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竜殺しの料理人~最強のおっさんは、拾ったケモ耳娘とスローライフを送る~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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おっさん、合格するが……

 青の魔法陣に入り、光に包まれると……。


 気がつくと、俺達は迷宮の洞窟付近にいた。


「……不思議ですね。 一体、どういう現象なのだろう」


「それは、研究者達の永遠のテーマだな」


「んなこと気にしても仕方ねえし。それより、ささっと行こうぜ」


「ああ、そうだな。他の冒険者が来る前に」


 何でも朝早く来た理由として、他の冒険者達の邪魔にならないようにということらしい。

 確かに1階の奥に行くのに、新人冒険者がいたら迷惑だろう。

 すると、何やらよくない気配がするので振り向くと……例のあの男がいた。


「……あん? あの時の野郎に、クレアにダインかよ」


「ブ、ブライさん、お疲れ様です」


「ブライ殿……」


 俺を庇うように、クレアさんが俺の前に出る。


「ちっ、わかってるよ。あのクソジジイに言われたしな。それにしても情けない男だな? 女の後ろに隠れるとか」


「これは私が勝手にやってることだ。それに、ソーマ殿は勇敢な男だ」


「別に貴方にどう思われようと構いませんが……別に女性が男性を守ってはいけない決まりなどないかと」


「……あぁん?」


「無論、それに甘えるつもりはありませんが」


 クレアさんの肩に手を置き、今度は俺が前に出る。

 個人的に、《《こういう考えの輩は好きじゃない》》。


「やんのか?」


「別にそんなつもりはないですが……」


「ちっ、腰抜けが……」


「も、もういいだろ!」


「……けっ」


 俺をひと睨みした後、そいつは迷宮に入っていった。

 それから少しの間、三人の間に静寂が漂う。


「お、おまっ! あいつを誰だと思ってんだよ! 狂犬と呼ばれるブライだぞ!」


「すみません、ご迷惑をおかけしました。個人的に、ああいうのは好きではないので」


「気持ちはわかるが、あいつには関わらない方がいい」


「……わかりました」


「うむ……さて、気を取り直して報告に向かうとしよう」


 クレアさんの言葉に従い、俺達はギルドに向かうのだった。





 ギルドに入ると、すぐにアリスさんに手招きをされる。


「さて、お二人とも……ソーマさんはどうでしたか?」


「文句なしの合格かと」


「まあ、良いんじゃねえっすかね」


「ふふ、それなら良かったです。ソーマさん、これにて試験は終了となります」


「えっと、こんなもので良いのですか? いえ、簡単だったという意味ではなくて、もっと内容を聞いたり……」


「ええ、このお二人は信頼に値する方なので。何より、この1ヶ月のソーマさんを見てますからねー。都市の人達からも評判が良いですし、指名依頼が来るくらいですから」


 この一ヶ月はがむしゃらに頑張ってきたが……その頑張りが認められたということか。

 異世界に慣れるため、ソラのため、そして俺を信頼してくれたクレア達のために。

 これで、少しはこの世界で生きていく下地ができただろうか?


「ありがとうございます……」


「いえいえ、それはこちらのセリフですよー。引き続き、よろしくお願いしますね」


「はい、よろしくお願いいたします」


 こうして、俺はD級冒険者になった。


 依頼料や魔物討伐ランクも上がるので、家を借りることに一歩近づいただろう。


 そろそろ、物件なんかも探しても良いかもしれない。






 ◇


 迷宮に入った後、居酒屋で酒を飲んでいるが苛立ちがやまない。


 その原因はわかっている。


 あの、ソーマとかいう冒険者のせいだ。


「けっ、気に食わねえ」


 なんか強そうな奴がいると思ってからんでみれば……ただの腰抜けだったか。


「兄貴、どうしたんで?」


「あん? なんだ、ザザか」


 俺に引っ付いてくるコバンザメのような男だ。

 だが情報通ではあるので、便利なやつではある。


「なんか、機嫌悪いっすね? 依頼先で何かあったんで?」


「ふんっ、そんなところだ」


 魔物退治の依頼をこなしたのは良いが、苦情が来やがった。

 周りにいた魔獣を巻き込んだり、それによって魔獣が森から出たとか。

 それが農作物や村人に被害を出したとか……俺の知ったことか。


「なるほど」


「あとは気に入らない奴がいてよ。なんか、新人の癖にでかい顔をしてやがる。確か、ソーマとか言ったか?」


 ギルドマスターにも気に入られてるし、良い女であるクレアにも気に入られてる。

 穏やかな性格から、冒険者や都市にいる連中からも人気らしい。

 ……ますます気に食わねえ。


「ああ、噂のおっさんルーキーですかい。なにやら、評判良いっすね。しかも、獣人の娘もいるとか」


「……あん? 獣人の娘? 嫁さんが獣人なのか?」


「いや、それはわかんないっす。ただ奥さんは見当たらないですが、娘がいることは確かです」


「ほほう? ……その話を詳しく聞かせてもらおうか」


「へへっ、何か注文しても?」


「おう、好きなのを頼め」


 獣人の娘か……こりゃ、良い話を聞けそうだ。


 獣人になら、何をしても許されるからな。


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