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【書籍化企画進行中】異世界最強兄は弟に甘すぎる~無愛想兄と天使な弟の英雄譚~  作者: 北崎七瀬


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兄弟、禁忌術式の説明を受ける

「降魔術式の原理が分かったところで、今度は何故この術式が禁忌となっているかを説明するぞ」

「……使役しきれない魔物が暴れたら危ないからじゃないんですか?」

「それは表向きだな。お前の兄さんも言ってたが、降魔術式は世界の魔力バランスを崩すんだ。世界樹が存在する全ての世界に根を張り、繋がっていることは知っているか?」

「知らないです。全ての世界って?」

「全てだ。俺たちが知っているのはこの世界と魔界。もうひとつ魔法の概念のない世界も存在するらしい。他にも、俺たちでは認知できない世界がいくつかある。そして、全てのゲートもそれぞれ世界樹に繋がっている」

「ゲートも!?」


 ユウトはマルセンの説明に目を丸くした。

 どうやらゲートもひとつの世界として数えられるらしい。


「魔力のバランスが崩れる……つまり世界規模に対しての魔力量の割合が大きく減じるとその世界は消えるわけだが、それはそれぞれの世界が世界樹の土壌となっていることに起因する。栄養分として提供する魔力がなくなると、世界樹に『枯れた世界』だと認識されてしまうんだ」

「『枯れた世界』は切り離されて、滅ぶということか」


 レオの言葉にマルセンが頷く。


「世界に散らばる精霊たちは皆、世界樹の精霊に統べられている。世界樹に切り離されるということは、精霊の恩恵の一切を失うことだ。大地は干涸らび、空気はよどみ、水は濁り、世界は死ぬ」

「……その縮図がゲートだと考えれば分かりやすいな。冒険者が魔物を倒すことでゲート内の魔力が減っていき、ボスを倒して冒険者も脱出してしまうと世界ゲートを維持供給する魔力がなくなって、『枯れた世界』として消失する」

「……この世界も、降魔術式の乱用で魔力を失っていくと、ゆくゆくはゲートみたいに消えちゃうってことですか?」

「そ。だからこそ降魔術式は世界の禁忌なわけだ。ゲートほど簡単には消えないけどな」


 そう考えるとゲートを軽々しく潰すのも憚られるが、それは問題ないらしい。マルセンが言うには、ゲートの興亡は世界樹の新陳代謝の一環なのだそうだ。

 魔界も絡んでくるようで気になる話だが、詳しいことはゲート専門の研究者に聞けと言われてしまった。


「それにしても、何でそんな危険な降魔術式を乱発しているんでしょう。使いすぎると世界が滅ぶって知らないのかな。教えたら止めてくれるかも」

「どうだろうな、あいつらはちと思考回路がおかしいからな……知っててやってる可能性も否定できない」

「奴らの思考回路か……」


 マルセン同様ジアレイスたちを知っている身としては、奴らが世界を滅亡に導こうとしていても驚かない。それほどに魔研の連中の思考回路は狂っているのだ。

 ……この思考を、あの男は分析できるだろうか。


「魔研の奴らの思惑に関しては、後で別の知り合いに考察してもらうことにする。それよりも、降魔術式を止めさせる方法を考えよう。有効そうなものはこの後陛下に提案してくる」


 ジアレイスの思考分析は後日ウィルに任せることにして、レオは今やるべき事に目を向けた。


「まず、半魔を助け出すことが先決だろうな。餌が居なくなればそう簡単に代わりを調達することはできねえだろ。頻度としては明らかに減るはずだ」

「でも、助け出してもまた召喚されちゃうんじゃ……?」

「王都まで逃げて来れりゃあしばらくは安泰だし、もしくは建物の2階以上に隠れて居れば平気だ。サーチ型の術式は大地に残った魔力の残滓を追うものだから、地べたに接してなければ感知されねえのよ」


 そう言ってマルセンは背もたれに身体を預けて腕を組む。


「後は、召喚した魔物の使い道を潰すべきだな。そっちは分かってんの?」

「ああ。ジラックにある違法の闘技場で見世物にして戦わせているらしい」

「は!? 闘技場!? 魔物同士を戦わせるだけの設備と結界がある建物ってこと!?」


 レオの答えに目を丸くしたマルセンは、それから眉根を寄せた。


「そりゃ難儀だな……。その建物、だいぶ高度な術式が施されてるぞ。高ランクの魔物同士が本気でやりあえば、普通なら周囲には草木の1本も残らない。街中にあるなら、その街ごと壊滅するレベルだ。その力を外に逃がさず、さらに見物客まで置けるとなると、魔法生物研究所に匹敵する施設だな」

「国の研究機関レベルか……」


 そう言えばあの魔研の施設で、ユウトたちのような強力な半魔を閉じ込めていた部屋には、アイテムを使った防魔術式や封印術式が組まれていた。

 レオは一度ユウトを解放しようとそれの解除と破壊を試みたことがあったけれど、全く歯が立たなかったことを思い出す。


 あれと同様のものを、闘技場に使っているのかもしれない。

 何とも厄介だ。


 ……しかし、待てよ。

 あれが付いたのは、確か魔研で様々な魔道具が使われ始めた頃だ。

 それまでは最低限のものしか置いていなかったのに。


(もしかしてあのアイテムの数々は、魔工翁から盗んだ資料から作られてたのか……?)


 だとすれば、魔工爺様ならその術式の解除方法を知っているかもしれない。憶測ではあるが、今度訊ねてみよう。


「それだけ厳重な施術をされた建物ならセキュリティも万全そうだし、降魔術式もその場で行われていると考えて間違いないだろうな。おそらく餌としての半魔もそこにいんだろ」

「ああ。ただ、侵入して半魔たちを逃がすのにも、建物を壊すのにも、アイテム配置と内部構造を知らないと難しいかもしれん」


 ネイたちが調べに行っているはずだが、彼らが戻ってこないとどこまで侵入できるかは分からない。状況も分からず今軽はずみに動くのは早計だ。


「もう少し情報が集まるまで待つしかないか……」


 それでもやれることはいくらかある。レオはそう切り替えて、今後の算段を立てることにした。


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