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竜殺しの料理人~最強のおっさんは、拾ったケモ耳娘とスローライフを送る~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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おっさん、押し問答をする

 あたりを警戒しつつ、元いた場所に戻ると……。


「あっ、彼がそうですか?」


「ああ、そうだ。彼が、私達を救ってくれた恩人だ」


 すると、ローブを着た女性がタタッと駆けてくる。


「そ、それは、イノブタ……いえ、失礼いたしました。初めまして、ソーマさん。私の名前は、ミレーユと申します。この度は、命を救って頂きありがとうございました」


「ミレーユさん、頭をあげてください。たまたまですし、俺自身にも打算があったので。なにせ、迷子みたいなものですからね」


「そう言ってくださると逆に安心できますね」


「うん? どういう意味でしょうか?」


「いえ、その……女性二人のパーティーなものですから」


「……ああ、そういう」


 なるほど、確かに警戒されてもおかしくないな。

 二人とも、かなりの美人さんだし。

 クレアさんはもちろん、この方も綺麗なお姉さんって感じだ。

 眼鏡が似合ってるし、全体的にすらっとした体型をしている。


「す、すみません、恩人相手に……」


「いえ、警戒するのは当然のことかと」


「だから言っただろう。それに、子連れなのだから」


「わかってますけど……えっと、ソラちゃんで良いのかな?」


「ひゃ、ひゃい!」


 それまで俺の服の端を掴んでいたソラが、びっくりした声を上げる。

 これも勉強だと思い、ミレーユさんの前に押し出す。


「ほら、挨拶するといい」


「ソ、ソラって言います……よろしくお願いします」


「よし、よく言えたな」


 その頭を優しく撫でる。

 この子に足りないのは、自己肯定感だろうから。


「えへへ……褒められちゃった」


「ソラちゃん、私はミレーユっていうの」


「ミレーユさん……」


「うん、そうよ。ひとまず、よろしくね」


「は、はいっ!」


 すると、クレアさんが手を叩く。


「ほら、自己紹介はその辺にしとこう。というより……まずは、それについて聞かなくては」


「あっ、これですか。いや、実は……」


 先程の出来事を説明すると……二人の表情が変わる。


「イ、イノブタを木に叩きつけた?」


「えっ? 突進を止めた上に、素手でイノブタを……」


「あの、何か問題ありましたかね?」


「い、いや、オーガを倒したのだ。むしろ、それくらいできて当然か」


「そ、そうですよね。でも、これで信憑性が増しました」


 何やら、結構おかしなことをしてしまったらしい。

 豚の体当たりを止めただけなのだが?


「ひ、ひとまず、それをどうするかだな」


「良ければ、みんなで食べませんか?」


「良いのか? それは、ソーマ殿が狩った獲物だろうに」


「こんなにあっても、一人では食べきれませんからね。それに、食事はみんなで食べた方が美味しいですし」


「……ふふ、ではありがたくご相伴にあずかるとしよう。その代わり、お金は支払わせてもらうが」


「い、いえ、これからお世話になるお礼だと思ってください。こちらは、何もわからないので」


 すると、クレアさんが身を乗り出して近づいてくる。

 自然と、その端正な顔が近づき……年甲斐もなく照れそうになる。

 銀髪に青い瞳の美女なんかと、知り合ったことないから仕方ないよなぁ。


「いや、払わせてくれ。そもそも、初めて街に入る人間は入場料がかかるぞ? 異世界から来たお主に、この世界のお金があるのか? その魔石は価値がありすぎるし、現金ではないから受け取ってもらえんぞ?」


「ぐっ……」


「それに、お礼ならいらない。私はすでに命を助けてもらっている。この上で、これ以上甘えるわけには……」


 そう言いながら、さらに近づいてくる。

 そうなると、女性特有のいい香りがしてくる。

 彼女いない歴十年の独身には中々辛い。


「ソーマさん、諦めてください。クレアは、頑固なところがあるので」


「むっ? 頑固とはなんだ、私はただ……」


「わ、わかりましたから! 一度、離れてくれると……」


「へっ? ……っ〜!?」


 すると、物凄い勢いでクレアさんが引き下がる。

 どうやら、気づいてなかったらしい。


「す、すまぬ!」


「い、いえいえ」


 どうにも照れ臭くて下を向くと……ぽかんとした顔をしたソラと目が合う。


 俺は心を落ち着かせるために、その頭を優しく撫でるのだった。


 ……やれやれ、良い歳して何をやってんだか。

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