表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1047/1088

西の近郊都市 10

 奥さんが泣き止むのを一旦隣で待っている間流石にエアロードとシャドウバイヤも大人しくしていた。

 俺は泣き止んだ状態で詳細な内容を説明、その際先ほど手に入れた情報も先に話させて貰ったが、奥さんはそんな俺に「ソラ君はソラ君のやるべき事をして。私だったら大丈夫だから」と言って俺を送り出してくれた。

 俺は最低限でも奥さんを送り届ける必要があるとキチンと説明、一旦美術館を出て外へと向うと先ほど俺達が居たベンチで暇そうにオールバーを抱えて座っている海を発見した。

 海は最初俺を発見することは出来なかったが、ある程度近付いた所で俺と師匠の奥さんを発見して立ち上がるのだが、その際うたた寝していたオールバーを落してしまう。

 オールバーの「痛っ!?」という小さい悲鳴と共に起き上がり海の方を睨み「何だ!?」と叫んだ。

 海はオールバーを抱きかかえて「ご免」と一言謝ってから師匠の奥さんである自身の母親の元へと向って駆けていく。


「母さん! てっきり別荘に居るのかと思ったけど…そうだ! 父さんの話」

「もう聞いたわ。ありがとね。海も…色んな人に助けられているわね…ううん。何時だって自分のことより他人のことばかり考えている人だったからこそなのかしら」

「俺はそう思いますよ。最後の時だって自分の為では無く他人の為に戦っていたから。そんな人だからこそあの人は誰かに支えられるんだと思う。俺はそんな人に生きていて欲しいんだ。そうだ海。実は…」


 俺は海に師匠が復活する際に必要なエネルギーの話をした。

 そのエネルギーを儀式の日、正確には二日後の朝までに残り3カ所で見つけなくてはいけないと言うこと。

 正確には北の近郊都市の場所は大凡分かるので、問題は東と南の近郊都市なのだが、こちらについてはあまり言ったことが無い。

 実際に行ってみないことには解決しようが無いが、一番の問題はそのエネルギーの所に不死者達の魂の名残と言っても良い存在が居座っていることだ。

 名残ではあるが、エネルギーを手に入れて生き返ろうと試みているのだろう。

 それ故に生きようという意志が非常に強く、今一度俺はジェイドが抱えていたものの大きさと恐ろしさに驚いているのだ。

 あれは普通にヤバい。

 あんな存在を何万とか超えるような規模で抱えていたのだろうか?


「この後俺は南の近郊都市へと向おうと思う。ついでにではあるがレクターを南の近郊都市に呼び出そうとおもうんだが?」

「僕もいきます。戦いだったら役に立てます」

「ならジュリとケビンに一旦奥さんを帝都の帝城まで運んで貰おう。その間俺と海は飛空挺でも使って先に南の近郊都市に向おう。ジュリとケビンはそのまま明日の夜明けに南の近郊都市で合流。出来ればその時にレクターも連れてくる」

「良いですよ。じゃあ二人の買い物が終わり次第任せて僕達は向いましょう」

「え? まだ終わってないの? てっきり終わってその辺を散歩でもしているのかと…」

「終わっていませんよ。さっきから何度か店内を見て回っているのがここからでも確認できますし…ほら」


 海が指さす方向に確かにジュリとケビンが同じ店内をずっとウロウロしている姿を発見してしまった。

 マジであの二人はずっと歩き回っているのか?

 女性の買い物は長いと聞くが…結構長いぞ。


「まだ掛かるのかね? だったら…」

「買い食いだな! 間違いない!」

「エアロードは黙れ。なんでお前は発言する度に食うことばかり発言するんだ? たまには知的なことを…無理か」

「無理だな。エアロードに取っては知的という事ほど難しい事は無いだろう」

「だな。シャドウバイヤの言うとおりだ。この竜一の大馬鹿者が知的とか…(笑)だろうに」

「失敬だな! 馬鹿ではあるがそこまでじゃない!」

「馬鹿である事を肯定している時点で否定できないんだって分かってくれ。頼むから…賢くなれとは言わないからその程度は理解をしてくれ」


 こいつマジの馬鹿なのでその程度も理解が出来ないんだよな。

 師匠の奥さんはクスクスと笑っており、先ほどまでの暗めの雰囲気が消えていくのだけは感謝しても良い。

 だがただ待つというのも俺は流石に出来そうも無いので何処か適当な所へと出掛けるか、そう思っていると両手一杯に買い物袋を持った二人がお店から出てきた。

 同時にエアロードとシャドウバイヤが咄嗟に舌打ちをするが、本当に自分の都合だけで生きているな…こいつら。

 俺は帰ってきた二人に先ほど海にした説明と同じ事を説明、二人は一旦了承してそのまま車に乗って帰って行った。

 この調子なら夕方には到着するだろうし、その間に俺達は早めに南の近郊都市へと向うべきだろう。

 こんな事ならバイクでも持ってくるんだったなと後悔した。


 とりあえず空港へと急ごうと二人で近くのバス停から行き方を調べて居ると、今現在の場所からは直通の便が出ていないことに気がついたが、海は「だったら大きな駅に行ったらあるんじゃ?」と提案してくれる。

 それしか無いと俺はまずは駅前へと向ってバスで移動し、大きな駅からシャトルバスが出ていることを知って俺達は今度はシャトルバスに乗り込む。


「西の近郊都市はあっという間だったな…まあ観光に来るような場所じゃ無いしな…得に帝都民が」

「そうなんですか? でも別荘地なんですよね?」

「だからこそだよ。金持ちは良く来るけど、だからと言って娯楽で充実しているわけでも無いし、観光名所が多いわけでも無いからさ。基本来ない場所だし。俺だって来たこと無いし」

「そう言えばそんな事を言っていたな。フム…南の近郊都市はどんな食べ物が…」

「そればっかり。シャドウバイヤもエアロードもそれしか言わないな…他に興味がある出来事は無いのか?」


 まあ無いんだろうけれどさ。


「着いてからのお楽しみだ。空港でチケットを買って出立するが…まあ状況によっては少し時間があるかもな」

「何処かで食べ物を」

「そんな時間までは無いと思う。少しゆっくりする程度の時間しか無い。後お前達はまだ食うのか?」

「まだまだ足りない! ウェルカム! 食べ物!」

「英語で喋るのか、日本語で喋るのかキチンと決めてくれ」


 馬鹿な会話中です。

 わりかしマジで。


「オールバーは大人しいね」

「? いや…馬鹿な会話に入るつもりは無い。何を食べるなんて着けば分かる事だ。先ほどしっかり食べたので正直納得して居る。強いて言うなら少し運動したいな…」

「そこでダンスでも踊れば良いのでは?」


 オールバーはシャドウバイヤが適当に行った発言に対し席の上に立ちそのまま本当に少し踊り始めた。

 シャドウバイヤが小さく「まさか本気にするとは」と漏らすところを見ると冗談でした発言だったようで、まさか本人が本気にするとは全く思って居なかったようだ。

 しかし、このダンス以外と様になっており、普通に見て居られるダンスである。

 何処かで習ったのだろうか?

 そういう今時のダンスとか全く興味が無いので分からないのだが。


「それってこの前見て居たやつ?」

「フム。見て居て中々良いダンスだと思ったのでな。どうだ? 合っているか?」

「うん。取って動画投稿サイトにでも載せたら儲かりそうだね」

「良いぞ。さあ! 撮れ!」


 海はスマフォを取り出して動画を撮り始めある程度撮った所でサイトに載せ始めた。

 まあ…竜がダンスを踊るって普通に見て見たい気がするけどな。

 空港に着いたところで俺は海に「動画はどうなった?」と訪ねると海はそこで確認するようにスマフォの画面を付ける。


「あっ…受けてる。凄い…十万超えてる。と言うかもうじき百万超えそう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ