北の近郊都市 10
アクア達が何処に向うのかという疑問に対して俺は敢えて聞こうとは思わないので、黙ってついて行くと北区中央駅までやって来たのだが、まあ普通に駅で電車に乗るという事だけは分かったのだが、と言う事は北区から移動するのだろうか?
それとも北区中央駅から離れた場所に移動するのか、そんな事を想像しながら駅の中へと入って行くと、区画間列車のホームまで移動したことでどうやら他の区へと移動する事だけは確定した。
南区に行くのか、東区か、それとも西区なのか…何処だろう。
西区は再開発地区だったはずだから結構慌ただしいはずだしな…東区に遊ぶところがあったとは思えないが、あそこは経済や政治の中心というイメージで遊びというのは思いつかない。
ではやはり南区かと思って居ると時計回りで降りたのは東区だった。
遊ぶというイメージを持てない場所で降りることになって少しばかり疑問を抱いてしまったが、ジュリ達は得に迷うこと無く駅から更にバスで新市街地の中を移動して行く。
バスはそのまま都市高速へと乗り、一気に端っこの方へと向って移動して行くが、北区から出発して三十分で俺達は東区新市街地の南区側へと一気に近付いていった。
「この辺に遊ぶ所なんて在った? 俺まるで心当たり無いんだけど…」
「あるよ。ソラ君あまりこの辺り来ないから知らないだろうけど。休憩するのもじつは丁度良い場所だからね。まあ期待してて。前にアクアやブライトやアカシに見せたことがあるの。その時にこの三人は「行きたい」って言っていたから一回連れて行こうとは思って居たの」
「? でもこれ南区側じゃないのか? 南区から行けば早いんじゃ無いのか?」
「南区から行くと道路の都合上バスも地下鉄も遠回りになるから東区から向った方が早いんだよね」
「その口ぶりですとジュリは行ったことあるようですね」
「はい。じつは学校の友達と一緒に遊びに行ったことがあるんで。本当はソラ君達と行きたかったけど、ソラ君達にその日は断られてしまったから友達と行ったんです」
まるで心当たりの無い話だったが、よく考えたら用事があるからと断ることは良くある事なので、その内の一つだろうとは思った。
ジュリと予定がかみ合わないという事は意外と多く、俺が学校側の用事や師匠達からの頼み事やらで断るし、ジュリはジュリで委員会やバイトなどで断ることが多い。
ジュリのバイト先については俺は詳しくは聞いていない。
本人が凄い嫌がるので敢えて聞かないようにしている。
まあジュリが嫌がるのなら俺は敢えてツッコんでは聞かないし、嫌われたいとも思わないのだ。
因みにレクターも知らないらしいし、海も知らないらしいのだが、女友達は知っていると聞いているから多少は差別を感じる。
友達からある程度聞いた話だと喫茶店みたいな感じの飲食店らしいことは聞いているが、学校周りやジュリの家周りの飲食店は一通り回ったのであの辺りでは無い事ぐらいしか知らない。
そこまで考えた所で俺はある程度想像出来て樹里に尋ねた。
「まさかとは思うがジュリのバイト先がそことか?」
「え? ソラ君私のバイト先知っているの? 私話してないのに?」
「何処かまでは知らない。ジュリの友達が飲食店のバイトをしているとは聞いた。でもジュリの家の周りや学校周りで見たこと無いしとは思った。まあ、ジュリの性格上近くはしないとは思うよ。恥ずかしがり屋だから」
「もう…やっぱり多少調べようとは思ったんだ。でもね。見つけたのは偶然だったの。紹介してくれたのは…」
「まさか…ガーランドさん!?」
「レクターは黙りなさい。何を考えたらあの人がジュリにそんな場所を紹介するのですか? て言うかあの人そんな時間あるのですか?」
「無いな。だから俺は無いとは思うが、良い線は行っている気がするから多分サクトさん辺りか?」
「うん。サクトさんが学校に授業でやって来た時に教えてくれてそのままそこで少し奢ってくれたの。その時にお店が凄い雰囲気の良いお店で、結構好きなんだ」
サクトさんはオシャレだし基本行くお店も拘りがあるとは父さんから聞いているが、それなら結構大人しめのお店じゃ無かろうか。
そう思っていると案の定森のような木々が生い茂っている場所へと入っていくと、エアロードとシャドウバイヤは物凄く「面白くない」みたいな顔になり始めた。
多分飲食店だからこいつらが面白くないと言うことは無いだろう。
そう思って居ると開けた場所へと辿り着いた。
ビルディングに囲まれた場所に森があって、その森の中に開けた場所があるとは…誰が考えたんだよ。
「此所は綺麗な小物とか売っているお店とか多くて綺麗なんだ。それ以外にも遊ぶところがあったり結構人も居るんだよ」
「サクトさんが好きそうな場所にしては意外と賑わっているな。もう少し大人しめな場所を選んでいるのかと思ったよ」
「でも。サクトさん休暇とかは家族で良く来るらしいよ。さっきも言ったけどこの辺は遊ぶところもあるし、買い物も楽しめるから」
「良いではありませんか。私達女子陣はまず買い物ですね」
ゾッとする男性陣に対し女性陣はキャッキャッと楽しそうに「何処に行きます?」と楽しそうに話し始め、アクアは「綺麗な服みたい」と言い出した。
これで男性陣は荷物持ちか暇つぶしが決定した瞬間である。
テンションががた落ちする男性陣の気持ちをイマイチ理解出来ない竜達、首を傾げるのだがこればかりは人間だからこその気持ちだと思っている。
バスは広場の出入り口で止まり俺達は一気に降りていくのだが、入り口にあるアーチから見える大きさを遠目に見た感じでは広さは東京ドーム二個分はありそうな気がする。
お店は円状に広がる3階建ての木造に見える建物の中にあり、上への上り下りは階段しか無い。
「木造なのか? な分けないよな?」
「うん。でも基本は木造で基礎構造だけは鉄筋などで作られているはず。結構立派な建物だよ。アウトドア関係のお店とか在るよ」
「いや…俺アウトドア関係のお店に興味とか無いしな。まあジュリ達が買い物を終えるまで適当に見て回るから」
ジュリ達は「じゃあ行きましょうか」と言いながらお店の方へと消えていくが、ここから長そうな気がする。
しかし、その辺のベンチに座って暇を潰すのも少しばかり時間が勿体ない気がするが、遊ぶ気力はそこまであるわけじゃ無い。
「ブライトとアカシは何処行きたい?」
「僕あのお店行ってみたい! あの小さい何かが見えるお店!」
アカシは「僕も!」と言うので行ってみることにしたが、エアロードとシャドウバイヤは「お腹空いた」と言ってくるが、北の近郊都市では役に立っている訳では無いのだから昼食までは我慢してくれと言っておいた。
お店の前までやって来たらそこには小物が綺麗に並んでいるお店。
マグカップやお皿はともかく小さい人形なども置かれている。
ブライトがこんな場所を行きたいとは思いもしなかったが、ブライトとアカシは楽しそうにお店の中を飛んで行くが、レクターは入った一秒で暇そうにしていたので「外いろ」と命令しておいた。
どうせ「暇」とか言い出すだろうとは思って居たけど、やはり暇だったのか。
「母さんが好きそうな場所ですね…父さんと一緒に来て欲しいかも」
「今回の事件が終わったら誘ってみたらどうだ? 軽食のお店もあるし一日消費できるんじゃ無いか?」
「そうですね。父さんが好きそうなお店があれば良いんですけど…」
「あの画材屋さんとか良いんじゃ無いか? あの人絵を描くのが趣味だし、この辺りは絵を描くのに良い場所だと思うけど?」




