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竜殺しの料理人~最強のおっさんは、拾ったケモ耳娘とスローライフを送る~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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おっさん、自問自答する

 ギルドに入ると、すぐに奥の部屋に通される。


 そして、ハウゼン殿と対面する。


「ソーマ殿、今回はすまなかった」


「いえ、ハウゼン殿が謝る事ではないですよ。ギルドメンバーとは言っても、雇われのようなものでしょうから。全てを把握することは難しいかと」


「そう言ってくれると助かる。しかし、ことはそう単純ではなかったのだ」


「それはどういう?」


「ハウゼン殿もソーマ殿も、まずは座ったらどうだろうか?」


「おっと、俺としたことが慌ててしまったな。まずは、二人ともかけてくれ」


「では、失礼します」


 対面のソファーにはハウゼン殿、となりにクレアさんが座る。


「さて、何から話したものか」


「先ほど、単純ではないと言ってましたが……」


「うむ、そうなのだ。順を追って説明しよう……全ての話は繋がっていたらしい」


 そうして説明される。

 そもそもの発端が、ブライの依頼に発端していたと。

 とある魔物退治の依頼を受けたブライは、依頼自体は成功させたが……本人の不注意で、その際に人々に被害を出してしまったらしい。


「それが、どう繋がるのですか?」


「うむ……その帰りに腹いせにワイバーンの巣を襲ったらしい」


「……なるほど、そういうことですか。その生き残りが、あの森にやってきたと」


「ああ、そういう話に繋がる。そして、これは重大な違反だ。A級冒険者として、無差別に依頼ではない殺戮をするのは認められん」


「……では、処遇は降格とかですか?」


 すると、ハウゼン殿が苦い顔をする。


「いや、そうはならん。これは、俺の怠慢でもあるので申し訳無いのだが……ザザの証言と、本人の証言でわかったことがある。奴らは、以前も似たようなことをやっていたらしい。何人かの行方不明の冒険者はいるが、確かな証拠はなかった」


「まあ、そうでしようね」


「うん? どういう意味だ?」


 別に驚くことじゃない。

 あいつの態度から、それは何となくわかっていたから。

 本当の戦闘狂は、あんなものではない。

 あれはただの、弱者をいたぶりたいだけのしようもない男だ。


「そういえば、ソーマ殿は以前も言っていたな。あいつは、強いやつと戦いたいという男ではないと」


「ええ、それはわかっていました。自分より弱い者やそれなりに強い者を倒して、愉悦感に浸りたいだけかと……ただ、一つだけ疑問がありました。そういう奴は人の強さを見抜くのも得意です。それだけに、俺に喧嘩を売ることがないと甘く見ていたのですが……」


「ふむ、まさしくその通りだった。そして、お主に喧嘩を売った理由だが……俺の所為なのだ。あいつにはドラゴンスレイヤーだから絡むなと注意したのだが、それが返って良くなかったらしい」


「どういう意味ですか?」


「あやつも、運良く力を手にした男だったのだ。それで増長して、ああなった経緯がある。故に、同じようなソーマ殿が謙虚なのが許せなかったのだろう」


 ……そういうことか。

 だから、俺も読み違えてしまったのか。

 結局、大それたことはできないだろうとタカを括ってしまっていた。


「……つまり、俺もああなっていた可能性があるってことですね」


「むしろ、あちら側に行ってしまう人間の方が多い。お主は稀有な存在だよ」


「それは、育ての親のおかげですね。強さとは、人に見せるものではないと教わったので」


「うむ、良き親だな……さて、つまらない話は以上だ。とりあえず、お主らが生きてるうちは豚箱から出てこれないから安心するといい。余罪が腐るほどある……ある意味で、お主が甘い男でよかった。これで、色々なことがわかるだろう」


「いえ、たまたまです。殺すつもりだったんですけど……情けないことにダメでしたね」


 あの時、ソラに被害が及んでいたらどうだったのだろう?

 俺は、あいつを殺すことができたのだろうか?

 すると、クレアさんが俺の手に触れる。


「いや、そんなことはない。その甘さに、ソラや私は救われたのだ。もしその時が来たなら、私が代わりになる」


「クレアさん……」


「もちろん、いずれそういう時が来るかもしれないが……私は、甘いお主が好きだ」


「あ、ありがとうございます……」


 頬を赤らめて言うので、俺の方も照れ臭くなってしまう。

 おいおい、一回り下の女性に何を狼狽えているんだ。


「コホン」


「す、すまない!」


「い、いえ!」


 その咳払いで、お互いに再び距離をとる。

 まったく、良い歳して何をやってるんだか。


「それで、ここからが本題でお主には報酬を受け取る権利がある」


「権利ですか?」


「ああ、あいつらの財産と冒険者ギルドからの迷惑料とかを含めたな。それは正当な権利なので、受け取ってくれい」


 ふとクレアさんを見ると、ゆっくりと頷いている。

 どうやら、正当な理由らしい。


「そうなんですね……では、受け取らせて頂きます」


「助かる。さて、話はこんなところだ。あとは、俺達に任せておけ。それくらいはしないと、ギルドマスターとして面目が立たない」


「わかりました。それでは、お願いします」


 少し後悔していた部分はあったが、もう出てこれないなら安心である。


 何より……クレアさんの言葉に救われたような気がする。








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