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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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海洋同盟へ… 5

 奈美の部屋に入って奈美にしこたま説教をし、同時に魔導機のルールを簡単に説明するのに一時間を要し、やっとのことでひと段落をしてから俺は奈美の部屋の椅子に腰を落とす。

 目の前のパソコンのキーボードで素早く構築済みの術式を変更していく。


「全く。ジュリから話を聞いていた良かった。これを使用後にしていたんじゃ遅いぞ。危険な術式ばかり組みやがって」

「ごめんなさい」


 奈美が項垂れながら謝罪しているので間違いなく反省している。

 だからこれ以上追及してするのをやめて置き、取り敢えず適当に術式を構築していたのを一旦全削除、改めて奈美にも使えそうな簡単な術式を構築しておく。


「『風』系譜で使えそうな奴を二個入れておいた。いいか魔導機の扱い方を学んでから構築式の作り方を知るんだ。手順が逆だからな」

「はい………お兄ちゃんが教えてくれるんだよね」


 上目遣いでまるで捨てられそうな子犬のような目で見てくる奈美、俺はそんな奈美にバッサリと「今度な」と告げる。

 両ホッペを膨らませる姿は確かに可愛いと思うのだが、妹に対して可愛いと思う事はあってもそれに対して心情が動いたりはしない。


「明日早いんだから旅行後にしろって。今直ぐやるべきことでもないだろ?」

「私だって戦えるようになりたいもん。いいでしょ!? お兄ちゃん!」


 俺の腰辺りを強くつかんで左右に振り、可愛さアピールを強調してくる。


「知っていたかそういうアピールは兄妹間でやると苛立ちの原因なんだぞ」


 全く可愛いと思わないのが兄妹の不思議な所で、むしろ鬱陶しさすら感じてしまうのが兄妹の悲しい性だろう。

 しかし、むしろその言葉によって奈美の入らなくていいスイッチをonに変えてしまったらしく、先ほどから鬱陶しいほどの可愛いでしょアピールをしてくる。

 むしろ最初の目的を見失っているところはいかにも奈美らしいといえるだろう。


「後で私が教えてあげようか?後でいいならね」

「ほんと!? 冷血お兄ちゃんとは大違いだよ!」

「え?消してほしい?そう言ってくれればいいのに」

「ごめんなさい!ごめんなさい!消さないでください!」


 俺が本気で削除するのではないのかと心配した様で、腹回りに付きまといながら必死に懇願する姿を見て俺は内心すっきりする感情を得た。


「奈美。一言言っておくが、魔導機っていうのはいわゆる兵器だ。扱い方を間違えたら大怪我じゃすまない。だから本来学生に所有義務があるのは『ガイノス帝国立士官学校』のみとされている」


 ガイノス帝国立士官学校。

 俺やジュリやレクターが所属している防衛相管轄下の学校、名前の通りガイノス軍の士官への道を志す者を集める学校であるが、魔導機という兵器の勉学が出来るという特殊な環境下もあり軍方面以外にも進路が多数ある。

 就職の有利さや多数用意された進路もあり毎年中等部への入学試験を受ける者は多く、倍率は年々多くなっているとさえゆわれている。


「勿論それ以外の学生や一般人にも所有が認められていないわけじゃない。しかし、使用には士官学校の学生以上に制限が掛かる。何故ならこの世界で魔導機の授業を積極的に取り入れているの数少ない学校だからだ。それ故に魔導機の使用には周囲が思い描く以上に責任が伴う」


 生半可な責任や考え方で魔導機を扱えば間違いなく大怪我をするし、下手をすれば多くの人を巻き込む。


「使うなとは言わない。でも、使う時は責任が伴うという事を知っておいてくれ。だから、もし魔導機の術式を増やすときはせめて俺か父さんが同伴の上でやる事……いいな?」


 俺の真剣な面持ちで語り掛ける言葉に奈美も又真剣な頷きで返してくれる。


「お前はどうやら魔導機の術式開発で才能が有るらしい。さっきの術式の中には俺でも想像できない術式が存在していた。しかし、それだけにレベルが高すぎる」


 難易度の高い術式を思いつけるという事とそれを使用する才能は全くの別、それ故に難しい。

 扱うというレベルにした所でレクターとジュリでは別方向に才能がある。

 奥深いジャンルである為一言で説明するのは難しい。


「もしかした奈美には術式の開発者としての才能があるのかもな。確か女学院では魔導機の術式開発は授業にあったはずだ。通ったら実際に選択してみればどうだ?」


 俺は奈美の頭を優しく撫でてやる。



 ギルの乗る飛空艇が夜中の十一時を超えた頃、飛空戦艦のレーダー内に侵入していた。

 ギリギリまでステルス状態を維持する事に集中し、飛空戦艦の右側面の乗り込みやすい部分を探り始める。


「飛空戦艦の甲板エリアの右サイド、主砲の側が一番乗り込みやすいと思いますが同時に危険な賭けです。主砲がこちらに向く速度が速いか、こっちが乗り込むのが速いのか」

「それ以外に場所はあるのか?」

「いいえ。乗り込むなら甲板エリアが一番でしょう。敵の対空砲火を無力化するのにも甲板エリアが一番いいでしょう。しかし、飛空戦艦は甲板エリアが狭く、突入するのに一番いいのはやはり主砲側面が一番です」

「ならそこで良い。ギリギリまでゆっくり近づき、気づかれたタイミングで突入してくれ」


 ギルは突入用の飛空艇甲板エリアで策を左手で強く掴み、目の前に迫ってくる飛空戦艦に生唾を呑む。

 ジッと見ていたからだろう、ギルはゆっくりと主砲が動き出したのに誰よりも一番早く気が付いた。


「速度を上げろ!既に捉えられている!」


(最新鋭のレーダーシステムには分が悪かったか?)


 速度を一気に上げる突入用の飛空艇、主砲はあっという間に突入用の飛空艇を捉え、主砲の砲先が真っ赤に染まっていくのが分かった。


「回避!」


 ギルの叫び後と同時に主砲からの攻撃をギリギリの所で回避しようとするのだが、主砲の攻撃が左翼をかすめた。


「被害報告!左翼損傷軽微!」

「このまま突入しろ!速度を緩めるな!」


 むしろ速度を上げていく突入用の飛空艇はまるで粉々になるのではと思わせる速度で飛空戦艦の右側面主砲近くに突入した。

同時にギルは飛空艇から素早く飛び降り、転がりながら態勢を整えながら二本の剣に溜め込んだ炎エネルギーを思いっ切り主砲へと叩き込む。


 主砲が完全に大破してしまい、モクモクと立ち上る黒煙が大破の貴重な証。


「良し。これで主砲は抑えた!Aチームは対空砲火を無力するため電子回路を破壊しろ!ブリッジまで言っていたら時間が掛かり過ぎる。対空砲火を無力するだけなら甲板エリアの回路を破壊するだけで行けるはずだ」

「無力するのに五分だけかかります!」

「三分だ!内部の部隊が甲板に来る間に五分も戦力を低下させたくない!」


 ギルは二本の剣を逆さ持ちしながら飛空戦艦の内部と甲板エリアを繋ぐ出入り着地の1つ、その前に陣取り内部から突入しようとするガイノス兵に容赦のない攻撃を浴びせる。


「英雄!解除完了!」

「信号弾を上げろ!Bチームに突入させるんだ!」


 ギルの真後ろで待機していた兵士の一人が閃光弾によく似た真っ赤な信号弾が飛空戦艦のブリッジ前で弾ける。

 すると真後ろ後方格納庫めがけてもう一機の突入用飛空艇がものすごい速度で突っ込んでいく。


「高さが下がっていきます!おそらく内部の気圧が下がっているため安全を考慮しての事でしょう」

「予想の範囲内だ。脱出プランは頭に入っているな?」

「はい。飛空艇が破壊された場合も全員頭の中に入っています」

「ならいい。次はここで暴れ回るぞ!俺達の狙いは敵の戦力をなるべくここに集中させることだ!」


 烈火の英雄は暴れ回る為に二本の剣に炎を集中させる。

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