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【書籍化企画進行中】異世界最強兄は弟に甘すぎる~無愛想兄と天使な弟の英雄譚~  作者: 北崎七瀬


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クリス、掛けられた呪いの術者を知る

最近PCの挙動が不安定なため小説のアップが上手くできてません。

更新が止まったらPCが壊れたと思って下さい……。

 グラドニの説明を聞いたクリスは、目を丸くした。

 それはそうだろう、だって自分に掛かっている呪いが実は、『ルガルを殺す』ことを目的とした呪いだったと言うのだ。

 その『ルガル憎し』からにじみ出た魔族への悪感情が、さらに村を魔族に焼かれたことで、クリスの中で増幅させられていたと。


 だが、にわかには信じがたい。なぜならその呪いを受けたのは、あの場所で間違いないからだ。


「……本当にその呪いは、ルガルを殺させるためのものですか? 私がその呪いを受けたのはおそらくずっと昔、リインデルの書庫でいずれかの魔界の本を読んでいた時です」


 そう、つまりルガルと祖父、ひいてはリインデルが良好な関係を築いていた頃のことだ。そんなリインデルの書庫に、ルガルへの殺意の呪いが掛かった本を置いておくとは思えない。そもそもピンポイントすぎて、何の実用性も感じられないのだが。


 しかしそれに対し、グラドニは軽く肩を竦めた。


「残念じゃが、間違いではない。我ら古竜には『神竜の瞳』という能力があってな。うぬらに付加された加護や呪い、魔法効果など様々なものが目に見えるのじゃ。……あまりにも色々見えすぎるために嫌気がさして、他の古竜は俗世を離れてしまったわけじゃが、まあそれは置いておいて」


 クリスたちに掛かっている加護などが見える理由をそう語ったグラドニは、その呪いがリインデルにあった理由を推察する。


「おそらくその呪いの掛かった書は偶然そこにあったわけではなく、わざわざリインデルを狙い、外部の者によって置かれたものじゃ」

「外部の者? それはつまり、リインデルの住民以外の誰かが持ち込んだものだと?」

「うむ。リインデルにルガルとのつながりがあると知っておった者の仕業じゃ」

「リインデルが魔界と交信していることを知っていた外部の者……となると、王族くらいのはずですが。昔から魔界の者との接点が多い村とはいえ、長期に渡って交信していたのはお爺さまの代だけですから、それほど知られていませんし」


 リインデルの付近は、瘴気が濃いために魔界の者にとって居心地がいいらしい。そのため、数十年前に最終戦争について調査に来たルガルが村の付近で休んでいたところ、たまたま祖父と出会い、話した研究内容で意気投合したことで交流が始まったという。


 だから一代限りのことであるし、こんなことをこの世界で知っているのは、祖父が報告を上げた王族だけのはずなのだ。クリスですら、祖父の交信の相手がルガルだと知ったのはつい最近なのだし、他に知っている者がいるとは思えない。


「となると呪いの掛かった書を置いたのは、前王か前々王の命を受けた者の仕業……? でもその後に村を焼き払ったら、この呪いを掛けた意味がない気がするのですが」


 クリスがこの呪いを受けたのはおそらく偶々だ。だから別の誰かがこの呪いを受けていたとしたら、ルガルと相対する前に消えていたはず。なぜそんな無駄なことを。

 それを怪訝に思い首を傾げるクリスに、グラドニが別の可能性を提示した。


「その呪いの書を置いたのは別に、人間とは限らんぞ」

「人間とは限らない……?」

「よく考えよ。ルガルに殺意を抱き、これだけ強烈な呪いの書を組み上げる術式知識を持ち、魔族では為し得ぬ人間特有の大番狂わせを期待して、彼奴を倒させようという手合いの者じゃ」

「ん、んん? あー……」


 グラドニの解説に、思い当たる魔族が一人。

 いや、今は半魔か。まさかここに彼が係わっているとは。

 その姿を脳裏に思い浮かべたクリスはおもむろに眉間を押さえ、ため息を吐いた。


 そういえば彼は当時からルガルと祖父の通信を傍受して、その交流を知っていた。おそらくいつかルガルがリインデルを直接訪れた時に、その呪いが発動することを狙っていたのだろう。

 その後にリインデルを焼き討ちされたのは、彼にとっても予想外だったに違いない。おそらくそれも、彼が魔研に悪感情を抱く理由の一つになっていたのではなかろうか。


 ともあれ、クリスはここでようやく得心がいった。


「……なるほど。この呪いを掛けたのは、ジ……」


 そこまで言いかけて、はたと傍らにユウトがいることを思い出して口を閉ざす。さっきクリスの様子を心配して来たユウトは、そのまま隣で話を聞いていたのだ。今は言葉を途中で止めたクリスを、不思議そうに見上げている。

 やばい、危なかった。


 グラドニも軽く頷いただけでその名を口にはしない。おそらく彼もユウトがあの男に対して良いイメージしか持っていないことを知っていて、明言を避けたのだ。やたら婉曲的に話すと思ったらそういうことか。


 クリスが呪いを掛けられた件の書をリインデルに仕込んだのは、ジードなのだ。


 他の魔族にまで派生する殺意の強さを込めながら、魔界の書に慣れているクリスですら気付かなかった、綿密に組まれた呪い。確かにあの男でなければ構築できまい。


 以前リインデルの書庫で蔵書をチェックしていた時に、自分に掛かっている呪いの原因になった書物を探してみたけれど、それが見付からなかった理由も分かった。

 あの時、書庫の中にはジードも一緒にいたのだ。おそらくその本は彼によってすでに証拠隠滅のために回収されているに違いない。


 まあ彼も、まさかクリスにその呪いが掛かっているとは知りもしなかっただろうけれど。


「……しかし、私まで知らないうちに彼の被害にあっていたとは思いも寄らなかったなあ……」

「うぬの呪いの解除には呪いの術式が書いてある書自体を燃やすか、掛けた本人に術を解いてもらうか、術者を殺すよりほかないが……可能そうか?」

「まあなるべく穏便に、どうにかします」


 ジードなら呪いを解かずにそのままクリスをルガルと戦わせたいと思うかもしれないが、間にユウトを挟めばどうとでもなる。

 明らかになった悪巧みに全く困ったひとだと思いつつも、まあ仕掛けたのは改心前のことだからと割り切って。

 とりあえず身近にこの呪いを解く鍵があったと分かっただけでも良かったと、クリスは苦笑した。


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