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クズ勇者が優秀な回復師を追放したので、私達のパーティはもう終わりです  作者: 江本マシメサ
第三章 大森林の大問題

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再び大森林へ

本日より、0時と12時の1日2回更新になります。

 貴族様御用達の道具屋には、行動食の他に携帯食も販売されていた。


「こちらは水に浸すだけで肉厚な生肉になる干し肉、こちらは湯を溶いて飲むスープ、圧縮パンは封を開いただけで、ふかふかのパンに早変わり。即席麺はお湯を注いだだけで、おいしいスープ麺になりますよ」


 まるで勇者様のためにある携帯食の数々である。どれも持ち歩きやすいように圧縮されていた。

 これらの携帯食も購入した。

 すべて鞄に詰めたものの、そこまで重量感はない。これで、大森林の中でもおいしい食事がありつけるだろう。


「お客様は大森林を目的にいらっしゃったのですね。それならば、こちらはいかがでしょうか?」


 店主が見せてくれたのは、大森林内の地図だった。


「こ、これは――!」

「入荷したばかりでして、店頭に並べるたびに即完売している人気商品なんですよ」


 なんでも冒険者の中には、ダンジョンや複雑な地形を持つ場所の地図を作成する、マッピングと呼ばれる才能ギフトを持つ者がいるらしい。

 マッピングの才能ギフトを持つ者が地図を作成し、納品するようだ。


「大森林内はちょこちょこ地形が変わるようで、こちらは最新版になっております」


 地図には教会や道具屋、宿、転移ポイントなどが書き込まれていた。

 これがあれば、大森林内の散策もしやすくなるだろう。


「お値段を聞いてもいいですか?」

「金貨十枚ほどになります」


 かなり高額だが、支払うのは勇者様である。手持ちだけでは足りなかったので、ご実家に請求するよう頼んでおいた。


「かしこまりました。それでは勇者様のご実家に請求書を送らせていただきます」


 行動食と携帯食、大森林の地図を購入し、道具屋をあとにした。

 外に出た途端、白い鳩が飛んでくる。

 どうやら勇者様が蘇生したらしい。思いのほか、早い復活だった。

 教会へ戻ると、勇者様は腕組みし、堂々と佇んだ姿で私達を迎えた。


「待たせたな!」

「いや、待っていなかったと言いますか、思いのほか早かったと言いますか」


 それよりもなぜ、火の番を私に任せなかったのか問い詰める。


「お前が心地よさそうに眠っていたものだから、私が朝まで火の番をしてやろうと思ったのだ」

「そういう優しさなんていりませんので」


 勇者様の気遣いが、私に迷惑をかける結果となったのだ。

 本当に反省してほしいと思う。


「それよりも、大森林は思っていた以上に寒かったな。冬の装備を着込んで行きたいのだが」

「大森林の中はさまざまな季節が同時に存在しているそうですよ。次、転移した先が、雪降る場所だと決まっているわけではありませんので」


 それでも、毛皮の外套が欲しい。そう望んだので、勇者様と共に先ほどの道具屋に戻り、毛皮の装備を揃えてもらう。

 私もどうかと聞かれたものの、丁重にお断りした。

 こうして雪に備えた状態で、再度大森林に挑む。

 転移陣の行列に並び、今回も転移の魔法巻物を購入したあと、入場料を払う。


「よし、ゆくぞ!!」


 勇者様の気合いの声と共に下り立ったのは、ジメジメとした熱帯雨林だった。


「暑い!!!!」


 勇者様は毛皮の外套を脱ぎ捨てながら、この世の深淵に届くのではないか、と思うくらいの叫びをあげた。


 その声はモンスターを引き寄せてしまったようだ。


『シャー!!』


 最悪なことに、頭上から襲われる。


「勇者様、頭上から敵一体!!」

「なんだと!?」


 木の幹よりも太い体を持つ巨大ヘビ、ポイズン・サーペントである。


「勇者様、毒ヘビです! 毒の牙に気をつけてください!」

「わかった!」


 ポイズン・サーペントはまっさきに勇者様へ襲いかかる。

 長い尾を鞭のようにうねらせ、打撃を与えようとした。

 勇者様は攻撃をひらりと回避させ、金ぴかの剣を引き抜き、ポイズン・サーペントの胴へ斬りかかる。

 ガキン! と金属を叩くような音が聞こえた。


「なんだ、こいつは!」


 どうやら鱗は、鎧のように硬いらしい。

 ポイズン・サーペントは毒を持つだけで、鱗にはそこまで強度はなかったはずなのだが……。

 さらに、ポイズン・サーペントは巨体を持っているのに、素早く動く。

 危うく、勇者様の体に絡みつき、締められそうになっていた。


 剣による物理攻撃は効果がなく素早い。明らかに、知っているポイズン・サーペントの特徴とは異なる。


「これが凶暴化したモンスター、というわけなのですか?」

「かもしれないな」


 凶暴化というより、強化された状態である。

 なぜ、このようになってしまったのか。

 誰かに操られている様子は見られないし、魔法にかかっている様子でもない。


 千里眼で調べてみる。瞳に魔力を集中させ、目を眇めた。


 名前:フルポイズン・サーペント

 才能ギフト:〝猛毒の牙デッドリー・ポイズン・ファング


「なっ!?」

「魔法使い、どうした?」

「このポイズン・サーペントは、通常の個体よりも強い毒を持っているようです」

「なんだと!?」


 お喋りしながらも、勇者様は攻撃を繰りだし続ける。

 しかしながら、効果はないように見えた。

 

「この変化はやはり、枯れかけている世界樹と何か関係があるのでしょうか?」

「その可能性も――うわ!!」


 勇者様の眼前に、猛毒をまき散らすフルポイズン・サーペントの牙が迫る。

 すぐに回避したようだが、ひと息遅い。


「勇者様!!」


 もうダメだ。また、勇者様が死んでしまう。

 そう覚悟した瞬間、勇者様の前にぶーちゃんが飛び出してきた。


『ぴい!』


 勇ましい鳴き声をあげると、蹄でフルポイズン・サーペントの鼻先を叩く。


『シャア!』


 フルポイズン・サーペントは怯み、回れ右をすると逃げて行った。

 これが、聖猪グリンブルスティの実力なのか。思わず舌を巻いてしまった。

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