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【書籍化企画進行中】異世界最強兄は弟に甘すぎる~無愛想兄と天使な弟の英雄譚~  作者: 北崎七瀬


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弟、久しぶりにネイに会う

 その晩、クリスはユウトの部屋に泊まった。

 必然的に、部屋を移動してレオのベッドで寝ることになった弟は、問答無用で兄の抱き枕になる。

 精神的な疲れを癒すには、やはりこれが効果覿面だ。レオは翌朝、爽快な気分で目が覚めた。


「ユウト、お前はエルドワと魔法学校に行って、マルセンに転移魔石を作ってもらってきてくれ。俺とクリスはその間に兄貴のところに行って、こいつのランクSSS用のカードを依頼してくる。色々話もあるしな」

「うん、分かった。ホントはライネル兄様にも会いたかったけど……」

「王都にはどうせ何度も戻ってくる羽目になる。兄貴に会おうと思えば後からいくらでも会えるだろ」

「ん。今回は我慢する」


 残念がりつつも聞き分けのいいユウトの頭を宥めるように撫でてから、レオはクリスを振り返る。


「そういや郊外にあるって言ってた、あんたのパーティで使ってた家ってのは、街の中心からだいぶ遠いのか? ついでだから一度見ておきたいが」

「街中を走る乗合馬車で10分程度かな。歩きだと結構遠いかも。次にラダから王都に戻った時に、アシュレイくんの馬車に乗ったまま行ってみるのがいいかもね」

「……そうだな。じゃあ、今回は見送るか」


 正直今日は王宮で話し合うべき事が多く、離れた場所まで足を伸ばすのは難しい。遠いならクリスの言うように、馬車がある時に行く方がいいだろう。


「ところで、ユウトくんのことは魔法学校まで送っていかなくていいの?」

「僕はエルドワと一緒だから大丈夫ですよ」

「アン!」

「まあエルドワがいれば安心ではあるんだが、一応もうひとり護衛を手配しておいた。あいつ、ちょうど王都に戻ってたみたいなんでな」


 レオがそう言ったところで、ちょうど玄関扉がノックされた。

 9時きっかり。あの男がレオの指定した時間を違うことはない。


 ユウトが扉を開けると、果たしてそこには狐目の男が立っていた。


「おはよう、ユウトくん」

「わあ、おはようございます、ネイさん! 何だかすごくお久しぶりな気分です!」

「ホント、お久しぶりだよ~。もっと呼んでくれていいのに。もうジラックでおっさんと爺さん眺めてんの飽き飽き。おっ、エルドワも相変わらずころころもふもふだねえ。ああ、癒される」


 ネイはエルドワを抱き上げてもふもふしながら、部屋の中に入ってきた。

 それを認めたクリスが、まず挨拶をする。


「あ、初めまして。あなたがレオくんたちの仲間の狐目くんだね。私はクリス。これから彼らのパーティとして一緒に行動することになるのでよろしくね」


 にこりと人好きのする笑顔で話し掛けられたけれど、しかしそれを受けたネイは明らかにすねた様子で眉を顰めた。


「レオさん、俺を差し置いて会ったばかりの男をパーティに入れるとはどういう了見ですか。昨日その連絡を受けた時は、衝撃のあまり闇落ちするとこでしたよ」

「貴様はすでに闇に片足突っ込んでるだろう」

「あー、まあそうですね。どちらかと言えば、闇からこっちに片足抜けてきたって感じですけども」


 そう言ったネイは苦笑して軽く肩を竦める。すねていたのは一瞬で、すぐに元通りだ。

 何故ならこの男は、最初からレオたちのパーティに入りたいなんて思ってもいないから。ネイはあくまで部下であり、対等の立場になるつもりは微塵もないことを、レオは知っている。


「クリス、こいつの名前はネイだ。兄貴からの情報を持ってきたり、一緒に仕事をしたりすることがあるから、顔を覚えておいてくれ。一応職業は隠密だが、……まあ、あんたなら分かんだろ」


 クリスほどの実力者なら、ネイが持つ雰囲気や所持する得物などで、彼の本来の生業が暗殺者であることに気付くはずだ。

 おそらくネイにも、クリスが戦士としてかなりの手練れであることが分かっているはず。

 仲良くする必要はないが、互いの力が分かっていれば、立ち回りも自ずと決まっていくだろう。


「彼……ネイくんは、レオくんのお友達という認識でいいのかな?」

「違う。こいつは兄貴の雇われ隠密」

「ちょ、酷い! 違いますよ、俺はレオさんの下僕です! レオさんが陛下の手伝いしろって言うから、渋々やってんじゃないですか!」

「下僕?」

「……こいつが勝手に名乗ってるだけだ。忘れろ」


 レオは眉間にしわを寄せて吐き捨てると、ちらりと時計を見た。


「さて、ここで時間を食っている場合じゃないな。狐、貴様はこれからユウトとエルドワを魔法学校まで無事に送り届けろ。俺とクリスは王家の隠し通路を使って兄貴のところに行く」

「はい、了解です。俺はユウトくんたちを送り届けたら王宮に向かいますね」

「あれ、ネイさんも兄様たちのところに行くなら、わざわざ送ってもらわなくても、僕たちだけで魔法学校に行きますよ?」

「いいんだよ、ユウトくん。これは俺の和みの時間でもあるからね」


 ネイはユウトの頭を撫でて微笑む。

 確かに弟と子犬が歩く姿を見ているだけで癒されるのはレオも同意だ。


「ユウト、魔法学校での用事が終わったら、ルアンに迎えに行かせる。俺から通信機で連絡を入れるまで、自由に買い物でもしていてくれ」

「あ、ルアンくんと会えるんだ! じゃあまた新しいスイーツの店に行こうかなあ」


 込み入った話をしている最中にネイだけが離脱して、ユウトを迎えに行くわけにもいかない。そもそもジラックの情報を持っているのはこいつだ。いなくなられると話が途切れてしまう。

 そこで今日のことについては、すでにネイを通じてルアンにも連絡は入れておいた。ユウトもルアンも喜ぶし、彼女とエルドワがついていればレオとしても心配はない。


 今回はクリスのギルドカードの件の他にも、ジラックの街の現状、リーデンの動向、王都にいる元ジラック臣下のこと、偽アレオンのこと、墓場の塔のことなどなど、話し合うべきことが目白押しだ。

 話し合いにだいぶ時間を取られる可能性がある。

 その兄たちを待つユウトを、安心して任せられるのはかなりありがたいことだった。


「何かあったら気にせず通信機に連絡くれていいからな?」

「うん。多分大丈夫だと思うけど」

「よし、じゃあユウトくん、そろそろ行こうか」

「はい。レオ兄さん、行ってくるね。おいで、エルドワ」

「アン」


 ネイに促されて、ユウトとエルドワが扉を潜っていく。

 レオたちもまた、それと同時に動き出した。


「俺たちも行くぞ。まずは通路の入り口のある墓地に向かう」

「うん、了解」


 二手に分かれた兄弟は、それぞれの目的地に向かうのだった。


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