表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜殺しの料理人~最強のおっさんは、拾ったケモ耳娘とスローライフを送る~  作者: おとら@9シリーズ商業化


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/64

おっさん、弟子を取る?

 その後、泉に浸かり、汚れを落としていく。


「冷たいが気持ちいいな。それに、めちゃくちゃ綺麗だし」


 辺りは緑に覆われ、空には星が出てきて……いっそ神秘的ですらある。

 これで、魔物でも現れなければの話だが。


「……異世界か……」


 よく考えれば、こうして一人になるのはこっちに来て以来か。

 ほんと、どうするかね?


「まずは良き人に出会えたことを喜ぶか」


 これでも、人を見る目はあるつもりだ。

 客商売が長かったし、店を経営する者として交渉もしてきた。

 それこそ、アブナイ橋を渡ったのも一度や二度ではない。


「まずは、ソラのことだな。それが済んでから、自分のことを考えるとしよう」


 幸いにして、料理なら何処にいてもできる職業だ。





 幸い魔物も出ることなく、気持ちよく泉に浸かる事が出来た。


 そしてタオルで体を拭いたら、急いで森を出る。


 すると、すでに火が焚かれ、近くにはテントも張ってあった。


「お父さん!」


「おっと、どうした?」


 飛び込んできたソラを受け止めると、頭をグリグリされる。


「ふふ、帰ってくるか心配だったのだろう」


「ああ、なるほど。大丈夫だ、魔物も出なかったしな」


「そういう意味ではないと思うが……」


「はい?」


「いや、良い。ミレーユ、まずはソーマ殿の髪を乾かしてやってくれ」


「はい、わかりました。ソーマさん、失礼します——ドライ」


 次の瞬間暖かい風が吹き、俺の髪があっという間に乾いていく。


「えっ?」


「魔石にはドライの魔法が込めてある。それを使って、お主の髪を乾かしたのだ」


「なるほど……それで、三人とも泉から帰ってきたときに乾いていたのか」


 いわゆる、ドライヤーのようなものだ。

 しかも魔石……なるほど、異世界ならではって感じだ。


「さて……魔石だが、先ほども言ったが魔法を込められる。このよう生活に便利なので、魔物を倒すことは大事なのだ。その他の詳しいことは……」


「ええ、わかってます。まずは、食事にしましょう」


「ふふ、そうしてくれると助かる。野菜やフライパンなどはあるから自由に使ってくれ」


「わかりました。では、作っていきますね。お二人は、のんびりしててください」


「私は明日の用意をしてますね。クレアは適当にしててください」


「適当って……じゃあ、作るのを見てて良いか?」


「ええ、構いませんよ」


 すると、ソラが俺の服を掴む。


「お、お父さん! わたしもお手伝いできるよ!」


「ん? そうなのか?」


「え、えっと……雑用で下処理とかさせられてたから」


「そうか……じゃあ、手伝ってくれるか?」


「うんっ!」


 迷ったが、ソラの自己肯定感につながると思い手伝わせることにする。


「まずは、野菜を切ってくれるか? 人参、玉ねぎ……後はキノコ類だな」


「が、頑張る」


 クレアさん達が持っていたテーブルの上で、ソラが包丁とまな板を使って作業していく。

 その手つきは慣れたもので、中々堂に入っている……それを喜ぶわけにはいかないが。


「さて、俺はスープを作るか。そういえば、熱湯とかってありますか?」


「ああ、使うと思ってすでに温めてある。何に使うのだ?」


「それをイノブタの骨にかけるんです」


「なに?」


「煮る前に熱湯かけると、いい出汁が出るんですよ」


「ほう? なるほど、料理人の知恵ってやつだな」


「そんな大層なことじゃないですけどね」


 会話をしつつも、骨に熱湯をかけていく。

 すると、隙間に挟まった血が流れていく。

 これが雑味となるので、なるべく取った方がいい。


「そしたら、この骨を水から煮ます」


「なに? お湯をかけたのに、水から煮るのか?」


「ええ、そっちの方が美味しくなるんですよ」


 小さな銅なべに魔法で水を入れて、そこに骨を入れていく。


「お父さん! 切れました!」


「おっ、えらいぞ。じゃあ、そのまま鍋に入れてくれ」


「うんっ!」


「野菜も水からなのか?」


「ええ。基本的に、土から生えた野菜は水から煮た方がいいんです」


 むろん、異世界だから違うかもしれないが……まあ、見た目は一緒だし。

 というか、同じ食材だし呼び方も一緒なのか……よくわからん。


「ふーむ、初耳だな」


「わ、わたしもです。お父さんすごい!」


「いやいや、俺は習っただけだし。それこそ、先人の知恵ってやつだよ」


 それを火にかければ、あとは沸騰するのを待ってアク抜きをするだけだ。

 肉を焼くのは、まだ早そうだ。


「ふふ、祖先に感謝という考え方か……嫌いじゃない」


「まあ、それに近いかと。それより、パンとかはありますか? もしくは、お米とか……」


「コメはないが、パンならあるぞ。あとで、切るとしよう」


「わかりました」


 ほっ、どうやらパンはあるらしい。

 そして、米はない……だが、知らないと言われてなくて良かった。

 ソラが、一生懸命にアク抜きをしているのを眺めていると……。


「それにしても、ソーマ殿は強いな」


「いえ、たまたまドラゴンを倒したからでしょう」


「いや、もちろんそうなのだが……あのオーガを一刀両断した時の太刀筋は、それは見事なものだった。異世界では、剣を習っていたとか?」


「ええ、そうですね。俺の世界には五行の形という剣術がありまして……それを二十年くらいは続けてました」


 俺を育てたおじさんは、剣道の達人でもあった。

 精神を鍛えるという名目で、よくボコボコにされたっけなぁ。


「に、二十年……私がよちよち歩きの頃からか。ちなみに……それは教えて頂くことは可能だろうか?」


「はい?」


「い、いや! すまない! そうだな、剣の技は秘伝とも言う……そんな大事なものを、見ず知らずの私に教えてくれるわけ……」


「別にいいですけど」


「わかってる、私が無茶な頼みを……へっ?」


 すると、クレアさんがポカンとした表情を浮かべる。

 うむ、美人さんはどんな顔でも美人さんなのだな。


「い、良いのか!? しかも、私は女なのに……」


「ええ、俺でよければ。別に、秘伝でもないので。それに女性とか男性とか関係ありません」


 そもそも、前の世界では誰でも習うことはできたし。

 いや、おじさん直伝の技だけは特別だけど。

 すると、クレアさんが俺の両手を握る。


「あ、ありがとう! ソーマ殿!」


「わ、わかりましたから!」


「わわっ!? す、すまぬ!」


 慌てて、手を離す。

 会って間もないが、どうやらおっちょこちょいな女性らしい。


「コホン……まあ、街に着いたら詳しい話をしましょう」


「ソーマ殿、感謝する。これで、私にも師匠が……ふふ」


 師匠……いや、別に良いけど。


 おっさんは異世界にて女性騎士の弟子を取る……なんぞや?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ