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竜殺しの料理人~最強のおっさんは、拾ったケモ耳娘とスローライフを送る~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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おっさん、気に入られる

 ……ふーむ、数字だけを見れば強そうだ。


 俺は詳しく聞こうと思い、クレアさんの顔を見ると……固まっていた。


 そしてギルドマスターも、ミレーユさんも。


 ソラだけは、ポカンとした顔をしている。


「お父さん、みんなどうしたのー?」


「いや、わからん」


 ひとまず、ソラの頭を撫でることにする。


「えへへ〜」


「サラサラだな」


 うむ、うちの娘は可愛い……おいおい、親馬鹿になるのは早いだろ。

 というか、この子の進退についてはまだ決まってないし。

 すると、一番先にハウゼン殿が反応する。


「……これが竜殺しのステータスか。いや、驚きだ」


「い、いや! 強すぎる! 竜殺しとは、これほどの強さなのか……」


「……オーガを一撃で倒すわけですね」


 ……何やら、重たい空気になってる。

 どうやら、相当に高いステータスらしい。


「そんなに強いのですか?」


「俺から説明しよう。ああ、間違いなく強い。元A級冒険者の俺ですら、お主よりは劣るだろう。そうだな……この国において、お主とまともに戦える者は片手で数えるほどしかおらん」


 ……そう言われても、A級とかわからないし。

 それに人口によって、割合も変わってくる。

 だが、強いということは間違いなさそうだ。


「そうなんですね。そういえば、このステータスというものは種類があります。どのような効果というか、意味みたいなものはありますか?」


「う、うむ……それも説明しよう」


 それから話をまとめると……こんな感じらしい。


 ◇


 体力……スタミナや、強健さを表している。

 これが高いと、息を切らすこともなく、病気にもかかりにくくなる。


 魔力……魔法を使う際のスタミナや、魔力に対しての頑丈さを表している。

 これが高いと、魔法を連発できたりする。あと、魔法攻撃に強くなる。


 筋力……これは単純な力と頑丈さを表している。

 これが高いと、攻撃を弾いたり、重たい物を軽々持てたりする。


 速力……これは、素早さを表している。

 これが高いと、攻撃を避けたり、馬より速く走れるようにもなる。


 技力……これは器用さを表している。

 これが高いと、目がよくなったり、狙ったところに命中できたりする。


 精神力……これは精神の強さを表している。

 これが高いとストレスに強かったり、メンタルが強くなる。


 ◇


 ……なるほど、色々と疑問が解けた。


 いきなり異世界に来たり、その後に魔物を倒したりしたが……。


 俺の精神状態が落ち着いていたのは、この精神のステータスが原因だったということか。


 あとは、疲れないのはこの体力が、目が良くなるのは技力など……それぞれ、ステータスが上がったことに起因するというわけだ。


「この迷い人という称号は何でしょうか?」


「それは通称、女神の悪戯とも呼ばれる称号だ。女神が興味本意で、異世界から人を呼ぶことがあるらしい。効果としては、言葉や文字を理解できるようになる」


「俺は、それで呼ばれたと。そして、だから言葉や文字が通じるのですね。ご説明、どうもありがとうございます」


 俺が頭を下げると、何やらハウゼン殿の顔がこわばる。


「う、うむ……おい、ミレーユ」


「ハウゼンさん、言ったでしょう? 強いけど、とっても紳士な方だって」


「私からも保証する。数日を共にしたが、私達に下卑た視線を向けることはなかった。その気になれば、命の恩人として要求することも出来たのに」


 ……それは単純に年齢によるものかと。

 枯れてる訳ではないが、アラフォーにもなると欲が減ってくるし。

 もちろん人によって違うが、俺の場合は食欲の割合が強い。

 いや、そもそもの話……。


「……普通だと思いますけど。というか、こちらこそお世話になってるので。何より、ソラがいますから」


「自分の強さを知っても、態度が変わらない奴か……気に入った! お主の身の保証はワシがしてやる! その代わり、冒険者ギルドに入ってくれ!」


「え、ええ、それは構いません。むしろ、こちらからお願いしたいくらいです。稼いで、自分の目的を果たしたいので」


 よくわからないが、気に入られたらしい。

 ギルドマスターというくらいだから、おそらく力のある人物だ。

 だったら、仲良くしておいて損はない。


「よし! 決まりだ! 冒険者ランクはS,A,B,C,D,E,F,G,H,I級の10段階に分かれている。オーガを倒したお主には、最低でもクレア達と同じD級から始めることができるが……」


「できたら、一番下から始めても良いですか?」


「……何? 稼ぎたいんじゃないのか? それに、お主にはその力がある」


「いえ、もちろんそうですけど……まずはこの世界に慣れたいので。あと、不正ってわけじゃないですけど……うーん、難しいですね」


俺のこの力はたまたまであって、自分で得たものじゃない。

それを使って、いきなりランクを上げるのは気持ちが悪い。


「……ははっ! 上から始めろという奴はいたが、下から始めたいと言った奴は初めてだ!正直言って、こちらとしては強い奴にはすぐに活躍してもらいたいが……」


「すみません、わがまま言って」


「いや、ますます気に入った。最近は、そういう下のランクの仕事を馬鹿にしたり嫌がる奴もいる……よし、わかった」


「ありがとうございます。ちなみに、水晶なんですけど……ソラもやってみて良いですか?」


 それまで、俺に撫でられてうっとりしていたソラが目を開く。


「ふぇ? わ、わたし?」


「この子は年齢も名前もなかったのです」


「ふむ。貴重な古代遺産だが、特別に許可しよう」


「ありがとうございます。ソラ、触ってごらん」


 ソラが頷き、恐る恐る水晶に触れると……。


 ◇


 ソラ


 種族 白狼族


 年齢 八歳


 体力 E 魔力 E


 知力 E 筋力 E


 速力 E+ 技力 E+


 称号


 ◇


 白狼……狼の獣人ってことか


 というか、八歳だったのか。


 見た目からてっきり5、6歳とかと思っていた。


 やはり、しっかり食べさせないといけないな。


「しかし、名前は……俺がつけた名前なんですね」


「ふむ、おそらく……元々名前がなかったので、お主がつけた名前が正式な名前になったのだろうよ」


「お父さんがくれた名前好き!」


「そうか、なら良かったよ」


「ふっ、面白い奴よ。では、冒険者登録は俺の方で手続きをしておこう。受付に戻って、呼ばれるのを待っていてくれ」


「お手数をおかけします」


 ふぅ……どうにか、これで職に就けた。


 不安だらけだが、これから頑張っていかなくては。

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