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南の近郊都市 5

 まあこれで動けるメンツが揃ったと言うこともあり、俺達はとにかく早く動こうということになり、急いで南の近郊都市にある目的地一帯に辿り着いた。

 古い道が路地裏に残っている旧市街地の名残が残る場所、建物が相も変わらず低めに作られているのだが、下が古い砂利と砂の道になっている所に古さが出ている。

 と言うか現代においてまさかこんな道がまだ残っているのかと普通に驚いてしまったのだが、問題なのはこの辺りは全部の建物が廃墟のままという事である。

 何か演劇でも催されていたような建物、学校の跡地など本当に建っている建物全てが廃墟なのだが、一帯何故この辺りだけ廃墟なのだろうか。

 そう思ってジュリに聞いてみた。


「ジュリ。どうしてこの辺りは建物が作られていないんだ? 他は普通に整備や再開発が進んでいるのに、この辺りはどうして?」

「私も同じ意見です。帝国の財政を考えればこの程度普通に金を出せそうなモノですけど…何せアメリカなどの復興に金を使う余裕があるくらいですし」

「まあ。基本ガイノス帝国は借金がありませんからね。むしろ周辺の国や自治州から金がたくさん入ってくるから潤っていますし、今でも結構金を払って未だに借金にならないと聞きます。でも…此所は駄目なんです」

「? どういう意味ですか? 僕はこの目の前にある建物達をこの場所事隔離している理由が分かりません」

「俺は知ってるよ。と言うか根っからの帝国民なら誰でも知っていることだもん。此所は呪われているって…」


 俺は師匠復活を漏らした馬鹿野郎からそんな事を言われてもあまり信用は出来ないが、ここで争っている場合じゃ無いので全員で黙っていることにした。

 確認の為にジュリの方を見るとジュリも俯きながら「うん」と言い出した。

 これはホラー的な話があると想い敢えてジュリに話を詳しく聞こうと決めた。


「何があったんだ? この場所で…」

「この辺りは旧市街地だった時の名残の街で、まだ街が出来たばかりの頃此所は南の近郊都市でも最も賑わっていたそうです。再開発が行なわれたのもあくまでもここ五十年ほどの出来事なんですけど…その際ここは再開発が行なわれようとする度に大きな事故で死者をだしていた場所なんです」

「事故ですか? まあ…あの大きめのクレーン車っぽいモノが倒れているのを見て何となくそうじゃないかって思いましたけど…」

「でも一回とか二回とかじゃ無くて十回とかそういうレベルなんだよね。その内この辺りでは死者の声が聞えてきたって話し」

「でもさ。何も起きないんならこの辺りで死者が出るとは…? これは?」


 俺は会話の途中で足下に何かを発見してしまったのでその場でしゃがみ込みジッと見つめてみる。

 ただの砂利と砂の道だと思っていたけど、何か跡のような痕跡である古く腐った木の杭のようなものの先端が見えた。

 ここは今の建物より前に集落でもあったのだろうか?


「此所は南の近郊都市が出来る前に古い集落があったらしいんだけど、南の近郊都市開発計画の際に潰されちゃったんだよね。その時、集落に住んでいた人達は最優先で最も好待遇の土地が与えられたんだけど。その中に今の集落を壊すことに最後まで反対した人間が居たらしいの…」

「まさかとは思いますけど、その人が最後は帝国政府に立ち向かって死んだとか? いや…それなら何処かで俺の耳に入ってきてもおかしくは無いな…なら何も起きずに死んだ?」「分からないだよ。忽然消えたんだ…突然…開発が起きているときは何も起きなかったんだけどさ…再開発が起きてから問題が起きるようになって、その時にその男の事が耳に入ってくるようになったの」

「でもさ…それおかしくないか?」

「ええ。私も思います。それ開発が行なわれたときに動きがあるのならともかく何故再開発が起きてから…そもそも何故最後まで抵抗しようとしていたのに忽然消えたのか…」

「ですよね? 僕だったら最後まで戦おうと何か策を練ると思います。その人がどうなったのかどうか…そっちが気になります」

「でも、分からないんだよね…まあ百年以上前の話しだし…詳しく知る人ってもう居ないんだよね…知っていたら今頃詳しく聞かされているだろうしね。当時の事件調書みたいな内容もあるけど、それさほど詳細が調べられているわけじゃ無いんだよ。当時はとにかく都市移動がとにかく最重要項目でもあったからさ」

「それもそうでしょうけど…普通調べません?」

「それが、当時は集落の人達も「速く移住したい」やら「あんな奴知らない」やら散々だったらしく…結構不人気だそうですよ。結構ヤジとか当時はあったそうです」

「それ…普通に嫌だな…どんな奴だよ…まあそんな場所ならもしかしたら移住計画の際に建物の名残なんかが反応したパターンかもしれないし…」


 俺は「とりあえず探そう」と一歩足を踏み込んだ瞬間俺の竜達の旅団が反応、急遽空間をずらし周囲一帯の街並が纏めて異空間と化してしまう。

 いや…あまりにも突然起きた事で全員が呆けている姿から唖然とする姿へと早変わり、俺を含めて急な事だったのでマジで反応しきれない。

 なんだろうか…建物の配置はそのままで建物が何か切り替わるような感じでも無く、あくまでも空間がズレて真似ているだけという感じ。

 だがとりあえず視界にはエネルギーが存在しない。


「え? 何々この場所一帯がそうだって事? 建物とか広場とかじゃ無く? 範囲広くない?」

「レクターの言葉に同意したく在りませんが…こんなに広いものですか? 西の近郊都市の時は此所までの規模じゃ…」

「無かったよ。あの時はビルディングとはいえ一つの建物ぐらいの規模だったけど…今回は高さが無い分周囲一帯が? でもなんでこの辺り…」

「はっ!? まさか…やっぱりその開発に反対した男が死んでなお…」

「ホラーっぽくするの止めてください。逃げてな人は苦手なんですから…どうしてレクターはホラーっぽくするんですか?」

「下らないと言いたいが…此所は少年の竜として幾らか助言をしよう。この空間で起きている不幸は残念な事にその男が原因じゃ無い。それはお前達が話をしていた時に出ていたが、出来事が起きている際のズレでも分かるだろう? 問題なのは旧市街地から新たな市街地へと再開発が起きている最中で起きた出来事だという事だ。その再開発が起きているときは恐らく旧市街地に住んでいた旧集落の人達も影響を受けたんじゃ無いか?」


 オールバーが俺達の会話に入ってきた。

 エアロードとシャドウバイヤは理解する気が無いので先ほどから黙っているが、オールバーは何かが分かったらしい。


「うん。どうですね。まだ結構な人達がご存命だったはずです。でも、だからと言って新市街地に住む場所が無かったとかは聞かないですよ…」

「そうだろう。だが一時的に追い出されることになるのは間違いが無い。この場所を気に入っている人間が居たとして、そんな人間が不満を抱いて死んだのなら此所に残留思念のような形で、恨みや怒りが怨念として場に溶け込むと言う事は魂の証明上あり得ることさ。魂があるのなら怨念もまたある」

「それは分かるが…それは此所での再開発中かその前に死んだ事が前提だよな?」

「その前提が起きたとしたら? それが再開発に不都合だからという理由で揉み潰されたとしたら? それが…その旧集落を護ろうとした男の祖先だったら? 男が死んだ後、まるで死んだ男の怨念までもが場に溶け込み「この場に手を加えようとする人達を攻撃する」という怨念としての法則へと結びついてしまったとしたら?」


 オールバーは俺達の方を見ながら「どう思う?」と聞いてきた。


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