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無間城の戦い 11

 カールは何処かも分からない場所で放置されてしまい、同時に感じるのは「自分は果たして閣下に愛されているのだろうか? 自分は閣下に必要にされているのだろうか?」という疑問である。

 西暦世界と呼ばれていた場所の何処かも分からない河川敷で放置され、近くでは子供達などが遊んでいるようだが、それを狼の様な生き物が狙っているのを別段助けようという気持ちは全くわいてこない。

 生き死になんてカールにとっては必要性を全く感じない事であり、襲われるなら襲われるでカール自身の今に全く影響を当てないのだから。

 そう思って放置していると腹を空かせているのか、狼の様な生き物は子供達へと向って襲い掛っていき、子供達は襲われる目前で気がついてしまった。

 そうしているとジェイドが場に割って入り剣で狼たちを切り刻んでしまったのだが、そんな姿を見てカールは惚れ直した。


「流石です…閣下=素敵」


 勝手に惚れ込むカールを発見したジェイド、そんなジェイドに対してアピールするカールだがジェイドは無視、それを見て落ち込むカールを余所にジェイドは子供達を集落まで送り届けた。

 するとジェイドとすれ違う形で現れたのはボロボロの服を着ている男であったが、カールは顔を逢わせただけで良く分かる。

 カール自身と同じ匂いを漂わせる存在、男もカールを発見して顔を渋るがあっちは得に気に掛ける事は無かったが、カールに命令されている「不死者が居れば殺せ」という命令が無意識でも男へと襲い掛らせた。

 襲われたことに気がついたとき男事ボウガンは咄嗟にしゃがみ込んで回避したのだった。

 ボウガンからすれば襲われる筋合いが全く存在しないし、ましてや何故今この状況で襲われるのだろうかと疑問符を抱かせるだけだったのだが、この状況で考える暇がボウガンにあるわけがない。

 こめかみを狙った回し蹴りを右手で受止めてから彼女の右足を掴んで投げ捨てる。

 しかし、カールは咄嗟に地面に両手の手を付けて指先に力を込めて制止、そのままボウガンの顔に跳び蹴りを再びお見舞いした。

 顔にめり込むカールの足はボウガンの顔を胴体から切り離して吹っ飛ばすが、その瞬間にはボウガンの胴体から顔が復活してしまう。


「やはり不死者…殺す=絶対!」

「意味が分からん奴だな! 何故俺が貴様に殺されないといけないんだ!?」


 襲われる理由が全く想像出来るわけも無いボウガンに対し、一切の説明なしに突っ込んでいくカール。

 今度は右手に光を集めて切断能力を向上させた手刀を横薙ぎに決めようとし、ボウガンは右拳をカールへと叩き込もうとしたところでジェイドが間に割って入った。


「良し。ストップだな。その辺りで良いだろうカール。これは説明をしなかった私が悪かったな。この男は私の部下になったボウガンだ。ボウガン。こっちは私の部下のカールだ。宜しくしてやってくれ」

「無理だな。こんな風にいきなり襲ってくるような奴とこれから一緒に行動できる気がしない」

「私もご免です=閣下。不死者の部下は私一人で十分=この男は不要」

「そうか…だが決定事項だ。拒否は受け付けんぞ」


 ジェイドが勝手に歩き出すのを二人は見ていることしか出来なかった。

 結果始った三人の旅だったが、ジェイドからすれば決して飽きることの無い旅だったことは間違いが無い。

 何かあれば両者ともに喧嘩をし、それを楽しそうに見ているジェイドというのがすっかりおなじみになっていたのは間違いが無い。

 犬猿の仲なんて言い方をすれば仲が良いようにも聞えるが、実際は本当に両者は嫌い逢っていたのかも知れないとジェイドは思う。


 そもそもカールはジェイドに対して絶対服従を決め込んでいるし、ボウガンは自由にかつジェイドに対して距離を開けているような奴だったからだ。

 ジェイドにとってカール以上に信頼出来るのはボウガンだったのだが、カールはそれがどうしても気に入らなかったと無間城でならそう思える。

 そんな三人で起きた戦いもあっという間に終結したのだった。

 ボウガンという吸血鬼にとっての裏切り者がいれば、簡単に吸血鬼達を封印する事は可能だったのだから当然である。


「閣下封印が終わりましたが…どうしますか=疑問」

「そうだな…異世界を渡って侵略でもしてみるか…」

「そんな簡単そうに言うな。アンタなら出来そうな気がするが」

「出来るさ。お前達が居れば簡単にこなせる気がするが、油断は出来ん。何せ異世界には私達の常識が通用しない奴らばかりだ。侵略して術式をかける。これの繰り返しだ」

「ならこの世界はしないのか? この西暦世界と皇光歴世界は」

「しない。というよりは出来ない。盟約でな。俺はウルベクト家の一族が住んでいるこの二つの世界はギリギリまで手を出せないんだ」

「そんな約束破ってしまえば=駄目なのですか?」

「駄目だ。約束事は約束事だ。そこを破れば我々は文字通りただの化け物に成り下がるぞ。それに私が私の親友とした盟約だ。どのみち皇光歴世界は竜の力が強すぎて術式をかけられない」

「ではどうするのです=疑問」

「それはいずれ追々な。それ以外の世界は楽に墜とせるはずだ。時間さえかければな…とりあえずお前達には二手に分かれて侵略をしてもらう。方法は任せよう。期間も設けない。その間に私は探し物をしておくよ」

「捜し物? それはこの二つの世界を侵略するのに必要な奴か?」

「ああ。どうにも始祖の吸血鬼が何処かに儀式場を隠しているようなんだがな…簡単には見つからない。お前達と居ると捗らんしな。お前達は侵略でもしていろ」


 ボウガンは「人の所為みたいに」と思ったが反論しても無意味だと感じて旅立つことにした。

 そして、旅立つ直前に聖竜と出会ったのだ。

 今思えばジェイドが無間城探しに躍起になっている間の出来事で、且つ無間城という存在が聖竜とボウガンの接触を分かりにくくさせたのだろう。

 カールが先に旅立った所を見計らったかのように聖竜は現われ、ボウガンは聖竜の計画に乗ることにしたのだった。

 そこでジェイドが無間城探しをしている事にも気がついた。

 そして聖竜から無間城を出現させる儀式場がボウガンの故郷の国にある事も、今は出現させても意味が無いことも理解した。

 それに相応しい時期が来ればジェイドは無理矢理でも復活させるだろうが、その時であれば聖竜側も手を打つことが出来る。


「だが…今のうちに復活を阻止した方が良いのでは無いか?」

「いえ。無間城はいずれ破壊しなくてはいけない物。それもいずれ生まれる異能殺しとその仲間の役目。彼等なら熟すことが出来るはず。あれはこの世に存在してはいけない物。その本質さえ壊してしまえば良いのです」

「ジェイドは今その儀式場探しをしているのか」

「ええ。そして気がつくでしょう。その儀式場まで行けば『今は復活させることが出来ない』というシンプルな答えに。だからジェイドは今は復活させないことを決めるはず。条件が整えばいずれは…」

「復活させる…と。だが…本当にその伝説の異能殺しは現れるのか?」

「現れます。それは絶対なのです。貴方の協力さえあれば。その為にウルベクト家に二つ世界に二つの女性との間に子供を残させたのですから。彼の子供達なら必ず乗り越える事が出来るはずです。その時はジェイドが「無間城を復活させる準備に入る」と言い出すはず。その時こそもう一度二つの世界を繋げるときです」

「それまではジェイドの目的通りに動けと?」

「ええ。お願いします。その先に貴方の願いが必ず叶います。人も戻るという願いが…」


 その言葉を頼りに生きてきたことだけは間違いが無い。


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