アクア・レイン攻防戦 10
俺の緑星剣と烈火の英雄の二本の剣がぶつかり合う音は空間全体に響き渡り、同時に衝撃波が周囲にいる人間全員に向けて襲い掛かる。
俺は足に力を込めて踏ん張り、烈火の英雄の重い一撃がのしかかろうとしてくる。
炎の一撃は熱く重い一撃で、俺の緑星剣が折れそうなほどの悲鳴を上げるが、それは向こうの剣も同じようで、熱風越しにでも感じる痛み。
俺と烈火の英雄はお互いに距離を取り、烈火の英雄は二本の剣先に大きな炎の一撃を溜め込み、それを俺目掛けて思いっきり飛ばしてくる。
「ガイノス流双剣術!双極!」
俺も左右に握った二本の剣先に風の力を溜め込み、それを大きな斬撃という形で前方に飛ばすのだが、烈火の英雄より数テンポ遅く出された攻撃は俺の目の前で弾けて熱風という形で襲い掛かる。
俺はつい熱風から視線をそらしてしまう。
そのタイミングを見逃す烈火の英雄ではない。
俺の左右に生えているような大きく太い柱から斬撃が俺目掛けて三回襲い掛かってくる。
「ガイノス流剣術!白銀!」
俺が独自に編み出した剣術防衛術は漆黒の鎧でしか使用する事の出来ない防衛術。
空に浮く残りの二本の剣が高速で回転しながら小さなシールドに変貌していき、そのシールドに着弾した斬撃が再びタダの熱風に変貌する。
その隙に烈火の英雄が凄まじい速度で左サイドから俺に接近してくるのを視認で確認すると、その方向に向かって俺は左手に握った緑星剣を飛り下ろす。
緑星剣と烈火の英雄の二本の剣がぶつかる音が響き渡るが、その攻撃の直後に烈火の英雄は後ろに大きく跳躍していく。
俺は再び左右から襲い掛かってくる斬撃をシールドで防ぎ、烈火の英雄は三度柱の陰に隠れていく。
複数の柱が炎上していき、炎上していく柱から複数の斬撃が飛んでくる。
「炎上柱。業炎」
正直に言えばキリがないという想いの方が強い。
烈火の英雄を探し出した方が速いだろう。
俺は走り出し、斬撃の攻撃をシールドで捌きながら最低限の攻撃は回避するのだが、攻撃回数が大きすぎて困る。
「ガイノス流剣術!園外光延」
ガイノス流剣術を習得した際に竜の欠片の力を取り込んで作り出した俺独自の剣術、周囲の光をエネルギーという形で収束し、それを遠距離に向けて斬撃を放つ。
近距離を論外として、俺は中距離から遠距離に向けて大きな斬撃を広げる。
炎を纏った柱を俺の斬撃が吹き飛ばし、同時に円柱に隠れていた烈火の英雄が姿を現す瞬間を俺は決して見逃さない。
鋭い斬撃を繰り出す為、俺は右手の緑星剣に風の力を溜め込んでいく。
「ガイノス流槍術!突貫【連】」
突き攻撃の五連撃技を烈火の英雄へと向けて繰り出し、烈火の英雄は攻撃を捌き切ろうと必死になるが五連撃目が左腕をかすめる。
至近距離で俺と烈火の英雄の目が確かにぶつかり合う。
「邪魔をするな!業炎!双炎槍!」
二本の剣を二本の大型ランスに変貌していき、そのランスはあまりにも大きすぎる。
中世の突撃型のランスを二本、それを軽々と振るっているその姿を見ながらもランスを射程圏内より内側に入り込もうと必死になる。
「モード蒼炎」
炎の色が蒼色に変貌していき同時に温度が上昇していくのだが、俺はそのランスの突き攻撃を真正面から受け止めようとする。
魔導や呪術の『異能』に対して強烈な耐性を持っている『竜の欠片』であるが、同時にそれは継続的な異能の力に対しては無力に近いという意味ではある。
ランスの蒼い炎が消えないという事、それ自体が烈火の英雄が内側から継続的にエネルギーを供給しているという事だ。
「竜の欠片。報告に聞いた通りだな。やはり異能という力そのものに対する強烈な耐性があるというのは」
「どのルートから聞いたのかハッキリ問いただしたいところだな」
「鎧や武装種類の創造と召喚能力、『異能』全般に対する強力な耐性、騎士人形を召喚する能力、それと………あらゆる異能を取り込むことが出来る能力」
そこまで知っていたとはな。
異能を取り込む能力は一回しか使っていない能力だし、危険な力でもあるから情報的にも遮断しているはずだ。見ていた人間も極僅かで、ガイノス帝国軍によって情報操作が行われている。
「アンタがどこからその情報を仕入れてきたのかはっきりさせたい」
俺は全身の力を内側から絞り出していく、正直な話でもう体力の方が持ちそうにない。
先ほどから派手に戦い過ぎている。
このままだとこっちのエネルギー切れを起こしかねない。
四本の剣に風の力を光の力を圧縮して純粋な力に変え、烈火の英雄も全く同じ方法で二本の蒼いランスに最大火力を集中させていく。
「ガイノス流終極其の三!光風双戟乱舞!」
「蒼炎!乱撃乱舞!」
俺と烈火の英雄の連続攻撃が空間に連続で衝撃波を周囲に放ち、俺達全身に痛みを与えていく。
お互いに負けじと何度も何度も攻撃を繰り出し続け、六回目を超えたあたりで烈火の英雄の蒼い色のランスの炎が弱く縮んでいくのが見て取れた。
このまま一気に強烈な攻撃を与えようと七撃目を繰り広げ、八撃目を与えようとしたその瞬間事である。
烈火の英雄と俺の間の足元から水の障壁が姿を現し、俺は後ろに大きく跳躍して回避していく。
「ソラ君下がりなさい!」
「何ですこれ!? 見たことありませんよ」
「私はある。水の無い所に水を展開することは出来ない。しかし、大気中の水分を水に変換させれば別。これは大気中の水分を水に変貌させる魔導」
俺の目の前にある大きな水鏡から武装集団が姿を現していき、同時に烈火の英雄の後ろで隠れている反政府組織のメンバーを回収していく。
同時に黒い髪をオールバックにしている細目の黒いスーツ姿の男性が姿を現した。
「どうも。わたくし彼らの知り合いなのですが………どうやら不貞を働いたようで。ここはこの辺で失礼させていただきます」
「それで「はいそうでうね」っと言わせると思いますか?」
「あなたはサクト大将ですね。そうは言いますが、あなたは足を負傷している。速度で勝負を決めるあなたが足を負傷しているようでは追撃は不可能では?」
よく見ている。
この男、見た目以上に底知れなさを持っているような気がする。
この立ち振る舞いを見る限りこの男がリーダーとみるべきかもしれない。
「待ってくれ!フォード!俺はまだ!」
「ギル………理解しなさい。あなたは負けた。あのまま戦いを続けていたらあなたは負けていました。それは理解していたのではありませんか?」
「くっ………わかった」
「分かってくれたのならいい。私達もここでここ以上騒ぐつもりもありませんよ。それに外相を狙う事も止める事にします」
すんなり手を引くんだけど……納得できない。
「すんなり引くんですね。あなた達は必死になって外相を狙っていたんじゃないんですか?」
「星屑の英雄君ですね。別段不思議な話ではありませんよ。私個人が狙いたいと思っていた理由は外相が持っていると思われる情報なんだよ。まあ、話すつもりが無いし、それにジェノバ博士の奪取もできないなら諦めるしかないよ」
フォードと呼ばれていた黒髪の男性は細めを決して開かず、その口調は決して崩れない言葉が俺の一言で変貌した。
「あなたが欲しい情報って『太陽の英雄』の事ですか?」
「へぇ………ジェノバ博士かな?ふぅん…………まあいい。今回は撤退するよ」
水の障壁へと消えていく多くの反政府組織のメンバー、最後にフォードが消える直前。
「一つ聞くよ。君はどうしてラウンズを使わなかったんだい?あれを使えば君は烈火の英雄をもっと早く倒せただろうに」
消えていくフォードに俺は何も答えなかった。




