12話 道を踏み外したようです、はい
ナンテコッタに帰るのか、ドウシタンタに残るのか。
母様とアレスのことはもちろん気になるけど、父様がなんとかしてあげられる気がする。
今までもそうだったし。
けど私の頭の中は、泉の奥深くで会った人魚さんのことばっかりだ。
……本当にお母さんだったら、どうしよう。
「私、毎日ここに潜りたいな」
ちょっと心の声をつぶやいたら、ユヌカスがバッと振り向いた。
「いいだろう。神殿に部屋を用意しよう」
「ちょっ、まっ、勝手にっ」
偉そう神父が何か言おうとしてたけど、ユヌカスの振り回した剣の鞘に当たって、遠くに消えていった。
今、小さなお星様みたいに光ったね。
「それはダメだ。母様に会いたいだろう?」
父様が、私の手を握りながら話しかける。
「母様にも会いたいけど、父様と母様のジャマはしたくないよ」
これも本心の1つだ。なんかラブラブだし。
「それに、私が生きていくための勉強は、最低限しないといけないんでしょ?」
それっぽいことを『モノクリツ』のおじさんが言ってたもんね。
私が人間とは違う生体なら、ある程度の常識を学ばないと死んでしまう。お風呂に入ったら煮魚になってしまう世界なのだから。
何やら、私を抜いて父様とユヌカスがお話しし始めた。
ヒマになっちゃったよ、おい。
それにしても神殿って初めて来たから、ちょっと探索してみたい。 いいよね!
通路の真ん中は水路になっていて、両側が陸路なところは町の中とかわらない。
結構大きな建物の半分が通路になっているもよう。
通路をウロウロしていたら、湯気の出てる部屋があった。
ちょっと覗いちゃう、ムヒ。
おお!
噴水みたいなところからお湯が溢れてる!
えっと、じゃあこっちのプールみたいなところはお風呂?
身体を洗ったりできるのかな?
失礼しま〜す、ルンルン。
なんか壺みたいのがある。
ん〜、ボデ泡って書いてあるっぽい。
ボディソープのことだよね。
わ〜い。アワアワだ〜。
えい! もう服脱いじゃおっと。
久しぶりのアワアワにテンションが上がって、雪だるまみたいになってみた。
アワだるま〜、髪の毛とんがらせてウルトラマン!
勝手に人の家でお風呂するなんて、常識がないな〜って?
テンション上がっていた私も、今気がついた。
一気に真っ青だよ!
後ろでお世話係り? のお姉さんたちが、ムンクみたいな顔をしてフリーズしたかと思ったら、もの凄い勢いで私の泡を流しはじめた。
迷惑かけてるわ。目一杯、道を踏み外してたわ。
日本時代にはこんなことしたことないんだよ!
ホントだよ!
探しにきたユヌカスが、マッシロメガミヨウジョって何か呟いたら、真っ赤に茹だって床に倒れちゃった。
私たちって洗礼が終わっていても、お湯が苦手な種族なんだね。




