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無間城の戦い 25

 ボウガンが先に動くと思われていた睨み合いで先に動いたのはギルフォードで、ギルフォードは右側の剣に纏わせている黒い炎でボウガンの胴体を切り裂こうと試みるのだが、ボウガンはそれを見えない壁を作り出して防いで見せた。

 今まで使った事の無い能力だと思いふと「それも奪った能力か?」と訪ねると、ボウガンはギルフォードに「そうだが?」とまるで当たり前のように答えた。

 ボウガンが持っている吸血鬼に成った時に会得した能力、それは『喰奪』でありその名の通り『喰って奪う』が能力である。

 一度にストック出来る能力には事前に限界があり、それを超えた数を手に入れたときは選んで捨てることが出来るのだが、ボウガンは今まで『影を操る能力』しか使ってこなかった。

 別段理由があったわけではないが、そこまで追い込まれているという実感も特になかったのだ。

 ジェイド自身が認めているとおり不死者となって最も強くなり、ジェイドを除いた不死の軍団の中で一番強いのは間違いなくボウガンなのだ。

 伊達に五極の一つに選ばれていないし、だからこそジェイドは下手にボウガンに手を出さなかった。

 見えない壁を迂回するように右側から回り込むギルフォードに合わせる様に接近してくるボウガン、ギルフォードはボウガンに斬りかかろうとするがそれをボウガンは腕を掴んで回避する。


「因みに聞くがジェイドがお前達に調整をしているという噂は本当か?」

「……俺以外はな。俺はしようとしても出来なかったんだ。調整とは言うが、ボスはそれをするに当たって俺だけ出来ないという理由がある。それは…」

「異端の弓か? それがジェイドの妨害をするんだ?」

「ああ。そもそもボスがそれを実行したのはメメントモリが加入してからだからな。その段階では俺は異端の弓に選ばれた後だった」


 ボウガンはギルフォードを蹴っ飛ばそうとするが、ギルフォードはそんな蹴りによる攻撃を空中へ移動する事で回避、ギルフォードはボウガンが掴んでいる腕を弾いて後ろに回り込んだ。

 背中を切りつけようとすると再び見えない壁が邪魔をする。


「因みに見えない壁では無く空気を凝固して固めているだけで、見えない壁を作っているわけじゃ無い。凝固できる時間に限界があるからどうしてもそう何度も防げないが」

「逆を言えば凝固している間はお前も攻撃しても意味が無いわけだ」

「まあな。空気を操っているわけでは無い所がミソだ。正確には無機物や自然現象を圧縮して凝固させるという能力。能力上時間は約ではあるが大体『三十秒』だけだ。攻撃を受けたらもっと低いかもな」


 ボウガンはギルフォードに「だからこんなことが出来る」と言って何かを投げる素振りを見せ、ギルフォードは何かが来るという錯覚に従ってしゃがみ込んで回避する。

 ギルフォードの頭上を何かが通り過ぎていき、ボウガンは「よく回避したな」と褒め称える。

 凝固させると言う事は逆を言えば物として形作ることが出来ると言う事でもある。

 刃を作る事も、鈍器を作る事も出来るこの能力もまた一見するとあまり言い能力とは言い難いが、ボウガン本来の能力を活用した異端の弓なら銃弾作りが出来る。


「例えばお前の黒い炎を凝固させる事は出来ないが、その辺の石っころなら凝固させる事なら余裕出来ると言うわけだ。自分の異能で作った物質なら同じように凝固できる。最初見たときはあまり良い能力では無いなと思ったんだがな。俺の異端の弓との組み合わせが良いと感じてな」

「異能を打ち出すという能力か。異能で作った銃弾なら同じ事が出来るわけだ。空気を凝固させればそれは異能で作った矢、異能を打ち出すという条件をギリギリ満たせる。まあ。今は使えないわけだが?」


 ギルフォードの挑発的な言葉に少しばかりカチンときたのか、ボウガンはギルフォードに向って空気を凝固させた攻撃を容赦無く投げ付ける。

 ギルフォードはそれを左側の剣で全て簡単に弾いてしまう。


「無駄だぞ。そんなただ空気を凝固させるような攻撃じゃ意味が無い」


 ボウガンは「ならこれはどうかな?」と言って自らの体と石との場所を交換し、ギルフォードの真後ろを取るとボウガンは近くの石を凝固させてブーメランのように投げ付ける。

 ギルフォードはそれをしゃがみ込んで回避するのだが、ボウガンの姿が消えて真後ろを取られる。

 しゃがみ込んでいるギルフォードの後ろを確保し、そんなギルフォードに向って空気を凝固させた槍を使って突き刺そうとするが、ギルフォードは虹色に輝く不死鳥で攻撃を防ぐ。

 凝固させて作り出した槍が瞬間でただの空気に戻ってしまうほどの高い熱量、ボウガンは石と場所を交換することで回避した。


「魔法名『不死鳥』発動。アンリミテッド」

「そう言えば使えるんだったな。なら俺も出し惜しみは無しだ。魔法名『喰らい尽くし奪い尽くす者』発動。アンリミテッド」


 ボウガンの背中から黒いモヤのようなモノが出現したかと思えばそれは化け物の頭部のような形へと変貌する。

 それは鋭い牙が生えた口をパクパクさせており、威圧感をヒシヒシと感じさせていた。


「魔法なんだな? 吸血鬼は呪属性だろうに…」


 誰かを呪ってその身を不死者となす吸血鬼は本来『呪属性』であり『魔属性』では無い。

 だが、ボウガンが吸血鬼になってすらも『魔属性』を使って居るという真実だが、それをブライトは「生きていく過程で変質した」と考えたが、ギルフォードはそうは思えなかった。

 多分最初っからボウガンは魔属性を使い熟していたのだろう。

 ギルフォードが出した結論は『ボウガンは生まれつき魔法を持っており、それが吸血鬼に成った時に別名に変質した。だから属性が変質したわけじゃ無い』だった。

 だからこそギルフォードはそこに狙いを定めた。

当初異端の弓がボウガンの言うことを聞いていたのがとある時期を境に言うことを聞かなくなった。

ボウガンの魔法が呪法の影響を強く受けたからであり、それは精神的な面が強く影響している。

本来の魔法が外部の影響で強引に変質すると言う事はある事じゃ無いらしく、元々の魔法は確実に抵抗する。


 ギルフォードはボウガンの魔法を表面化させる事で呪いを見つけ出そうと考えたのだ。

 ボウガンの中にある生きる希望を失わさせるほど強力な呪い、始祖の吸血鬼がボウガンを吸血鬼にした時に刻みつけた呪い。

 自分自身へと服従させる呪いを見つけ出そうとして発言させたギルフォード、ボウガンの後ろから現れたそれにまるで取り憑くように引っ付いている何かを見つけた。

 コウモリに見えるその羽の生えた生き物は魔法に取り憑いており、ギルフォードは切り離すべき存在を発見した。

 問題はギルフォードはボウガンの攻撃を捌いてそれに攻撃を仕掛けないといけないと言うことである。


 ボウガンはギルフォード目掛けて口を大きく開けた化け物を向わせるが、ギルフォードは早速チャンスがやって来たかと思ったが、その取り憑いている生き物は直ぐに隠れてしまった。

 どうやら簡単には隙を見せる気は無いようで、ギルフォードは攻撃を右回りに移動して回避し、その状態で後ろへと回り込もうとする。

 ボウガンはそれを妨害するように殴りつけようとするが、そんなボウガンの腕が虹色の炎で燃え始め苦しみ始める。

 そんな時そのコウモリのような生き物が大きな口を開けながら騒ぎだしギルフォードに一瞬だけだが姿を現した。

 ギルフォードは覚悟を決めて虹色の炎による強力な突き攻撃を繰り出した。

 化け物に取り憑いている生き物は攻撃が来たと感じて逃げようとするが、虹色の炎による攻撃が一瞬早く突き刺さった。


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