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東京決戦 5

 蜥蜴男の軍勢を倒している間にガーランドは巨人二体を瞬殺していたわけだが、あの人一人だけ生まれた世界を間違えたのではという疑惑を抱かせてくれる。

 新しい軍勢に囲まれる前に俺は後方に控えていた群衆に来るようにと指示を出し、同時にレクター達にこの先の敵の掃討を命じた。

 俺ともう一人はこの場に残り通り過ぎる群衆の護衛、最後にガーランドと合流後したのち群衆が集まっている場所まで進む。


 東京駅の名残を残すその場所、改札口などがある所を見るとここが広場になっており、お土産屋など様々な場所へと繋がっているように見える。

 そんな中異彩を放つ建造物が存在しているのが見えた。


 木でできた大きなトンネルに東京駅の中にある様々な物で作られた門、木は触れば脈動を感じる事が出来る。

 なんとなくだかこの先に木竜がいるような気がする。


「なあシャドウバイヤ。この先に…」

「ああいるぞ。多分意図的に残しているんだろうが、真意が見えてこんな。東京駅の中に閉じ込めておけばよかろうに」

「意図しない脱出方法をとられることを嫌がっているんじゃないのか?」

「ならいいが。どうもお前を誘い込んでいるように見える」


 それこそ考えすぎだと信じるとして、俺はそのまま怪我の手当をしている集団に合流後、横になっているジュリとイリーナの元へと歩いている。

 ちなみに先ほどまで興奮しながらイリーナの側にいたヴァースは看護師の女性から「邪魔」とハッキリ言われてどこかへと歩いていった。

 周囲は怪我をしていない士官学生の中でも手練れが監視しており、レクターはその集団から「邪魔」とハッキリ言われてしまうというどこかで聞いた結果に。


「二人共大丈夫か? 怪我は無いって聞いたけど」

「大丈夫。イリーナもね。御免ね肝心な所で気絶しちゃって」

「私も……まるで役に立てず」

「それこそ気にするな。ジュリもイリーナもこれからだろ? それより、ガーランドどこに言ったのか知らない?」

「え? その辺にいない?」


 ジュリも見ていないのか、もしかしたら東京駅中を歩き回っているのかもしれない。

 そう思うと俺が探し回ればかえって迷子になるだろうと思いその場に座り込む。


「あの先に木竜がいるらしい。シャドウバイヤが言うから多分間違いない」

「そっか。誘われているような気がするね。気のせいならいいけど…」

「私もそう思います。なんだか誘われているような気がする」

「考えすぎだとソラは言うのだ。全く、鈍感にもほどがあるだろうに。明らかに誘われているぞ」

「………でも、ここから出るにも多分あの場所を通る必要があると思うけど?」


 あの先ぐらいにしか出口が無いような気がするし、こうしている間も現実側は世界樹の浸食を受けているはずだ。

 命を吸う事で大きくなるという特性はファンドが木竜になってしまった時も同じ傾向がみられた。

 木竜の力は元々『不死』と『吸収』があるのだろうと推測。


「木竜の力は『不死』と『吸収』なのか?」

「他にも色々あるが、おおよそはそこで間違いはない。特に吸収は如実に現れている部分が多く、吸収した分だけ強くなると考えればいい」

「世界樹が取り込んだ力はそのまま木竜の力になるのか?」

「吸い上げる事は可能のはずだが、そうすれば計画に遅れが出るはずだからな。必要以上の行動はしないはずだ」


 そうなれば今の所木竜の元へと辿り着き、木竜を殺しさえすれば事件は解決できると見た方が良いのだろう。

 というよりはそれ以外に方法が無い。

 問題は王島聡の方だ。

 あいつに戦闘能力があるようには見えなかったが、俺の前に立ちふさがる以上は戦うと予想した方が良いのかもしれない。


「そういえば。シャドウバイヤに聞いておきたいことがあったんだ」

「なんだ?」

「ヒーリングベルについて知っておきたい。敵対するつもりなのかどうか」


 シャドウバイヤは考え込む素振りを見せるが、実際考えているのか、それとも記憶を探っているのか十分ほどタップリ考え込んでから口を開いた。


「基本は人と寄り添いあう竜だな。お前はエアロードが人間を見下さない竜だといったな。正確には二千年前ヒーリングベルが活動していた際にも彼女は人を見下さなかった。竜人戦争の事はどれぐらい知っている?」


 俺はジュリの方を見ると、彼女が少し言葉を選びながら口を開く。


「かつて人と竜の関係が終わりそうになった時、国にも満たない人々の集まりの中に竜を信仰の対象にする者と竜を滅ぼすべきと考えた者達と人を滅ぼすべきと考えた竜達で争った。最後は竜を信仰の対象とする人と竜によって平定され、後に最終決戦の地をガイノス帝国発祥の地とする。私はこう聞いたことがあります。でも、現代の資料で当時の戦争は詳しく書いていないんです。私興味を持って調べたことがあるんだけど、どの図書館も詳しい事は」

「でも、それっておかしくないですか? 帝国建国という話ならどこかに残って良そうな話ですけど……」

「皇帝一家が管理しているような重要案件なのかもしれないな。よっぽど知られたくない話が混じっているか、知られたら面倒な話なんだろう」


 イリーナの素朴な疑問に俺が考えうる限りの答えを告げる。


「仕方なかろう。当時竜人戦争とは名ばかりで、正確には不死を求める多くの命による際限ない殺し合いだったのだからな。竜の中にすら不死を求める者達が存在していたのは事実。皇族の一族に連なる者達の中にもチラホラいたはずだ。戦争とは言ったが、それは酷い戦いだった。総人口の半分が犠牲になった戦いといえばわかりやすいか」

「皇帝一家が隠しているのは自分たちの一族からそういう人間を輩出した事への負い目か?」

「いや、不死になる方法を探られたくないのだ。当時は不死に対処する為に多くの非人道的な兵器が開発されたほどだ」


 嫌な時代だなって思うだけだし、どちらかといえばあまり想像できない時代である。


「そんな中ヒーリングベルは難民が増えるような状況で人々を匿い、戦いに干渉しないと宣言した竜の一人。優しく、どのような存在にも隔てなく接する。そんな優しさに竜の中で恋をした竜がいた」

「? 竜って恋愛をしないんじゃないのか?」

「例外がいた。それが木竜と音竜だった。戦いに介入しない両者は当時人々を守ろうとしていた。お前に言ったな? 木竜は不幸体質だと。周囲に不幸をもたらすと」

「ああ、それが王島聡にも宿っているって話だったか?」

「木竜がほんの少し目を離したすきに音竜と人間達は竜殲滅派によって壊滅させられていた。人を殺すと決めたのはその頃の話だ。最も、音竜がどうやって呪詛の鐘に変貌したのかは私にも分からん」


 不幸体質故に不幸を集めやすいという理不尽、不条理に負けそうになり、結果から見れば木竜は人間を滅ぼすと決めたのだろうが。

 俺は一つだけ腑に落ちない部分を見付けた。


「まあ、人間に負けるぐらいヒーリングベルって弱いのか?」

「当時は今以上に危険な兵器が存在していたからな。負けてもおかしくない。ヒーリングベルは声で命を思い通りにする力があるが、力は人一倍弱い。単純な戦闘能力ならワーストランキングに入れるぞ」


 この辺の世俗にまみれた説明はきっと奈美の影響だろうと推測できる。

 エアロードといい、シャドウバイヤといい世俗慣れが速すぎるだろうに。


「ふうん」

「なんだ? 私の説明が気になるのか?」

「いや……多分考えすぎだからいい。俺の思い違いだと思うし」


 この話に聖竜が関わっているのではと思うのは俺だけだろうか?

 なんとなくあの聖竜なら話に関わっていそうな気がするし、何とかしそうな気がするのだが。


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