウガンの視界一杯に真っ白な光が迫りボウガンの体を完全に飲み込んでいく。
飲み込まれる瞬間ボウガンは自分の体に魔導構成術式の模様を叩き込んでいた。
レクターが自分の術式に襲われるという事態だけは防いだ訳だが、目の前に広がるスモッグに見える真っ白い何かはボウガンの姿を隠している。
シールドについているワイヤーを使って自分の手元まで引き戻すレクター、シールドは多少焦げが見えるがそれでもおおよそ無事。
剣である右拳で突っこむかどうかを考え込んでしまい、晴れていく視界の中ボウガンの立っている姿がシルエット越しにでもよく分かる。
あの一撃を前にしても生き残っているボウガンはある意味しぶといといえるだろう。
とどめを刺すために地面を蹴ろうとするのだが、その足が実際に地面を蹴る事は無かった。
何故なら無傷で佇み怒りと殺意を混ぜ込んだ瞳がレクターに躊躇させたからだ。
実際突っ込んでいけば恐らく返り討ちあっていただろう。
「咄嗟に自分の体に『雷』属性の構成術式に吸収させた……?」
「へぇ……分かるんだな。ただのガキの癖に」
実際ボウガンの右脇腹に黄色の魔導構成術式が刻みつけられていて、その周りで雷がバチバチと音を鳴らしている。
「魔導構成術式の構築場所をナックルに変更」
場右岸がそう呟くと構成術式は左拳のナックルに移動していき、電流がナックル越しに殺意をレクターへと教えてくれる。
ボウガンは自分とレクターまでの間に『土』属性の構成術式の模様を付着させ、アスファルトが盛り上がっていきお互いの視界を封じ始め、そのまま透かさずボウガンは近くに備え付けられている水道をナックルで破壊する。
水道から噴水するような勢いの水に『水』属性の魔導構成術式を付着させる。
「魔導構成術式『霧舞』」
水が大量の霧がお互いの視界を封じていき、レクターは全身の神経を警戒体制へと移動させ、霧の中で動く存在に敏感になる。
ボウガンは近くのアスファルトの壁を巧みに使いながら地道に距離を詰め、レクターに近づくたびに新しい場所にアスファルトの壁を作っていく。
霧が発生して数分が経過するとレクターは視界を塞いでいるアスファルトの壁が増えているという事に気が付いた。
(間違いなくあのおっさんが増やして回ってる。このまま死角を増やしていって一気に攻めるつもり……? でもこっちから攻めるわけにもいかないし………)
勝手に動けばそれこそボウガンの思惑通りに事が動くだろうこと位は把握できた。
しかしこのままというのもドンドン不利な状況へと向かって行くだけ、ここで何かしらの手を打っておかなければ間違いなくやられてしまう。
車道に使われているアスファルトをじっと見つめていると、アスファルトに混じって何か輝く板のような物が見えた。
(あれは……鉄の板? でも何………ああ車の側面か。待てよ………これを使えば)
レクターは車体に使われていた側面を拾い右手の剣で擦って火花を散らしてみる。
この霧の中ではこの程度の火花ではあまり意味をなさないと思考し、しかしこの水にかかってまるで鏡のように光を反射する鉄の板をじっと見つめる。
あっという間にレクターの周りにアスファルトの壁が覆い、攻撃を行う準備をボウガンは整えていた。
ボウガンは完全にレクターの後ろを取り、左拳のナックルに集まった電流を周囲の霧と共に見えないようにしながら攻撃を浴びせる瞬間まで隠す。
視界に捉える瞬間までギリギリまで引き付け、剣に水滴がついているのか微かに反射したその場所を見逃さなかった。
ボウガンはものすごい速度で近づいていき左拳を叩き込む。
しかし、堅い何かに当たる。
(シールドだな? 死ねよ!)
ナックルに集めた電流をシールド越しにレクターに叩きつける。
電流が火花に変わって叩きつけられ、ボウガンの中に勝ったという感触が生まれ霧を解除する。
少しずつ視界が広がっていき目の前の鉄の板が見えた。
「鉄の板!? 車の車体だと!?」
「ガイノス流剣術! 裏切り!」
ボウガンは声の元である真後ろを向いた瞬間、そこには間違いなくレクターがいた。




