アクア・レイン攻防戦 3
サクトとケビンが缶コーヒーをゴミ箱に入れると同時に息を荒立てた一人の若い士官男性がサクトの前に仁王立ちする。
「失礼いたします!レベル1区画にて侵入者!かなりの人数で噂の『反政府組織』ではないかと推測できます」
「詳細な敵の規模!目的を私の元に届けなさい!後外相を指令室まで連れてきなさい!敵の目的の1つにあの外相が入っている可能性があります!」
若い士官男性は右腕を左胸の上に置く敬礼のポーズをとってから素早くその場から移動し始める。
「すみませんがケビンさんも指令室までいらっしゃってください」
「勿論です。私に出来ることがあれば言ってください」
サクトとケビンが第一指令室までたどり着いた二人の目の前に指令室全体に混乱を示すような声があちらこちらから聞こえてくる。
「落ち着きなさい!今こそ冷静に対応するときです。まずは敵勢力のおおよその数を」
「サクト大将!敵のおおよその数は約百です。大学で確認されている数より更に大規模になっています。武装の種類と敵のいくつかに身に覚えのある顔立ちの確認から『反政府組織』のメンバーであると推測できます」
「なら狙いは外相が入っている可能性が高いわね」
「はい。しかし、他の可能性も高いものだと判断できます。実際奴らは第二指令室へと向かっています」
サクトはふと考え込むような仕草を見せ、頭の中で思考をフル回転させる。
(外相を殺したいだけならここまでしないでしょう。というならどうしても殺したい理由があると推測したほうがいいわね。そうでもないとこのアクア・レインに襲撃しようとは思わない。でも、どうして第二指令室を?………まさか!?)
「いけない!第二指令室への防衛に人員を割きなさい!あそこを落とさせてはいけない!」
「しかし!この第一指令室の防衛に人員を割いているうえ、夜中で一部の部隊が基地へと帰っています。これ以上は人員を避けませんよ」
「防衛機能を奪われたら外部からの救援は絶望的です!ここの陥落が時間の問題になってしまいます!」
アクア・レインへ入る為には飛空艇以外には水中トンネルを通るしかない。しかし、この水中トンネル水圧に耐える為に分厚い構造をしているが、アクア・レインの防衛機能を使えばこの水中トンネルを破壊することは可能。
「あそこを奪われたら私達はこの要塞内に捕らわれたも同然です。何としてもあそこを死守しなさい!」
時を同じくして、第二位指令室へ向かう部隊と水中トンネル一帯の確保を担当する部隊に分かれて行動していた。
「ボウガンと俺はこのまま第二指令室を抑える。メメとバウアーはこのまま水中トンネルとレベル1と2の区画の制圧をすばやく済ませろ。水中トンネルに敵が侵入してきたらこちらからの攻撃で水中トンネルを公開させる」
バウアーは最初にソラと戦った金髪の男、ソラとの戦いで負った傷が今だ治っていない。
普段であればここで不満の1つでも言って最前線に向かうところであるが、この傷では最悪の場合は足手まといにしかならないだろうという事ぐらいは判断できる。
メメも同じだった。
彼女もまた空との戦いの影響を少なからず受けている身、無理をすることが出来ないのも事実。
「二人は無理だと判断すれば素早く離脱しろ。お前達はダメージが大きいはずだ。無理をするな。俺とボウガンはまず第二指令室を抑えたのちにそのまま第一指令室と『外相』を抑える」
「おうよ!楽しみだぜ。最強要塞の1つをこの手で攻略できるとはな!しかし、結構あっさりと侵入で来たな。抵抗も少ねぇし」
「時間の問題だな。夜中は近くの基地に移動させるうえ、長年侵入者の一人もいなかったからこそ油断していた。普段から内部に滞在している人間の数は少ないはずだ。外相を殺して離脱するだけなら十分可能の範囲だ」
「流石は我々の英雄だ。さて………暴れ回るか」
そう叫ぶボウガンは烈火の英雄を置いて駆け出していくのだが、烈火の英雄は最後に振り返り黙って頷くとそのまま駆け出していく。
「はぁ………あなたと一緒ですか」
「お前人に聞こえるようなため息を出すか?そんなに嫌なら入江で大人しくしていればいいだろうに」
「あなた一人に任せるぐらいなら私一人で何とかして見せます」
メメはそっけない態度を取りながらヒールが地面を鳴らす音を響かせながら歩き出し、バウアーはどこか足りない様な表情をしながら後ろを付いて回る。
「………変態が後ろからついて回ってきます」
「おい、その変態というのは俺の事か?」
「………大変です私のナイスボディを狙ってきます」
「フン。お前のどの辺がナイスボディなんだよ。お前の体ってその胸元で魚を捌けるぐらいまっ平だろ!?おい!無言で出刃包丁で喉元を切り裂こうとする奴いるか!?」
「そのデリケートの欠片も無いような口を塞ぐために喉を切り裂こうとしただけです」
「だったら口を狙えよ!喉を狙うな」
「その喉元を切り裂くことで喋る機能を奪う為です」
二人は言い争いをしながらもその場から立ち去っていく。
第二指令室へのまっすぐな廊下をボウガンと烈火の英雄を先頭に約十人が突っ込んでいく、第二指令室前にある大広間のような区画に辿り着いた。
「ここを突破すれば第二指令室だ!」
「おいおい。すげぇ数が目の前に展開しているぜ」
大広間の柱の裏に隠れる一同の目の前、第二指令室の前に大規模な部隊が展開していた。
百人を超える数がバリケードを設置して防衛能力を高め、三重に構える防衛隊。
その防衛隊を反対側から睨みつける烈火の英雄率いる『反政府組織』と防衛隊の衝突の戦火を切ったのは烈火の英雄の強烈な二連撃だった。
炎の斬撃を連続で二連撃が防衛隊のバリケードに直撃し、大きな炎が爆炎となって大広間を埋め尽くそうとしていた。
俺の部屋が少しぐらい静かになったと思い、俺は自分のベットの上で全身を伸ばしながら少しだけ体をストレッチしていると、少しだけ喉が渇いてしまう。
「ジュースでも取りに行くか………エアロードとシャドウバイヤはどうする?」
「「行く」」
俺はエアロードとシャドウバイヤを引き付けれて歩いて階段を下りていき、一階のキッチンの冷蔵庫へと手を伸ばす。
大きな冷蔵庫の中には母さんが昨日のうちに買っておいた飲み物やお菓子が詰められている。
「俺はコーヒーでも飲むかな……どうせこのまま宿題でもするつもりだし。二人はどうする?」
エアロードとシャドウバイヤは「なんでもいい」というのだが、なんでもいいなんて言われてもこの二人の好み何て正直困る。
この二人はそれでなくても好みがはっきりしない。
結局適当な炭酸系のジュースを二人に渡したのち、自室に戻ろうとしたときだった。
一階の父さんと母さんの部屋から父さんの焦り声が聞こえてきたので耳をドアを付けて立ち聞きする。
「……だと!?サクトは無事なのか?アクア・レインと連絡が取れないんだな。分かった。近くの基地まで一旦私も移動する。ああ、細かい事はそっちで話そう」
「あなた?」
「海上要塞アクア・レインが何者かの襲撃を受けて孤立しているらしい。これから近くの基地まで移動して対策を練る事にした」
「分かった。でも、気を付けてね」
俺はどうするべきかを考えながら振り返るとそこにはレクターが真顔で俺の方を見ていた。
「どうすんの?ついて行くでしょ?」
「…………勿論だ。お前もついてくるだろ?勿論」
「へへ!勿論。大学の借りを返したいし!」
俺とレクターは父さん達の部屋のドアを勢いよく開ける。
「父さん。俺とレクターもついて行く。嫌だって言ってもついて行くから」
「お前達………十分で支度するんだ。入念にな」
俺とレクターは走って自室に戻っていく。




