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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー≪上≫
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太陽のはじまり 3

 奈美は嵐後の綺麗な青空を見たことが無かった。

 だからだろう窓から差し込む雲一つない快晴という存在を見た奈美の表情はどことなく嬉しそうだった。

 一面の快晴の喜びを共有したいと兄の部屋にまっすぐ向かい、ドアを勢いよく開いた。

 この前壊れた部屋の壁は綺麗に治っており、ベットは全く使われていないようにシミ一つない。


「お兄ちゃん?どうしたんだろ」


 不安になってしまい、直ぐに階段を落ちていきキッチンのドアを勢いよく開くと母親とジュリが昼食の準備に入っている姿だった。


「お母さん。ジュリお姉ちゃん。お兄ちゃんがいない」

「うん。夜中にお父さんと一緒に要塞に言ったわよ。なんでも要塞で事件が起きたらしくて一緒に解決しに行ったわよ」

「え!? 夜中のうちに?」


 母親は優しくうなずくとお皿に朝食のメニューを並べ始める。

 朝食はどれもおいしそうだったが、正直奈美にはそれどころではないぐらいの気持ち、兄がまた知らない間に戦いに向かっている。

 そのことがどうしても頭から離れてくれない。


 朝食を食べる状況になってもどうしようもなく居ても経ってもいられなくなる。

 皆がそんなに心配している風じゃないのは、奈美と違いみんな基本的に信頼しているからなのだろう。

 ソラの実力を、レクターの実力を知っているから心配しない。


 奈美は自分の部屋に戻ってもなお、何もやる気がどうしても起きず、今日は自分の部屋で大人しくしていることにした。

 その内ロビーの方で賑やかな声が聞えてくるので奈美は「お兄ちゃんが帰って来た」という気持ちでロビーまで駆け足で進んで行く。


 二階からロビーを覗き込むとガイノス帝国軍の士官服を着た男性が来ているだけだった。


「………というわけでして。本日のお昼頃ソラ・ウルベクト。レクター・カーバント。アベル。ウルベクトの三名は海洋同盟に向こう事になりました。もし同行者がいらっしゃるんなら今のうちにお願いします」

「ジュリちゃん行くのよね?」

「はい。行こうと思います。気になっていることもありますし、ソラ君の支えになれると思いますから」


 奈美自身も大きく身を乗り出して大きな声を上げる。


「私も行きたい!」


 駆け足で階段を下りていき、ジュリと母親の前に立つ奈美を二人はしっかりとした目つきで見つめた。

 ここから先は戦場である。

 生半可な覚悟で行けば後悔することになるだろう事は誰にでも分かっている。


「奈美ちゃん。私達は危険かもしれない場所に行くの。それでも行きたい?」

「行きたい!私も一緒に行きたい!」


 奈美がふざけてい言っているのかどうかなんて目を見れば分かる事、ジュリや母親には奈美が決して冗談やふざけた気持ちで喋っているわけじゃないことぐらいはよく分かっている。


「ジュリちゃん。奈美をお願いね。奈美もジュリちゃんやソラやレクター君、お父さんの言う事をきちんと聞いて動きなさい」

「分かってる。急いで準備してくるね」


 奈美は急いで自分の部屋に戻っていき、片手で引っ張るタイプの旅行鞄に着替えを数日分の着替えや買ってもらった魔導機型の携帯など色々と鞄に詰め込んで外まで一気にかけていく。

 快晴の太陽の日差しが奈美の視界に爽やかさを運び、心躍る気持ちがやってくるのが分かった。



 アクア・レインから少し移動して行き、街道から更に海都オーフェンスから離れていく事数時間掛けて海上の出島に作られたオーフェンス空港が見えてきた。

 飛空艇は滑走路が必要ないため、着陸場は多く確保されており、一度に多くの飛空艇が離着陸できる。

 車で少しずつ近づていき、見えてくる空港。


「飛空艇で海洋同盟を目指す。明日の朝には到着するだろう」


 父さんが助手席で首だけを俺の方に向けてくる。

 ちなみに運転手はガイノス帝国軍の人に頼み込み、その際の交渉術は俺にとって一度歩かないかのものだった。


 もう父さんに車の運転をさせるわけにはいかない。


「もうちょっとゆっくりしたかったなぁ………諦めろ。言っても仕方のない事だって。何だったら残ってもいいんだぞ」

「ついてくよ!面白そうだし!」

「ほんとお前の行動原理って一貫しているよな」


 昔から思っていることではあるが………レクターの行動原理はいつだって面白そうな事を優先し、面白くなさそうな事は後回しである。

 面白そうだからついて行くし、その過程に苦労があろうが厭わない。


 昔っからこんな性格をしている所為で、どんな所でもついて来ようとする。


『ソラの行く先はいつだって面白い』


 そんな理由でいつだってついてくるこの男、きっとジュリも来てくれるだろう。

 このメンバーでいつでもやって来た。


 最初の湖畔の街での事件も、魔道の街での出来事も、砂漠の街での出来事だってこの三人はいつも一緒に立ち向かってくれた。


 寂しいと思ったことも無い。


「海洋同盟か。どんな所か知らないんだよなぁ。三十年戦争時には一切開国しなかったんだろ?」

「ああ、あそこは少々変わった事情を持っているからな。前に話したろ?あそこは問題が起きると鎖国し、問題が解決すると開国するを繰り返している」


 そして海洋同盟の内情を探る為に大学をオーフェンス内に許したという話で、それが今回の騒動のきっかけにもなっている。

 ガイノス帝国軍はもう反政府組織が帝国内で暴れる可能性は無いだろうと読んでいる。


 ガイノス帝国は今度は海洋同盟内で問題が起きると読んでおり、実際各国の軍事力が多少形ではあるが集まりつつある状況らしい。


「ガイノス軍ももう向かってるわけ?」

「ああ、天皇陛下も既に到着されていて、今日は開国初日という事もあり盛大なパレードなどでお祭り騒ぎらしいぞ」

「ええ!? 明日は?」

「レクター。お前何をしに行くのか分かっているのか?首相と話をしに行った後、俺達はそのまま仕事だぞ」


 反政府組織の動向を探り、その上で今回の一連の事件を解決する事。

 ただし、深追いするか、それとも潔く引くかはその場での判断という話だが。


 そういえばエアロードとシャドウバイヤはついてくるのだろうか?

 ついてくるつもりでいるのかどうかすら分からないが、最悪あの二人に頼らないでも済むならそれでいい気がする。

 あの二人に頼りっきりになるのは間違っている気がするし、それに今回の問題は俺達人間の問題でもある。


「そういえばさっき母さんから連絡あったらしいが、ジュリと奈美が参加するらしいぞ。あとエアロードとシャドウバイヤが居なくなったらしいからついてきているんだろう。最もシャインフレアはついてくるつもりは無いと昨夜のうちに言っていたらしいから参加しないだろうな」

「エアロードとシャドウバイヤは勝手についてくるからもういいとして………なんで奈美が付いてくるんだ?」


 奈美は関係無いだろうに。

 戦えないわけだし、ジュリは最低限でも戦えるし頭は良いので十分役に立つとして、奈美は戦えない上に基本頭はあまり良くないはずだ。


「俺達が心配なんじゃない?」

「心配なだけなら母さんが連れていかないと思うぞ。ああ見えて母さんは心配だからを理由にはしないはずだ」

「そうだな。奈美なりの覚悟があるからだろう。信じてやれ」


 まあ、それしかないか………。

 俺達の目の前に空港が迫っていた。


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