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東京決戦~永遠の終わり~

 王島聡と木竜の融合した姿を俺はどう呼べばいいのだろうと悩み、木竜が『ヒエルギー』と呼ばれていたのを思い出し、王島聡の王をキングと読みキングルギーと呼ぶことにした。

 キングルギーは両腕を胸で十字に組み、俺に向かって両腕を思いっ切り振ると衝撃波が俺の体を吹っ飛ばそうと試みるが俺は両足で踏ん張りながら緑星剣縦に振る。

 衝撃を縦に切り裂きキングルギーへの道を切り開き、俺は横に跳躍することで刃物と化した尻尾からの突き刺し攻撃を回避、そのまま尻尾を緑星剣で切り裂きながら距離を詰めていく。

 走り出す時もいつでも攻撃がどこから来るのかを見極め、周囲の床から伸びる木の根がまるで槍のような鋭さに見えてくる。

 俺は体勢を低くして攻撃を回避、更に足元から伸びる攻撃を緑星剣で切り裂きキングルギーの元までたどり着く。

 首を切り落とそうと緑星剣を伸ばすが、キングルギーはそれを右腕だけで受け止めた。


 緑星剣で切ることが出来ないほどに強靭な右腕。


「我々は最強の存在になった………今であれば『災い』すらも超える事が出来る」

「災い……? 何の話だ?」


 俺の首から上を吹っ飛ばそうとするかのように右腕を軽く振るように見えるが、回避した瞬間空気の斬撃が通り過ぎた。

 押し返す事が出来ないので俺は一旦距離をとるが、その瞬間にキングルギーは連続で空気の斬撃を俺目掛けて飛ばしてくる。

 俺はそれをなるべく斬撃を切り落としながら後ろに後退していく。

 ていうか腕を振るだけで斬撃やら衝撃波やら飛ばしてくるのはどうなのだろう。


 このままでは押し返される。

 俺は剣先に風を掴むような感覚を思い出し、それで攻撃範囲を拡大させ、斬撃を切り裂きながらキングルギーへと攻撃を伸ばそうとするが、攻撃範囲を伸ばせば逆に威力は低下する。

 こうなれば攻撃範囲は縮めながら威力だけを増加させることにし、左右に走りながら攻撃を捌いていく。


 こうなれば見様見真似であるがガーランドがしていたあの技を使ってみようと思い、全身の筋肉を魔導の力で増加させ、攻撃をすべて避けるぐらいのイメージを持つ。


「見様見真似………飛永舞脚!」


 左右の動きで敵をかく乱させつつ、攻撃を確実で移動のみで回避していく。


「この程度の動きで我々をかく乱するつもりか? まさかとは思うがこれだけが私の攻撃手段だと思わない事だ」


 左手を真上に掲げると、空中に光の粒で満たされていきそれがドンドン俺の方へと落ちていく。

 攻撃を回避して世界樹の根っこに着弾した瞬間焦げ臭い匂いを感じ取る事が出来た。


「熱エネルギー……!? 体温を意図的に上昇させてそれを熱兵器に変換した? でもそんな事をすれば……そうか、不死だから」

「そうだ。我々はどれだけ熱を上昇させても死ぬことは絶対にない」


 振ってくるような熱エネルギーを回避していくが、回避しきれるわけがなく右足を掠めた所でこけそうになる。

 後ろに下がりながら攻撃を少しずつ回避していくが、これでは解決法にならない。

 風の力では熱エネルギーと比べると勝ち目がない。

 というか普通に相性が悪い。

 相性が悪いからこそキングルギーは使ってきたという事だろう。


 これだけ広範囲の攻撃ならラウンズを召喚しても解決にはならない。


 しかし、どうやってこれだけの熱エネルギーを周囲に送り込んでいるのか。

 攻撃が来る場所をじっと見つめているとそれが木の根っこから照射されているのだとはっきりと分かる。

 足元に根を張ってそこから熱エネルギーを供給しているとはっきりわかった。

 真上にあげたのは足元に根を張る瞬間を見せない為だったという事か。


「だったら……!」


 俺は風の斬撃を最大値まで高めながら攻撃を回避しながら攻撃できる瞬間を見極め、攻撃を掻い潜った瞬間に思いっきり横に剣を振った。

 斬撃は丁度キングルギーの足元へ届いていき、キングルギーは攻撃を跳躍することで回避した。

 しかし、その瞬間に俺はキングルギーへと剣を突き出した。


「刺殺の束!!」

「舐めるなよ……! 何の為の翼だと思う!?」


 翼を羽ばたかせて空中に逃げようとするのを俺は正直予想していた。


「俺だって……! お前が逃げる事を予想していなかったと思うか!? 攻撃や止めばこっちだって策があるんだ! ラウンズ!!」


 俺の体から五体ほどの騎士人形が呼び出され、跳躍するキングルギーを空中から斬撃攻撃で襲い掛かる。

 上から二人の斬撃攻撃を下への急降下で回避するが、俺は一人を足元へと移動させ風の斬撃攻撃で移動場所を制限する。

 下からの攻撃を右移動で回避しつつ、目の前までやってきた刺殺の束の攻撃をから逃げる為左へと移動するとそこには目の前までやってきた騎士人形に押し返されてしまった。

 急な攻撃にいきなりは対処できないと読んだ俺は正しく、刺殺の束の攻撃をキングルギーは両腕で押し返そうとする。


「グヌヌ! グアァ!!」


 両腕を使ってキングルギーは刺殺の束の攻撃を耐え凌ごうとし、周囲から襲い掛かってくる騎士人形による刺殺攻撃を耐え忍びながら両腕で刺殺の束の攻撃を粉砕して破壊した。


「どうだ………!?」


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 この距離なら片目でも間違えることなく切り裂くことができる。

 緑星剣の斬撃能力を最大値まで上昇させながら思いっきり横なぎに剣を振り切った。


「ガイノス流剣術! 漸!」


 俺がキングルギーの体を真っ二つにしたその瞬間、キングルギーは小さく呟いた。


「そうか………だから君なのか?」



 俺が大きく転がりながら地面に無様に落ちてしまったが、キングルギーは分かれてしまった胴体を完全修復が出来ない様で、決して悶えるわけでもなくその場で大の字で伸びている。

 俺も体中に火傷、右側頭部から出血と血による視界がふさがっているなどダメージもそこそこ多いが、それ以上に疲労の方が多い。

 指一本でも動かす事が出来ないほどに疲れ切っており、近くから音が近づいてくる方へと顔を向けることすらできない。


 そうしている間にもキングルギーの体が木竜と王島聡に分かれていく。


「ソラ君!」


 ジュリとイリーナが俺を抱きしめ、その隣を飛んでいたピンク色の竜が俺の上を通り過ぎて木竜の側まで近づいていく。


「………やっと会えたな?」

「全く……運命に抗おうとしたのよね?」

「………はは…出来なかったがな………運命は…運……命だ」

「聖竜が言っていた通りになったわね」

「…………死こそが救い……か」

「これで良かったのよ。私達は出会えただけで幸せだったのだから」

「そ……そうかも………しれないな」


 王島聡は完全に息をしておらず、もう意識があるかどうかすら俺にははっきりと分からない。


「……彼と同化を解除したのは彼を巻き込まない為?」

「ああ、不死をもって死ぬという事は………永遠の無…という…罰を……受けるという事だ。私…と別れれば会える……だろう?」


 木竜達にとって死とは救いだったのか、この世界を滅ぼす事でも負けてもある意味彼らは救われる。


「きっと会えるわ……そして生まれ変わるの。あの兄妹はきっともう一度兄妹として生まれ変わる」

「そうだと…いいな。なあ……もう一度歌ってくれないか?」


 ピンク色の竜はまるで儚いようで綺麗な歌声で歌い始める。

 その歌声は歌に詳しくない俺でも綺麗だと理解させる歌声で、木竜は涙を流しながら嬉しそうに笑っている。

 まるで自分の人生に後悔なんて存在しないと言わんばかりに。


「………好きだった。君…の……歌が……………聞けて…良かっ……」


 木竜は光の粒子となって消えていった。


「私も好きでしたよ………さようなら」


 イリーナが立ち上がり俺はジュリに「手伝ってやってくれ」と告げる。

 俺の前の前で世界中へと歌を届ける準備が確実に整っていく姿を見守りながらイリーナとピンク色の竜は大きな声で歌い始める。



 世界中でイリーナとヒーリングベルの歌声が響くまで多くの皇光歴の戦力が努力してくれたことは確かだった。

 この日世界はあらゆる醜さをさらし出した。

 たった一人の少年と一人の竜によって世界は変革を余儀なくされ、多くの世界があらゆる憎しみとあらゆる変化を受け入れざる終えなかった。


 一人の少年は死ぬことで楽になる道を選んだ。

 それがある意味一人の英雄の活躍と称され、自らは多くの人からの罵倒を受けてもそれでもよかったと思えた。


 少年は真っ暗な世界で一人目を覚ました。

 この比喩表現はきっと間違ているのだ。

 だって少年は死んだのだから。


「お兄ちゃん」


 妹の呼ぶ声に反応しそちらを見ると懐かしい最愛の妹がそこには立っていた。

 差し出す右手をそっと握りしめ、少年は「一緒に行こう……今度はきっと幸せになれるから」と言い聞かせる。

 妹は「うん!」と言いながら歩き出した。


 魂は巡っていく。

 不幸な兄妹は生まれ変わる事で幸せを得ようとした。

 幸せを探す旅が今……始まった。


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