顔つき怖いですよ
茂みから飛び出した私に驚いた兵士たちの動きが一瞬止まる。
その隙に私は敵の首の裏や、鳩尾に剣の柄を叩き込み次々に気絶させていく。
我に戻った兵は武器を構えるが、素早く間合いに入り込んで気絶させていく。
こうしてほぼ全員気絶させたところで一番大きいテントの中からこれまでの兵とは明らかに違う雰囲気の人が出てきた。
赤い髪に鋭い目つき、顎には髭が生えており、身体は他の兵より二回りほど大きく、腕は私の胴体くらいあるんじゃないかと思う程太い。
その人はあたりをザっと見回してから私を見て
「小娘、お前がこれをやったのか?」
「そうだと言ったら大人しく捕まってもらえます?」
そう聞くと、一瞬目を大きく開けた後
「ガハハハハハハ。本当にやったのか!この人数をお前一人で!!これは面白い。少女の姿をしているからと言って油断は出来そうにないな」
そういってその人は腰から剣を抜き、すごい殺気を放ってきた。
今まで受けてきたどの殺気よりも強い。
少しだけ震えてしまった手を剣を握り込むことでごまかす。
「娘、この俺、ガルドが相手をしてやろう。今までのこいつらみたいに手加減なぞしてきたら死ぬことになるだろうからちゃんと殺す気で来いよ。」
そういって笑いながらすごいスピードで近づいてきたかと思うと、蹴りを入れられる。
何とか防御は間に合ったが、私は横に吹っ飛ばされる。
すぐに起き上がるが、目の前には剣が迫っており、咄嗟に横に飛んで回避する。
回避してもすぐに追いつかれ、剣を受けるだけで精いっぱいになる。
それに剣の一振りがとてつもなく重く、手がしびれる。剣を持っているのも辛くなってきた。
「そら、どうした?もう終わりか?一発も攻撃せずに終わるのか?」
そう言いながらも攻撃の手は一切緩まない。
このままでは防戦一方となってしまうため、相手が剣を振り上げた瞬間に後ろに大きくジャンプをし、距離を取った。
刀を構えなおし、体制を立て直す。
それを見て片方の眉を上げ、髭を片手でさすりながら
「ほう、やるな。俺の攻撃をここまで防ぐか。ならば今度は少し本気を出すとするか。」
その言葉を言い終わらないうちに殺気が数段強くなった。
殺される。
そう思ったその時、
―ガッ
ガルドの頭に何かがぶつかった。
落ちたそれを見ると拳くらいのサイズの石だった。
続いて石の飛んできた方向を見ると、そこには恐怖でガタガタ震えて立っているユリエルがいた。
いしのぶつかった所を手で押さえて、血が出ていることを確認したガルドは
ユリエルを睨み
「おい、小僧。人が楽しんでるときに邪魔すんじねぇよ。殺されたいのか?」
「っ、う、ううう、うるさい!彼女に近づくな!もうすぐ味方がくる。に、逃げるなら今だぞ」
「おい、おい、震えてんじゃねぇか。そんな状態なら大人しく隠れていればいいものを。
でも、そうか。もうすぐお仲間さんがきちまうのか。なら・・・・・お前だけでも殺しておこうか。」
そういって、ユリエルに剣を向けたガルド。
その瞬間私は走り出した。
このままではユリエルは殺されてしまう。
身体が言うことを効かない。
まるでスローモーションのように剣が振り上げられる。
―もう少し。
お願い。間に合って。
そして剣が振り下ろされる。
振り下ろされた瞬間、赤い血が辺りに飛ぶ。
目の前には大きく目を見開いたガルドの顔。
その顔をみて私は笑いながら
「ざまあ、み・・・ろ・・・・」
と言って強がっては見たが、限界の様だ。
身体が後ろに倒れるのを感じ、だんだん肩の痛みのせいで意識が遠くなっていく。
遠くでユリエルが私の名前を呼ぶ声と、騎士団の先輩たちの声が聞こえたが私の意識は闇の中へ沈んでしまった。




