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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー≪上≫
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アクア・レイン攻防戦 6

 エアロードはソラのベットの上でくつろいでおり、ベットの上にポテトチップスを広げて完全に散らかしている。

 時計をふと見つめ、心の中で「今頃要塞に付いた頃か?」何て他人事のように思いをはせる。


 そもそもエアロードは今回の一件には最初っからあまり興味は無かった。

 ジェノバについて行ったのも最終的にソラが何かを奢ってくれるのではという淡い期待があったためだ。


「あなたがついて行かないとは意外ですね。あなたはいつもついて行くぐらいの気持ちだと思いましたが」


 ソラの部屋のドアをゆっくりと開け、隙間を縫うようにゆっくりと室内に現れた真っ白な体を持つ竜シャインフレア。

 シャインフレアは近くの机の上に着地し、ゆっくりとエアロードの方を見るが、エアロードは持っているポテトチップスが奪われるのではぐらいの感覚でしかない。


「今回の一件は人間側に問題があるしな、それについて行った所で美味しそうな食べ物にありつけそうも無いし……」

「最後の言葉が本心ですね。要するにあなたは彼が危険でもお構いなしだと」

「…………シャインフレア。お前はあいつを過小評価しているぞ。ソラが負ける事は無い。あの男に負ける要素はそもそもない」

「何故そう言い切れますか?」

「簡単だ………ソラは決して折れない。誰に何と言われたとしてもな………折れぬ堅い意思。それがあいつの武器でもある」

「烈火の英雄が負けていると?」

「復讐しようとしている男が、失う事に向き合えない様な弱い人間と、失う事と向き合える人間。比較するまでも無い。態度を見れば明白だ」


 ドラファルト島の一件で大切な家族を失い、これ以上失う事を恐れて英雄であることを辞めてまでも復讐に走った烈火の英雄。

 それは彼の態度にあらわれている。


「それはあの少年が失う恐怖を知らないだけでは?」

「それは無い。ソラは彼ら以上に知っているさ。失う恐怖を、あいつは三十九人から王島聡や木竜からそれを学んでいる。だからこそあいつは折れない。絶対にな」


 エアロードはポテトチップスの欠片を口の中に放り込む。



 水中トンネルの薄暗い中を証明の明かりだけが唯一の頼りであり、真ん中を父さんの操るウルズナイトが、その右側に敵の乗るウルズナイトが並走している。

 ちなみにメメという女性が乗るバイクが天井を走ったり壁を並走していたりしているのだが、どういう技術を使えばああいう使い方が出来るんだろうか。


「おい!メメ邪魔だけはすんなよ!」

「その言葉バイアーにお返しますよ。邪魔をすればあなたの首を切り取って晒します」


 バウアーというらしいあの金髪の男とメメは俺達を挟んで喧嘩をしているのだが、俺達を挟んで喧嘩をするぐらいならキチンと話し合ってから来てほしい。


 俺はバウアーに、レクターはメメと向き合うのだが俺からすればこのウルズナイトの攻撃にどうするべきかという難題がある。

 レクターに関してはバイクで襲い掛かってくる相手を拳や蹴りで受け止めながら捌き切るだけなのだから楽である。


 父さんが回避するだけでは意味が無い、しかし命綱の距離に限りがる為、相手に飛び移ろうとすれば必ず届かない。

 相手の攻撃を捌くには攻撃の規模が大きすぎて話にならない。

 俺の剣とウルズナイトの剣ではそもそも勝負にならないだろう。

 質量が圧倒的に負けている。


「小僧!お前をぶっ殺す!お前にやられた傷が今でもうずくんでな」

「あの時死んでいれば良かったのに………鬱陶しい」


 心からの本心をさらけ出す。

 レクターとメメの戦いは完全に平行線をたどっており、一瞬だけだがそちらを確認してしまうがその隙にとバウアーのウルズナイトが重い剣を振り下ろすために持ち上げた。


 こうなれば攻撃を捌き切るしかない、上からやってくる攻撃の軌道を逸らすしかない。

 俺は星屑の鎧から漆黒の鎧へと形態変更する。


 全身の色が綺麗なエメラルドグリーンから淀み一つない黒へと変貌していき、両肩にそれぞれ黒い剣が一つずつと腰に二本、合計四本の剣が現れる。

 『竜の欠片』を扱う俺が使える鎧の内の1つ、『竜の欠片』の最大攻撃形態こそ漆黒の鎧である。


「剣よ舞え」


 俺の言葉を合図にするように剣が空中に舞い始め、同時に振り落とされるウルズナイトの大きな剣の側面を二本の空を舞う剣が攻める。

 俺は真正面から攻撃を受けるわけにはいかない。

 跳躍し同じく剣の軌道を大きく後ろにそらして見せる。


「やるじゃねぇかよ!前の戦闘の時にはその力を発揮しなかったなぁ。小僧なめていたのか!?」

「お前と一緒にするな」


 後ろでバイクと拳の衝突音が俺達の方にも響き渡る。

 すると視界の奥に微かに見える出口の明かり、俺はここで仕掛けないとこの二人とズルズルと戦う羽目になると考えた。


 狙うのならウルズナイトの関節部分、こちらを向いている左膝関節に攻撃を向けるしかない。

 次の攻撃を捌き切り、その後素早く左ひざ関節を狙う。


 俺は二本の剣を俺の周りに展開し、攻撃に備える。

 するとバウアーは初期動作をキャンセルした素早い一撃を父さんのウルズナイトのコックピット目掛けて横なぎに振り回す。

 素早く二本の剣を飛ばして攻撃起動を上へと逸らそうと試み、同時に父さんは体勢を低くしようとするので、俺はそのまま場所を右肩まで移動し剣の下に滑り込むように入る。

 剣の下から更に二本の剣で打ち上げ、合計で四本の剣で攻撃軌道を上に持ち上げた。


 ウルズナイトの剣がかすかに上を通り過ぎるのだが、同時に父さんの乗る方のウルズナイトの左膝がが地面につく。

 左膝から火花が飛びちる。

 レクターはきちんとメメを守り切っているのだが、父さんが無理に回避した事とバウアーがメメのバイクを利用してナイフの付いたシザーワイヤーで攻撃していた。


 だったらという気持ちで俺はそのまま命綱を切り、相手のウルズナイトの左膝に飛びつき、四本の剣を叩き込む。

 バウアーのウルズナイトと父さんのウルズナイトが巻き込み事故のような勢いでもみくちゃになっていき、その勢いにメメのバイクを巻き込もうとレクターがバイクのエンジンに右拳を叩き込む。

 もみくちゃになったウルズナイトから逃げる為に壁を並走していたのが仇になったようだ。

 俺とレクターは揉みくちゃにされない為命綱を外して大きく逃げる。


 転がりながらうまく着地して揉みくちゃになってしまい、大破してしまったウルズナイト達。

 実際煙を上げながら今にも燃えそうになっているが、上から海水が本格的に水中トンネル内に入り込み始める。


「父さん!大丈夫!」

「こっちは無事だ。お前たちは先に行け。私はこの二人を抑えてから行く」

「………分かった。先で待ってる」


 そう言いながら俺達は走り出していく。



 ソラとレクターの駆け出していく音が遠ざかり、その代りウルズナイトの爆発する音と水がまるで滝のように落ちていく音が聞こえてくる。

 アベルの目の前でゆっくりと立ち上がるバウアーとメメに鋭い睨みを向ける。


「やれやれ……足止め失敗か。このまま逃げてもいいんだろうが」

「ええ、ですがこの男を足止めできるかどうかだけでも作戦効率が変わるでしょう」


 アベルは大剣を召喚し、同時に体中に星屑の鎧と全く同じデザインの鎧を身に纏い始める。

 大剣を両手で握りしめ、剣先を斜め下に向けながら腰を少しだけ低く構える。


 バウアーは全身に力を籠め、禍々しい模様に神経が集まっていく。

 メメもナイフを二本両手に構えて持つ。


「装束宗の女にマガイ族の男だな。また珍しい組み合わせかと思ったが、元々二つとも海洋同盟出身だったな。なるほど、珍しい相手だが………」

「俺達の情報も入手済みか………」

「なるほどガイノス帝国の三将軍の一人に数えられるだけはあるようですね。逃げたければ逃げても構いませんよ」


 睨み合う状況と沈黙が場を満たし、三人が跳躍するのに時間はかからなかった。


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