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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー≪上≫
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嵐 1

 その夕方結局みんなと合流することなく、俺達はそのまま午後のメニューをこなす事になった。

 何故か妹の奈美が同伴することになったが、この程度はある程度予想の範囲内だろう。

 問題が生じたとしてら、シャドウバイヤの代わりに何故かシャインフレアが付いてきたことだろう。


「何故お前が付いてくるんだ?シャインフレア」

「あなたの生活に興味が出ました。それにここ数十年暇を持て余していたので、この際人間達の生活に慣れてみるのもいいかと」


 シャインフレアはジュリの鞄の中に入っていき、エアロードは俺が背負っている鞄の中に入る。

 それは良いのだが、これ以上竜を飼育するなんて面倒な事俺は嫌だな。

 母さんと奈美辺りは面白がるだろけど、父さんは「どうでもいい」と言いそうだ。


「数日お世話になります。それともソラ・ウルベクト達の家の家主は駄目というのですか?」


 シャインフレアがそういうのだが、多分家主である父さんは本当にさほど気にしないだろうから困る。

 実際聞いてみたら父さんは「好きにすればいい」と興味なさげだった。


「お兄ちゃん達の予定は?」

「と言ってもな。もう午後だし。夕方には家に帰る必要がある事を考えるとそんなに寄り道できないぞ」


 特に俺達はこの辺に詳しいわけでも無いし、今から調べていたらそれこそ間に合うとは思えない。

 なんて言っていると、ジュリが携帯の画面を俺達の方へと向ける。

 画像の中にはこの先三十分ほど歩いた場所に噴水広場という大きな広場があるらしく、そこでは出店や出し物を頻繁にしているようで、レクターとエアロードが出店辺りに目を輝かせている。


「まだ食べるのか?夕食が食べられなくなるぞ」


 俺からの忠告にさすがに簡単に否定できない二人、先ほど調子に乗って大きなパフェを食べているのでここで出店に手を出せば本当に夕食が食べられなくなるだろう。

 しかし、出し物なんかは面白そうなものがあり、奈美も興味をそそられているようだ。


「ここ以外に良い候補も無いだろうし、ここに行って時間を潰してみるか………」

「私はどこでもいいですよ。そもそも数日とは居候のみ、そこまでわがまま言うつもりもありません」

「どこぞの風竜に見習ってほしい言葉だよな」


 俺はカバンに隠れていくエアロードに顔を向けるが、エアロードは奥に隠れていく。

 どうやら分が悪いという事ぐらいは分かるらしい。


「しかし、どうしてシャインフレアさんはいきなり人間に興味が出たんですか?」

「いいえ。向こうの世界での事件以降少しずつですが人間に興味が出ましてね。ちょうどこの街で用事もありましたし、そのついでにウロウロしていたらあなた達が駅前に姿を荒したので少し離れた場所から見ていたんです」


 俺達が噴水広場までの長い道に出ると、左右に華やかな植木が綺麗に並んでおり、その間に色々な出店が並んでいる。

 中には甘いにおいが漂ってくる為か、エアロードとレクターが口から涎を流しながら興奮を抑えきれていない。


「我慢しろよ。夕食食べられなくなるぞ」


 エアロードは先週調子に乗って夕食前に爆食いをしてしまい、夕食を食べられず母さんからものすごいお叱りを受けている。

 その一件がトラウマになっているようで、各食事前は食べないことを義務付けられている。

 因みに全く同じタイミングで我慢したシャドウバイヤはそのお叱りを面白おかしそうに見ていた。


「何か飲み物でも飲もうか。大学での一件以降、私喉乾いちゃったし」

「そうだな。それぐらいなら大丈夫か」


 そう思いながら俺は左右に首を振りながら出店一つ一つを目で確認していくが、飲み物を売っている出店が中々出てこない。

 この街は景観の為に自販機を置いていないのでこういう時に飲み物が無くて困る。

 なんて思っていると少し先にシェイク系の飲み物販売の出店を発見した。


 俺の「何呑む?」という言葉にそれぞれの注文メニューを口早に告げるのだが、それをきっちり聞き取る店員さんの手腕に拍手の1つでも送りたいところである。

 最後に俺の飲み物を受け取ると、そのまま人数分の金額を手渡しで渡してそのまま噴水広場前まで進む。


「帝都ほどじゃないけど、大きな街だよな。この水路がそう見せるのかもしれないけどさ」

「そうだね。水路と陸路を複雑に組み合わせた街だけど、その裏で急な発達で街が歪にできているって聞いたよ」

「この先の噴水広場が街の中心と考えていいのか?」

「そうだね。船の乗り継ぎ場や役所なんかもここにあるから、この街の中心と言ってもいいのかもね」

「帝都の役所なんかは高層ビル群のど真ん中だからな、ある意味度肝を抜かれるけどな。俺はやっぱり南区の落ち着いた住宅街が好きだよ」


 俺とジュリだけで会話をしていた所にエアロードが割って入ってくる。


「あの高いビル群というのは私は好かん。狭苦しく感じる」

「そりゃあおまえから見たら狭く感じるかもしれないけど。人間から見ると普通に大きく見えるんだよ」

「エアロードは普段はソラ君の家に居るの?」

「?ソラについて行くこともあれば、適当にその辺をウロウロすることもあるが?まあ、その時の気分次第だな」

「だから困っているだよ。この竜、好き放題移動するからな。シャドウバイヤはまだ大人しい方だよ。あれは俺か母さんについて行くからな」


 移動範囲のカテゴリーが存在しないエアロードは自由という言葉は非常に似合う。

 まさに風の如く自由気ままに生きているといっていいだろう。


 元々他のしがらみを決して受けないで進んできたエアロード、西暦世界での一件からエアロードは俺達ウルベクト家に永住の地を構えた。

 今、ジュースを飲んで味を楽しんでいるが、この変化を他の誰よりも驚いているのが他の竜達である。


 誇りが高く、どんな竜も基本的に人間を見下そうとする中で唯一人間を対等な存在として見えている数少ない竜でもある。


「奈美ちゃんもこの世界に馴染んできて良かったね。最初は心配したけど………」

「まあ言語文化が同じだからな、奈美としては生活文化の違い位は特に何ともないと思うけどな。元々切り返しは俺達家族の中でも良い方だからな」


 前をレクターと一緒に歩いている奈美をジッと見つめる。

 俺達家族の中で一番切り返しのいい性格をしており、ある意味柔軟だし、ある意味大らかな性格をしている。


「貴方の妹は確かに大らかというか、柔軟な思考をしているようですね。本来異なる生き物と遭遇した場合それなりに抵抗するモノですが、彼女は私の存在にもさほど拒絶しませんでしたし」

「まあエアロードがいるし、それでも初めてシャドウバイヤと出会った時にもさほど抵抗なく受け入れていたぐらいだしなぁ。元々大らかすぎて困るぐらいだし」

「ソラ君のお母さんも大らかだよね?ある意味すごいと思うけど」

「あの人の凄さは勘の鋭さと頭の良さだよ。あの人異常な程勘が良いんだから」


 実際俺の生存に誰よりも早く気が付いていたぐらいだし。


「フム。確かに初めて見たときも異常なほど落ち着いた対応をしていたな、アベルは将来尻に敷かれるな」

「今でも若干尻に敷かれているけどな」


 あの人母さんに弱い部分がある。

 下手な抵抗が出来ないし、ある意味既に尻に敷かれているようなものだ。


 なんて言いながら歩く事三十分で目の前に大理石で作ったような綺麗な彫刻と水しぶきを周囲に散らせる大きな噴水が目に入った。


 その大きさを前に圧倒されそうだ。

 水しぶきが舞い散り、上に薄い虹がかかるのだがその虹を見る為に目を細めた時、同時に俺の視界に大きな飛空艇の側面に書かれるガイノス帝国のマークが見えた気がした。


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