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竜殺しの料理人~最強のおっさんは、拾ったケモ耳娘とスローライフを送る~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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17/64

おっさん、ようやく都市に着く

 夜が明けて、馬車が軽快に街道を走る。


 幸いと言って良いのか、魔物や魔獣に出会うことなく順調に進み……。


 この世界に来て、ようやく人の住む都市が見えてきた。


「ふぁ……すごいです!」


「ああ、そうだな」


 視界の先には、大きな城壁が見える。

 あれが、目的地である辺境都市レガリアという場所だろう。


「あんな大きなの初めて見ました!」


「まあ、俺もだな」


 馬車に乗ってる間、ソラはずっと楽しそうだ。

 村から一歩も出たことがないので、見たことない景色や物が珍しいのだろう。

 かくゆう俺も、大人気なくワクワクしてたっけ。


「ソーマ殿」


「ええ、わかっています。ソラ、俺の側を離れるなよ?」


「う、うん!」


 相談の結果、ソラには都市での危険性を教えておいた。

 獣人の立場や、奴隷について……何も知らないで危険な目に合うよりはマシだ。

 ただ、できればのびのびと過ごして欲しいとは思っている。

 それを守るのも、大人……お父さんの役目だろう。





 そして、大きな門の近くに到着する。


 改めて近くで見ると、その大きさは圧巻の一言だ。


 高さ十メートルを超える壁で、中々お目にかかれるものじゃない。


「すごいですね……この壁が都市全体を囲んでいると……」


「まあ、空から襲ってくる魔物もいるのでな。ハーピーやワイバーン、それこそドラゴンなんかもいる」


「ああ、そうですよね」


 すると、先行していたミレーユさんが戻ってくる。

 彼女には、とある確認をしてもらう必要があった。


「クレア、ドラゴン出現の報告は来てなさそうです。門の兵士達は普段通りですし、都市の中も平穏そのものでしたよ」


「なるほど。それでは、ドラゴンが出現したこと自体が伝わっていないと思っていいな。ソラの話からすると、現れてから一日も経ってないと聞く。おそらく、助けを呼ぶか迷っている間にソーマ殿が倒してしまったのだろう」


「ええ、その可能性が高いです」


 そう、これが確認してもらったことだ。

 これ次第で、俺の動きというか扱いが変わってくる。


「そして、ソーマ殿は村人に黙っていてくれるように頼んだと?」


「ええ、そうですね」


「命の恩人の頼みだし、しばらくは黙っていてくれるだろう。ただ。そのうちドラゴンが現れたことや、誰かが倒したなどの噂は出ると思うが……誰かと言う点は、ある程度誤魔化せるだろう」


「まあ、仕方ないですよね。ただ、知られるにしても少し時間が欲しいです」


 まだ、この世界のことを知らなさすぎる。

 ソラのこともあるし、その状態で騒動になるのは困る。


「ああ、わかってる。というわけで、ここからは私の指示に従って欲しい……こればかりは、私を信用してくれと言うしかないが」


「大丈夫ですよ、これでも人を見る目はあるつもりですから」


「そ、そうか……」


「ふふ、照れてますね?」


「ぐぐ……そ、それより、ギルドに報告をしておいてくれ」


「はいはい、わかりましたよ」


 ミレーユさんが走り去った後、馬車が門へと近づいていく。

 すると、ソラが俺の服の端を掴む。

 その顔はさっきまでと違い、恐怖に染まっている。

 おそらく、人がたくさんいる都市に入るのが怖いのだろう。


「お、お父さん……」


「平気だ。最悪、何かあれば出ていけば良い」


「う、うん」


「安心して良い。私がそんなことはさせない」


「心強いですね」


 馬車が門に着くと、兵士達が駆け寄ってくる。

 ちなみに俺たちは、迷宮都市に出稼ぎにこようとして迷子になっていた設定だ。


「こんにちは。ミレーユさんから聞きましたが、そちらが出稼ぎに来て道に迷っていた方ですね?」


「ああ、そうだ。代金は私が支払うので頼む」


「わかりました。それでは、料金をお願いします」


「ああ、これで頼む」


 クレアさんが、懐から硬貨を数枚手渡す。

 確か事前に説明は受けた。

 上から白銀貨、金貨、銀貨、鋼貨、銅貨、鉄貨、石貨の7種類。

 銀貨数枚あれば、平民四人家族が生活できるとか。

 ということは、銀貨一枚は日本円にして十万くらいの価値があるってことかな。

 そして十進数ということを考えれば、その他の価値も大体わかる。


「はい、確かに。ようこそ、迷宮都市レガリアへ。我々兵士がいますが、基本的には自己責任になりますのでお気をつけて」


「ええ、わかりました」


 どうやら、この世界には迷宮……いわゆるダンジョンというものがあるらしい。


 ここは迷宮を中心に作れられた都市で、冒険者や商人達が多い都市だとか。


 いざこざもあるので、ある程度は自分の身は自分で守る必要があると。


 何はともあれ、ようやく俺は人の住む場所に足を踏み入れるのだった。

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