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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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海洋同盟へ… 7

 ギルは後ろから斬りかかろうとする緑星剣の一撃を左手の剣で受け止めながら右手の剣で攻撃を仕掛ける。

 星屑の鎧はその攻撃を回避しようと後ろに跳躍するが、剣圧だけで身を後ろに吹き飛ばされてしまう。


「やはり中身が無い。だから踏ん張れない」


 地面に剣を突き刺すと同時にギルの周囲に剣先がまるで生きている植物かのように襲い掛かるのだが、その攻撃をギルは灼熱の炎の一撃で全て吹き飛ばす。


「スカスカの攻撃だから簡単に消えるし俺に届かない」


 素早く走り出し回り込むようにギルの側面を抑えようとするが、そんな攻撃手段なんてギルには通用しない。

 回り込む間もギルの視線だけはきっちり星屑の鎧を捕らえ続け、常に視界に入れようとしている。

 全身の神経を研ぎ澄ませているギルの現状では勝ち目すらない。

 斬りかかろうと剣を上にあげるのだが、ギルはその攻撃をアッサリ受け止めたうえで星屑の鎧の首元をしっかりつかむ。


「ここにいる人間を守りたかったのか?知らない人間なんて無視すればいい。やはりあの少年の関係者と言った所か?」


 剣をあとは突き刺すだけというタイミングでソラの鋭い一撃が二つの間を通り過ぎた。

 星屑の鎧を着たソラが間に割って入る姿をじっと見つめるギル、しかし二人が戦火を開くことは無かった。

 大きな衝撃と爆発音はボウガンの救出に成功したという証だ。


「撤退する!これ以上仕掛けるつもりも無い」

「相してくれると助かる」


 ソラの目の前で飛空艇に乗り込んで逃げ去っていく姿をソラは複雑な表情で見つめ、素早く後ろを振り返り勝手に動いている鎧の方へと身体ごと向ける。

 鎧は一人でソラの中へと帰っていく。



 目を覚ましてから俺が直ぐにとった行動は取り敢えず顔を洗ってから俺の隣でジッとしている星屑の鎧に対応する事だった。


「で?いつ消えるわけ?」

「確認したいことが出来たらすぐに」

「だったら早くしてくれないか?お前を連れたまま行動するわけにはいかないんだが?」

「だったら早めに。その右腕異変は無いか?何か痛みがあるとか、時折うずくとか?」

「お前達が出現するようになったという異変以外は特にないな」


 俺がこの太陽の鏡の欠片を手に入れて一番困ったことはお前達が現れて会話をするようになったことだ。


「ならいいんだ。俺達もいきなり意識をしっかり持てるようになって困惑している。その原因は間違いなくこの太陽の鏡の効果だ」

「俺は何も知らない。というかそれを知りたいというのがジュリの目的だと思うんだ。あいつはこういう事をしっかり把握しておきたいんだろ」


 だからこの海洋同盟へ行きたいと言い出したのだろう。

 足手まといになりたくないから魔導機の術式を一新させ、戦う手段を増やしてでも俺達についてくることを選んだ。


「この太陽の鏡はまだまだ本来の力を発揮できていない。気を付けておいた方が良い。堆虎は昨夜の一件を反省しているようだし、多分勝手に動くことは無いだろう」

「ならいいんだけど。全く、俺の寝ている間に勝手に動き出しその上戦ったなんて」


 ブツクサと文句を言うのだが、隆介は用事は済んだと言わんばかりに俺の中へと戻っていく。

 取り敢えず問題が解決したので俺は洗面所から出て、直ぐにガイノス帝国立士官学校の藍色のブレザーに身を通す。

 俺はこの後首相との面会の約束をしているので私服で動き回るわけにもいかない。

 最後のブレザーの上着の裾に腕を通すのだが、夏のど真ん中に冬服を着なければいけないという拷問を受ける。


 ああ………脱ぎたいなぁ。

 ハンカチを多めにポケットの中に入れておこう。

 いっそのこと服の中に氷でも突っ込めば涼しくなるのでは、なんて思考が脳裏を過るが瞬間で思考が落ち着き止めた。


「せめて何か涼しくなる手段があればいいんだけど………」


 なんて言いながらドアを開けると真正面にドアをノックしようとしていたジュリと出くわした。

 真ん前にジュリの綺麗な顔が来るのだから心拍数が一気に上昇する。


「なにの手段があればいいの?」

「え?ああ、冬服着ていかなきゃいけないだろ?せめて涼しい手段があればいいなって」

「そうだね………上着の内側に保冷剤を仕込むとか?」

「一過性のものだよなぁ……」


 まあ無いよりましか?

 どっこいどっこな気がするが、保冷材何て簡単に手に入る物じゃ無いしな……キッチンにでも行けばいいのかな?


「そうだ。さっき聞いたんだけど戦艦が引き返したらしいよ。昨日の夜中に反政府組織の襲撃があったみたいで」

「ああ知ってるよ。昨日の夜にそれで一回起きたから」

「そうなの?」


 隆介が起こしたといえば頭がおかしくなったといわれるかもしれない。


「まあ俺が戦艦に付いたころは敵は撤退していたけど。でも、やっぱりあの男逃げ出したんだな。まあ脱獄の達人って言われるぐらいだから襲撃があろうがなかろうが脱獄したと思うけど」

「それで戦艦は一旦近くの駐屯地に向かうって昨夜のうちに離れたの。それで………アベルさんが」

「父さんがどうかした?」

「さっきからガーランドさんの説教を受けているの」


 きっと昨夜は爆睡していただろうし、戦艦で必死に戦っている間に寝ていて、その上俺が戦場にあらわれたと知ればガーランドが怒っても仕方のない事だ。

 今頃自分の部屋で怒られていると知れば俺がどんな行動を起こすかと言えば、父さんの部屋ドアの隙間から中を覗き見る事であった。


 素早く父さんの部屋の前まで移動し、俺は部屋のドアをこっそり開けて中を覗き込む。

 中ではタブレットのような機器の前で綺麗な正座をし、タブレットの向こう側で激怒するガーランドに必死に「すみませんでした」と謝っている。

 笑い焦げそうになる気持ちを抑え、口を両手で添えながら俺は苦しそうにし、後ろではジュリが苦笑いを浮かべている。


「ガチ説教を受けてるし………まあ戦艦で必死に戦っているときに一人隣の飛空艇で爆睡していればな」

「そ、その辺にしない?」

「だな。バレる前に下に降りようか……とは言ったけど荷物は空港で受け取るし、朝食も取る予定も無いんだよぁ………」

「だったら到着まで少し甲板エリアまで行かない?甲板から海洋同盟が見えるらしいよ」


 海洋同盟が見える。

 その言葉自体に俺は特に浮ついた気持ちを持たず、しいて言うならこれから争いの舞台になるかもしれないという罪悪感があるのかもしれない。


 予言で既に告げられている俺と烈火の英雄がぶつかる地、それは自然と海洋同盟の地が争いの渦中にあるという事を意味している。

 俺が行けば争いが起きるという意味なら勿論回避するのだが、そういう意味なら聖竜や皇帝陛下は俺に直接告げるだろう。


 という事は甲板から見える十六の島とそれ以外の小島群の集まり、その内でも十六ノ島の中心には塔のような場所が見える。


「あそこが海洋同盟の第一島だよ」


 十六の大島はその全てが大きな橋で通っており、綺麗で美しい町並みとモノレールがバランスが取れている。

 しかし、この地が猛火に燃えていく姿を想像しただけで心が痛む。


「あの大きなビルは?」

「あそこが国会ビルだよ。今からソラ君はあそこに行くんだよ」


 なんて言いながら俺達の目の前にある第一島の海洋同盟国際空港という空港が近づいていった。


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