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竜殺しの料理人~最強のおっさんは、拾ったケモ耳娘とスローライフを送る~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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エピローグ

 その後は待つだけなので、戻ってきたクレアさんと泊まっていた宿に改めて説明をしたり。


 皆で協力して宿にある荷物を運んだり、簡易的な看板などを作ったりしていた。


 仕込みをしつつ、皿やコップ、フォークやスプーンなども用意し……時間は過ぎていく。


 すると、作業が終わるころ……少し日が暮れてくる。


「ふぅ、これでいいかな。三人とも、ありがとう」


「えへへ、頑張りましたっ!」


「いえいえ、これくらいはお安い御用ですから」


「うむ、受けた恩に比べたらなんて事はない」


「本当に助かりました。では、三人は少し休んでいてください。俺は夕飯の仕上げに入りますので」


 俺だけ席を外し、キッチンに立つ。


「さあ、ささっと仕上げてしまうか」


 まずは、野菜や骨から出汁を取っていた鍋をボールに濾す。

 こした素材は捨てると、黄金色のスープだけが残る。

 それを味見用スプーンですくい、口に含むと……スープなのに噛めるほどの食感を感じた。

 しっかりとアク抜きをし、じっくり煮込んだ証拠だろう。


「うん……美味いな。これなら、そのままでもいけそうだ。足すなら醤油を何滴と、きのこ類とネギを具材にするくらいか」


 鍋にスープを戻し、キノコと刻んだネギを入れる。

 あとは火が通ったら、醤油を入れるだけだ。


「次は千切りキャベツにお湯を注いで……塩で揉み込むと」


 このワンポイントを入れると、ものすごく食べやすくなる。


「終わったら、いよいよメインか」


 鍋に油を入れ、火にかける。

 その間に醤油や酒、ニンニクに生姜やパイナップルのジュースに漬けておいたワイバーン肉を取り出す。

 それに粉にまぶし、よくはたいておく。

 すると、店の前に気配を感じる。


「ソラ! 頼む!」


「はーい!」


「では、我々もやりますか」


「ああ、そうだな」


 休憩をしていた三人も動き出すと……店のドアが開く。


「あららー、良い匂いがしますね」


「ほう、もう使いこなしているのか」


「きてやったわい」


「へぇー、おっさんは料理人でもあったのか」


 そこにはギルドマスターのハウゼン殿、受付嬢のアリスさん、ドワーフのガランさん、冒険者のダイン殿がいた。

 ここにきてから、俺がお世話になった方々だ。


「皆さん、来てくださりありがとうございます。特にハウゼン殿、こんなに良いお店を本当にいいですか?」


「ああ、あいつも喜ぶだろうよ。手紙を出しておくから、帰ってきたらお主にも見せよう」


「是非、その際はお礼のお手紙を出したいですね」


「ああ、わかった。席は適当でいいか?」


「ええ、お好きな席にどうぞ」


 すると、四人テーブル席に四人が座る。


「さて、少々お待ちくださいね。すぐに仕上げに取り掛かりますので。ソラは飲み物を用意してくれるか?」


「うんっ!」


「お二人は汁ものと付け合わせ、そしてご飯を用意してください」


「うむ、わかった」


「ええ、わかりました」


 そちらは三人に任せて、俺は手を鍋に近づけ温度を確認する。


「……よし、良いだろう」


 おそらく160度前後になっている油に、粉のついたワイバーン肉を投入する。

 すると、ゴァァァ!と心地よい音と共に、香ばしい香りが鼻をくすぐる。


「おっ、美味そうな匂いだわい」


「ああ、そうだな」


「良いですねー」


「……俺はなんで、ここにいるんだ?」


 ……ダイン殿を呼んだのはまずかったか?

 だが、試験でお世話になったしなぁ。


「……まあ、いいか」


 その間にも、テーブルにスープやサラダが用意されていく。

 ソラが一生懸命に動いており、それを二人がフォローしているようだ。

 俺はそれを見守りつつ、唐揚げの様子を確かめる。


「……よし、良いだろう」


 感覚的に達したと思い、鍋から上げると……こんがり色の唐揚げが目の前にあった。

 それを手早く紙に乗せ、余分な油を吸わせる。

 その工程を繰り返し、先にできたものから皿に盛り付けていく。


「お父さん! 終わったよ!」


「よし、偉いぞ。こっちも、今終わったところだ。それじゃあ、席について食べるとしよう」


 仕事を終えた俺たちも四人掛けのテーブルにつく。

 その際に視線を感じていた、早く食べさせてくれという。


「さて、皆さん。今日はささやかですが、お世話になってるお礼に料理をご用意しました。よろしければ、召し上がってください。熱いうちが美味しいので、今すぐに」


「「「「「「「頂きます!!!」」」」」」」


 俺以外の声が一致して、唐揚げを口に入れていく。


「なにっ!? 信じられぬ! あ、あの硬くてパサパサしたワイバーン肉が……柔らかくなっているだと?」


「これは! ……なんという酒に合う料理じゃ! かぁぁー! 進むわい!」


「すごいですねー! 柔らかいし、外はカリカリで……ニンニク醤油も効いていますね」


「これは米が進むぜ! おっさん、やるじゃんか!」


 隣のテーブルからは、そんな声がする。


「お父さん! 熱々でおいちい!」


「これは良いな! まさか、あのワイバーン肉がこんなに柔らかくなるとは……」


「ええ、ほのかな甘みもあって良いですね」


「よかったです。それでは俺も……っ!? うめぇ……!」


 サクッとした食感だが、中は柔らかく口の中で溶けるようだ。

 ほのかな甘みも含め、パイナップル効果のおかげだろう。


「少し油っぽいが、スープを飲むことで調和されてまた食べたくなるな」


「キャベツもいいですね」


「ええ、それが狙いなので」


「よくわかんないけど美味しい!」


「そうかそうか」


 隣に座るソラの頭を撫でつつ、周りを見てみると……そこには懐かしい景色があった。


「かははっ! 美味いのう!」


「全くだ!」


「もう〜皆さんうるさいですね」


「かぁー! うまっ!」


 美味しい食事をしながら、気心の知れた人達と食べるのは至福の時間であると思う。


 そして、俺はそれを見るのが一番好きだった。


「お父さん! みんな笑顔だねっ!」


「……ああ、そうだな」


 そうか……俺はこの世界で、もう一度夢を見て良いのか。


 前の世界で叶えきれなかった、料理人として生きていくことを。


 ならば、何も言うことはない……俺はこの異世界で、料理をしながら生きていこう。




ここでひとまず第1部完結となります。


少しでも面白いと思った方、よろしければ下にある⭐︎評価を押してくださると嬉しいです。

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